第18話 お部屋デートリベンジ

 直接の性行為描写はありませんが、R-15に近い(?)内容があります。苦手な方はご注意ください。




 以前のお部屋デートでの初キスを経て、真澄の僕に対する態度が少し変わった気がする。

 なんていえばいいのかわからないのだけど、以前より距離が近くなったというか。

 それと、朝登校する前とか、家で別れる前、そういう何気ないときにキスをするようになった。

 それはとても嬉しいし、心地良い時間なのだけど、僕にはちょっと頭を悩ませている問題があったのだった。


 それは、言ってしまうとヘタレということになるのだけど、僕がまだ真澄と初体験をしていないということだ。それも、どちらかというと、僕が、というより真澄が積極的に求めてきている節があるのだ。

 

 そもそも、最初にお部屋デートをしたときも、真澄は覚悟していたのだし、何も不思議じゃないんだけど。


 問題は、僕に自信がないということだ。当然、僕はエッチなことは初めてだし、真澄もそうだろう。女の子の初めては痛いことが多いというし、できれば真澄にそういう思いをさせたくない。


 というわけで……


――


『教えて欲しい、お願い!』


 俺は、夜に電話をかけていた。相手は真澄の親友の朋美だ。

正直、女の子にそういうことを聞くのは気が引けるのだけど、仕方がない。


『そう言われても……私も経験ないよ?』

『ああ。そうだと思ってた』


 だからこそ、話を聞きたいというのもあったし。


『それをわかってて、聞くの?』


 やばい。怒ってる。


『いや、そういうわけじゃなくて。同じ女子として、アドバイスがもらえれば』


 もちろん、検索して、男女のエッチなことに関する知識は多少身に着けたし、そういう本を買ったりもした。それでも、実際どうなのかは、女の子が一番よく知ってるだろうし。


『でも、コウ君。そういうところ、全然プライド無いね?』


 朋美の言葉のナイフが突き刺さる。


『そこで見栄を張っても仕方ないし』


 僕はそう言った。

 これは本心だ。

 見栄を張って、真澄にとっての思い出が嫌なものになって欲しくないし。


『ほんと一途だね。ますみんもそういうところが好きになったのかも』


 どこか羨ましそうな声でそう言ったのが印象的だった。


『私も経験がないから、偉そうなことは言えないけど。やっぱり、初めてはみんなこわいと思うよ?うちの女子でも、やっぱり最初は怖かったって言ってる子はそこそこ居るし』


 高校生で体験してる子がそんなにいるのか。共学恐るべし。


『まあ、そうだよね』


 そう返答する。色々勉強したけど、最初が痛いのもどうしようもない気もする。


『ただね。彼氏がゆっくりしてくれたから、あんまり痛くなかったって子も多かったし、全然痛くなかったって子もいるよ?』


 そういう子もいるというのは調べた事があったけど、友達から聞くと現実味を帯びてくる。


『あとは、やっぱり信頼関係じゃないかな』

『そういうものかな?』


 テクニックとか、色々聞くけど。


『男子はテクニックとかにこだわるみたいだけど。やっぱり、優しくしてくれるって事が大事な子が多いみたい』

『なるほどね』


 しかし、朋美はよく知ってるな。


『そういうの、よく話すの?』

『ますみんは、そういう話に加わらないけど、結構よく聞くよ』


 男子校では考えられない光景だ。


『でも、コウ君とますみんなら大丈夫!お互い長年想い続けてきたんでしょ?』

『ああ』


 そこは、間違いない。


『きっと大丈夫。どっちかというと、コウ君が緊張でガチガチになっちゃう方が良くないと思う』

『う。それはそうだね』


 確かに、どんなに優しくしようとしても、緊張でがちがちだったら意味がない。


『というわけで。それだけ気をつければいいんじゃないかな。私も経験ないから、自信はないけど』

『いや、それで十分。恩に着るよ』


――


 時間は飛んで、翌日の夕方。

 いつものように、二人で自転車を押して歩く。


 隣を見ると、真澄は幸せそうに、ニコニコしている。

 切り出しづらいけど、勇気を出そう。


『あのさ』

『ん?』


 なんとなく横顔をみると、とても綺麗で可愛く見えた。


『今日なんだけど、家に来ない?』


 真澄の方をしっかりと見て告げる。


『ああ、ええよ。こないだみたいに、ゆっくりする?』


 真澄がそう答える。この前に及び腰だったせいか、逆の意味に受け取られてる。


『あ、いや、そうじゃなくてさ。部屋で……真澄としたい』

『え……』


 真澄はしばらく目を真ん丸にしていたけど、やがて。


『なら、よろしゅうな。それと、あらかじめいっとくけど、そんな気を遣わんでいいからな?痛いのはどうしようもないんやし』


 そう穏やかに告げたのだった。ひょっとしたら、真澄の方としても待ってたのだろうか。


『ああ、うん。でも、出来る限り優しくできればと思う』

『その気持ちだけで十分や』


 お誘いを待っていたせいだろうか。

 前と違って、真澄はなんだか凄く堂々としている。

 ここで、僕が怖気づいても仕方がない。


 そうして、しばらく歩いて、家の前に到着した。


「じゃ、じゃあ、ウチはシャワー浴びてくるから。先に部屋にいっといてーな」


 頬を赤く染めて、真澄はそんなことを言う。

 やっぱり、覚悟してはいても、怖いのだろうか。

 真澄が向かいの家に入っていくのを見て、僕も帰る。

 僕も念入りに身体を洗っておかなくちゃ。


 シャワーを浴びて、しばらくすると、玄関のインターフォンが鳴った。


 真澄が来たのかな?


「お。お邪魔します……」


 真澄の声は少し震えているようだ。

 これからの事を考えて来たのか、制服は着替えて、

 上はTシャツ、下はハーフパンツというラフな格好だ。


 真澄を部屋に案内して、ベッドに隣あって座る。


 さて、どうしようか。

 僕も緊張しているし、横をみると、真澄もかなり緊張しているみたいだ。

 どうにかしないと。

 そんなことを思っていると。


「なあ、コウ?」

「なに?」

「今日、うちを誘ってくれたのは、ウチのため?それとも、自分のため?」

「……」


 僕の沈黙をどうとったのか。


「あ、うちはどっちでもいいと思ってるんよ。決心は付けてきたんやし」


 また気を遣わせてしまっている。正直に今の気持ちを伝えよう。


「正直、両方って思う。僕が真澄にエッチなことしたいっていうのも本音だけど、真澄もなんだか待っているように見えたし」


 どうだろうか。待っている、と思ったのだけど。


「やっぱりバレてたんやね」

 

 真澄がそう苦笑いする。


「まあ、なんとなく」


 確信があったわけじゃないけど。


「そのな。こんなこと言ったらひかれるかもしれへんけど。前にコウとキスしてから、もっと触れ合いたいって気持ちが強うなってきてな」


 そういえば、真澄が積極的になってきたのは、その後だった気もする。


「うん。それで?」


 真澄の続きを促す。


「やから、今日誘ってきてくれたんは嬉しかったんや」

 

 緊張しながらも、少し嬉しそうな、それでいて恥ずかしそうな表情で

 真澄は言葉を紡ぐ。


 好きな女の子から、ここまで言われて、怖気づいてても仕方ないよね。


「じゃあ、今からするけど、いい?」


 一応、確認する。


「どうぞおすきに♪言っとくけど、優しくせんでも大丈夫やからね」


 表情は少し堅くて。

 少し強がっている、と思ったけど、言っても仕方がない。


「それじゃ……」


 顔を近づけて、まずはキスをする。


「ん……」


 いつもと違って、ゆっくりだからか、より深く真澄の感触を味わえている気がする。舌も、入れてみる。


「んく……」


 なんだか、とても不思議な感覚だった。

 しばらくして、顔を話すと。


「ぷはっ」


 真澄が息を吐いた。


「なんや、恥ずかしうなってきたわ」


 真澄の顔が火照っている。

 その気持ちは僕もよく分かる。だって、同じだから。


「止める?」


 真澄だったら止めないだろうということはわかってるけど。


「ええわ。ちゃんと最後までしてや」

「ああ」


 そうして、服を脱がせて行為に入るのだった。


――


「なんてちゅーか。ほとんど痛くなかったわあ」


 行為の後、ベッドの中で真澄が言う。

 さすがに恥ずかしいのか、シーツにくるまっている。


 そういう僕も恥ずかしいから、シーツにくるまっているのだけど。


「そうなの?」


 行為の最中、しんどそうな様子はなかったけど、我慢してるかは

 わからなかったし。


「気持ちいいっていう感覚?それはまだわからへんけど……」


 自分の中の感覚をぽつりぽつりとしゃべる真澄。

 

「それは仕方ないんじゃない?初めてで……ていうのも人によっては、あるみたいだけど」


 僕も正直、必死だから、痛くしないように、ってことだけ考えてて、

 そこまではとても気が回らなかった。


「ま、その辺はこれからでええよ。コウが色々気遣ってくれたおかげで、なんちゅーか、充実してたし」


 嬉しそうにそういう真澄。


「充実?」


 その辺りの気持ちはよくわからないけど。


「気持ちいいとは違うちゅーか。なんや、愛されてるんやなあ、て感じや」


 とても満足そうにそういう。


「そっか。なら良かった」


 その辺りは男と女で違う部分なんだろうか。


「ほんまのところはな」


 ふと、彼女が語り始める。


「?」


 どういうことだろうか。


「コウがなかなか求めてくれへんことが、少し不安やったんよ」

「それは、ごめん」


 そこはなかなか決心がつかなかったから、正直、反論のしようがない。


「でも、今、こうしてられるから、ええんよ」

「助かるよ」


 こういうときに踏み切れない僕をよく待っててくれたな、って思う。


「でもさ。なんか、小学校の時から一緒だった真澄とこういうことになるのは、少し不思議な気分」


 昔を一緒に過ごした女の子と、一緒にこうしている。それが、なんだか不思議だ。


「それはうちもやで。中学に行ってからは、いつ誰かに盗られるかもしれんと思っとったしな」


 やっぱり、中学で別の学校に行ったことが寂しかったんだろうな、ということが伺える。


「あ、でもな」

「?」

「今度からは一緒に気持ちようなれるようにしような?うちも興味あるし」


 少しイタズラっぽい笑みでそう告げる真澄。


「努力します」


 そういうのが精一杯だった。

 正直、準備とか行為の最中とか、色々大変だったけど。


 真澄と無事にできて良かった、そう思える一日だった。

 世の中のカップルって、皆、こういうことを経験してきてるんだろうなあ。

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