幼馴染と恋をする前に(仮)

大貴

第1話  幼馴染に振られた後に

 今日から高校一年生になった俺(島田さとる)は、家の近くの公園でとある女子と対面していた。

 女子の名前は神崎真波。家が隣同士の幼馴染で昔から俺が大好きな女子でもある。

 そう、真波に今日告白をーー

 「好きだ付き合ってくれ!!」

 「んーどうしようかなぁー」

 したのだが曖昧な返事しか返ってこなかった。

 「もしかして、好きな人がいるのか?」

 「いや?いないけど、今日入学式だった訳だしもしかしたらこれからの学校生活であるかもじゃない。まぁ、そんな人いるわけな・・・・」

 「分かった。今の告白は聞かなかったことにしてくれ」

 「え!?ちょっと待って!!」

 何か言っていた気もするが、正直これ以上この場にいるのが辛かったのもあり、逃げるように公園を後にする。

 振られたのも辛かったが何よりも、真波に変な気を使わせてしまったのが一番辛かったのだ。嫌いとは直に言うのは可哀想だと思ってあんな風に言ってくれたのだろう。



 「ただいま・・・」

 家に帰ってきたが、返事は返ってこない。それもそのはず、両親が共働きで夜の10時以降じゃないと帰ってこない。

 俺は制服脱がずに自分の部屋のベットに横になる。

 自惚れていたわけではないけど、少しは脈があるんじゃないかと中学の時思って以降色々考えて今日に至ったわけだが、振られてしまった。

 「もう寝るか」

 考えるのをやめるために目を閉じようとした時、電話のコール音が聞こえてくる。スマホの画面を見ると、中学二年からの付き合いで高校も同じクラスになった林鷹斗からだった。

 「もしもし?」

 『もしもし、島田!』

 「何かようか?」

 『何誤魔化してんだよ!!今日告白するって言ってたろ?結果がどうなったか気になってよ!!』

 「振られたよ」

 『だよな、だよな!いやー絶対上手・・・・ん?今何て言った?』

 「だから、振られたんだよ」

 『まじかよ、嘘だろ!?』

 俺は公園の出来事を林に説明した。林はふむふむと何度か相づちを打った後、

 『いや、それは駄目だろさとる!まぁ、一番悪いのは神崎だと思うが、さとるはもう少し女心を理解しないとだな』

 呆れたように言った。真波が一番悪い?一体どういうことだ。何も悪くないし逆に気を使わせてしまったのだが・・・

 「というか、女心何て女子じゃないのに分かるわけないだろ」

 『確かにそうだが、分かる様に努力するんだよ!努力はお前の得意分野だろ?』

 また、なんとも無茶な注文を・・・いや待てよ?女心を知るには女になるしかない。つまり

 「女装すればいいんだな!?」

 『なんでだよ』

 そうと決まれば、早速試してみなければ!何か言っていた気がするけど、気のせいか。

 「女装するには・・・姉さんの部屋にまだあるか?」

 まだ、何か言っている林との通話を切り姉の部屋に向かう。



 「よかった。まだ残ってた」

 今年の三月に卒業して県外の職場だったので今は家にいない姉の部屋に無断で入り、クローゼットの中からとある物を取り出す。

 「傷んでない様だな。これなら大丈夫そうだ」

 制服である。一つ違うとしたら姉(女子用)の制服だということくらいだろう。

 今更だが、何か違う気もしないでもないが、女子になれないので形から入るしかない。つまりこの方法しかないから致し方ない。

 「とりあえず・・・着てみるか」



 「お、おう」

 姉の部屋に置いてあった姿見で自分の格好を見る。身長含め胸以外は体格がほぼ一緒だったので丈もぴったり合っていた。

 着てみて思ったが、今までズボンを履いてきた身にとっては、スカートは何か心許ない気がする。風で簡単にめくれてしまいそうだ。

 なんとなく、その場でクルクルと回ってみる。すると、スカートがふわっと浮き、それが女性ぽい感じがして恥ずかしい感じがする。

 なるほど、女性は毎日スカートという名の防御力のない布を身につけて恥ずかしさに耐えているのか・・・少し女心を理解した気がするが、この程度じゃ真波・・・もとい女心を完全に理解出来たとはいえない。

 「こうなったら仕方ない」

 僕は静かにあることを覚悟に決めて、お風呂を沸かす為に姉の部屋を後にする。

 先程、真波に振られて辛かったはずだが、今は何故か落ち着いていた。何故だか、この恋はまだ終わってないとそんな気が今はするのだ。



 家事も全て終え自室に戻り時計を見ると、10時半を回っていた。明日も学校があるので、今日はもう寝ようと電気を消すとベランダ側が微かに光っている。

 「真波まだ、起きてるみたいだな」

 真波とは家が隣同士で向かい合うようにベランダがあり、昔のころからよく二人で語り合っていたものだ。

 ベランダにでてみるか・・・

 「さ、寒い」

 四月になり少し温かくなってきたが、やはりまだ夜はまだ寒いな。もう部屋に戻ろうかなと思った時、ガラッと窓の開く音がした。音のなったほうへ顔を向けてみると、ちょうど真波がベランダに出てきたところだった。

 「よ、よう」

 「さ、さとる。こんんいちは」

 『・・・・・・・・・・・・』

 き、気まずいな。なに喋ればいいんだ?

 「あの、さとる・・・さっきの告白の話なんだけど」

 「あ、あぁ。その話ならもういいよ」

 「そっか、そうだよね」

 真波は気まずそうに下を向く。気を遣ってくれたのだろうか?でも、もう終わった話だし。いや、終わらせてたまるか!

 「いや、やっぱり告白の話なんだけどさ・・・」

 「う、うん」

 なにかを期待するよな目で見てくる。

 「さっきは、聞かなかったことにしてくれって言ったけどさやっぱり、覚えていて欲しい」

 「うん。忘れないよ・・・・・・だって、好きな人に告白されたんだから・・・」

 頬を赤らめているように見えるが最後の方は小声だったので、何を言ってるかは聞き取れなかった。

 「振られたが諦めたわけじゃないぞ!これからもっと勉強して今度は好きですって言わせてみせる!」

 なんか、勢いで恥ずかしことを言ってしまった・・・。やばい奴だと思われたんじゃ・・・。

 「ぷぷぷぷぷ、ふふふははははははは!!」

 真波は少し堪えた後、耐えきれずに吹き出した。何かおかしなこと言ったか?

 「ごめんごめん」

 俺の視線に気づいたのか両目に溜まった涙を拭いながら謝る。

 「いや、伝わりそうで伝わらないものだなって」

 「ん?何が」

 「いやいや、何でも無いよ」

 釈然としないけどまぁいいか・・・。でも、よかった。さっきの気まずい雰囲気も無くなっている。

 伊達に幼馴染みやってないってことかな。

 「そっか。また明日」

 もう、寝るために会話をきり自分の部屋へ戻ろうとしたら、「待って」と声がかけられた。振り返ると真波が顔を真っ赤にして視線を泳がしている。

 「どうした?」

 「えっと、そのあの」

 「ん?」

 「明日も一緒に学校へ行ってくれる?」

 「あたりまえだろ?あーーでも覚悟してくれよ」

 「どういうこと?」

 女心を理解するために、とあることをしようと考えているとは言えない・・・でもこれも女心を知るためには仕方ないことだしな。だから笑顔でこう答えるーー



 「こういうことだよ」

 朝、一緒に登校するために真波の家で待っていると、5分もかからずに出てきた。

 「お待たせ、ごめん時間かかっちゃった・・ね・・」

 俺の格好を見て真波は絶句したような顔をした。それも仕方ないか、だって俺の格好は、

 「なんで、女子の制服着てるのよぉぉぉぉぉぉ!?」

 ばっちり、女子高生の服を着ているからだ。女心を理解するために仕方なく着たのであって断じてちょっと興味があったとかではない。本当だぞ?

 「覚悟しとけってそういうことぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 朝から真波の声が近所に響き渡るのであった。

 


 

 

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