ビジョン共有合宿② 封印し、3つの改革宣言


失敗に終わったビジョン共有合宿。


その事を

尊敬する、顧問税理士の所長先生に

報告すると、所長先生、厳しい表情で

腕を組ながら、アドバイスを頂いた。


反対や指摘を恐れてはいけない。

しかし、彼らの尊厳を傷つけるのは

もっと良くない。


その上で、こう問われた。


「あなたは、建設という仕事を

本当に見ていますか?

凄いと思っていますか?」


耳が痛かった。

所長先生に見抜かれていたのだ。


『建設業を変える事が目的化』


してしまっている。


現実に目をそむけ、未来ばかりを

視ていたのかもしれない。


先ずは、噴出する、現場や組織の

問題への対応を一つ一つ明確にし、

道筋をつけたのち

ビジョンを共有しなければならない。


このアドバイスで

目が覚めた達社長。


「ビジョンは大切!だからこそ、

今は、ビジョンを封印する」


そう宣言。


「何をやるかは、

誰がやるかに左右される」


この言葉を胸に

現場と組織に向き合う覚悟を決めた。


早速、土木出身のベテラン専務、

わが社業績の要、

建築部門を統括する建築部長、

そしていつも客観的で

会社の立場でものを

考えてくれる総務課長


この三名を呼んだ。


「改めて、解決すべき重点問題を

忌憚なく上げて欲しい」


「今さらと言われるかも

しれませんが、解決に向け、

一緒に汗を流したいです」


達社長、偽らざる気持ちで、

そう皆に問いかけた。


ベテラン専務

「沢山ありすぎて、

重点なんて言えないですよ」


ビジョン共有合宿の際も

同じようなやり取りがあった。


そのときは、正直、

イライラしていた自分が

いたように思う。


「そんな事、議論してるんじゃない」


しかし、今は違う。なぜか素直に

専務の言葉が入ってくる。


建築部長

「現場の忙しさ、所長に余裕がない

やっぱり、ここをなんとかしないと」


総務課長が続いた

「確かに、現場の残業は

半端ないですよね」


「あと、すぐには出来ない

かもしれませんが」


専務や建築部長の顔を見て、

少し躊躇しながら


「現場任せの人作りは変えないと」


するとベテラン専務

「確かに、それだけが理由じゃ

ないだろうが、

若い人は辞めていくよな」


そうなのだ。


以前実施した、

『自社再発見プロジェクト』。

そこで明らかになったように、

入手三年未満の若手、しかも

現場で働く社員が退社していく

流れがなかなか止まらない。


「我慢して、身を持って体験して

欲しいが、今の時代無理なんだよな」

ため息交じりのベテラン専務


「結局 現場ですよね」

建築部長


『現場を変える、助ける』

考えてみれば、利益の源泉であり

当然の事なのだが、


自身が未経験な事もあり

そこから逃げていたのだろう。


達社長、大いに反省したが、

生来前向きな性格。

直ぐに気を取り直し


「現場の働き方、

現場所長の負荷削減、

そして、人作りのやり方、

この3つを改革したいと思います」


三人に、こう伝えた。


「本当にやれるの?」

そんな視線を感じた達社長だが

今は、やるしかないと考えている。


「いつになるかわからないが、

もう一度皆とビジョン共有の場を

持ちたい」


心に誓う達社長であった。

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