ビジョン共有合宿①失敗 経営はタイミング

「すぐやる」が真骨頂の達社長。


役員、部門長クラスを集めた

3日間の合宿を実施することにした。


実は当初は、金曜日昼から土日に

かけた泊まり込みでの合宿を

想定していた。


しかし、働き方カイカクのご時世。

幹部の皆さんから強烈に反対された。


「教育で土日は勘弁して欲しい」


結果、

土日をフルに使う訳にはいかず、

週末の金曜日を使い3日に分けて

行う形式にした。


「夜は少しお酒を

飲みながら話したかったのに」


「泊まらないなら

合宿とは言わないな」


達社長、そうつぶやきながら、

時代の変化を改めて感じていた。


さて、合宿の目的は一つ。

ビジョン「元気な街をつくる」

という価値観の共有である。


私達の「未来に果たすべき役割」

これを再定義し、

やるべきこと、変わるべきことを

一致させることである。


メガバンク出身の総務課長の

銀行時代の経験や他社でやった

事例を見聞きしたものを参考に


3日間の内容は

主に以下で進める事にした。


第一日

現状を共有する

①現状の私達の会社の問題、課題

②自社を取り巻く環境


第二日

未来を考える

①自社の強みを考える

②異業種含む他社成功事例共有


第三日(最終日)

ビジョンを共有する

①ビジョン方向性共有

②何から始めるか(突破作戦)

③ビジョン宣言(社内外)


総務課長中心に

建設の市場データや他社事例など

皆がイメージできる資料も用意。


準備万端、合宿はスタートできた。


しかし、結論から言うと

見事に失敗に終わってしまった。


議論百出と言えば、聞こえはよいが

当初計画した通り「きれい」に

進むことはなく、行きつ戻りつ、

大いに脱線。


採算の取れない物件をどうするのか?

現場部門の残業や人手不足

あるいは

若手の定着や技量の高め方など

今起きている問題が

どうしても議論の中心になり


挙げ句

受注や大型プロジェクトが

増えている今、敢えてこんな事を

やる必要はない

とそもそも論まででる有り様。


結果、合宿は3回中2回目途中で、

一旦中断することにしたのだ。


皆、ビジョンそのものに

正面から反対している訳ではない。


ただ、

「その前にやることがある」

メンバーの偽らざる本音であり


それを脇において、

正論で突き進んでも

上手くいかない。


そう判断したからだ。


「経営はタイミング」


遅いは論外だが、早すぎても

上手くいかない事がある。


達社長

以前、尊敬する先輩経営者から

言われた言葉を噛みしめていた。


「済まなかった」


とはいえ、

総務課長筆頭にあれだけ準備した

総務部メンバーには頭を下げる

しかない達社長だった。

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