建設会社に「学び舎」をつくる


先輩社長から教わった

人材育成体系

「アカデミアプログラム」。


小さく始めようとの

アドバイスを胸に、

「若手現場代理人を一人前にする」

プロジェクトをスタートさせた。


建築部長と総務課長が人選してくれた

土木と建築の精鋭八名が

このプロジェクトの主役である。


リーダーに人選された

30代次長から早速相談を受けた。


それが、

「一人前の定義」である。


達社長。

「え?でも」そう言いかけて、

言葉を飲み込んだ。


「いつも、早く一人前になれ」

ベテラン専務筆頭に

皆そう言っているじゃないか?


内心、そう言いたかったのだが、

そんな事今さら言っても始まらない。


早速「アカデミアメンバー」に

ベテラン専務や建築部長も交え

「一人前の定義」を決める

臨時ミーティングの場を

持つことにした。


やや長話だったが

専務や建築部長の体験談を

まず聞くことにした。


二人とも個性豊かだが、

「土木の専務、建築の部長」は

他社や発注者も認める「人材」

だからである。


60代の専務と40代半ばの建築部長。

年齢は無論、ものの見方も違う。


その二人が話してくれた中で、

達社長が特に印象的だったのが


「以前は、現場が終わった後、

先輩に飲みに連れていってもらい

そこで現場のいろはを聞いていた」

である。


つまり、

「現場以外で現場の学びがあった」

と言うことだろう。


次に

若手リーダーの、入社5年までの

自身の状況等を述べてもらい


建築・土木別に

「若手の一人前基準」が決められた


それが

建築「一定規模の現場の予算と

工程を正しく管理ができる」


土木「上司のアドバイスを受けつつ

現場管理の仕事がきっちりできる」


ようは

「小さな現場なら任せられる」

である。


加えて、

施工管理に関する

資格取得を条件にした。


こう言ってしまうと、

シンプルだとも言えるが、

意外に目指す姿は、曖昧だったと

改めて感じる。


「アカデミアを

スタートさせて良かった」


達社長は、この一点だけでも

素直にそう感じていた。


そして、ここが大切なのだが

この一人前基準を

「五年以内」に身につけてもらう。


「定義が決まれば、

何を学ぶかは出しやすいですね」

建築部長である。


「はい」

リーダーの次長がそう言うと


ベーシックな基礎知識


安全と言う、絶対基準。


文書、原価、品質、工程、測量

という5つの建築・土木どちらにも

必要な専門知識


建築には欠かせね設計・積算知識


これらの項目を

ホワイトボードに記載しながら


「具体的に何が必要か整理します」


リーダー次長はそう話し、

臨時ミーティングは終了した。


数ヶ月後


建築、土木別に

「若手が一人前の現場代理」になる

ために学ぶべき項目案が経営会議で

報告された。


いくつか列挙すると


例えば、絶対に欠かせね安全管理。

・災害はなぜ起きるか

・建設会社の重層構造

・安全衛生と安全管理体系

・現場従事者が知るべき

安全管理基礎知識

・労働安全衛生法 など


学ぶべき項目だけで20は

下らないようだ。


専門知識・技能を観ると

まず、祖業とも言える土木。


基礎工事の種類や工法から始まり、

生コンに関わる知識や、測量計算

原価管理や発注業務の基本

CADからiーconstruction、ドローン

などのデジタル技術まで、これまた

多彩な項目がズラリと並んでいる。


一方、建築も土木に負けず劣らず

木造、鉄骨造や

鉄筋コンクリート造などの構造物の

基本から、電気や給排水などの

各種専門工事、設計、施工図や

実行予算管理、景観デザインまで

これまた、多様である。


「建築・土木合計で100を超える

学ぶべき項目があります」

アカデミアリーダーの次長である。


「大変だな」


現場を知らない達社長。

改めて、現場を動かす彼らの

凄さを実感していた。


いくつか質問や修正はあったが

経営会議の中で

学びの項目として、決定された。


「一人前基準と学ぶべき項目が

決まりましたね」

建築部長の声に頷く達社長であった。


「アカデミアプロジェクト」

折り返しである。

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