教え学び合う風土を仕組みにする

人材育成予算を増やし

経費でなく投資と位置付け

管理者だけでなくリーダーを創る


これらを具体化する上で、

達社長の頭の中に、

あるプランが浮上していた。


それが、先輩社長から教わった

「教え学び合う、

アカデミアプログラム」である。


簡単に言えば、

社員自身が先生となり、

それぞれの得意分野を教える

やり方である。


無論、

課長以上の経験豊かな社員が

教える中心になる分野が多い。

しかし、

「WEB領域」「街並み」「色彩」

など、年齢や役職に関係なく、

得意な人が先生になってくれた方が

良いものもあるだろう。


すなわち、誤解恐れずに言えば

「誰もが先生、誰もが生徒」

になるやり方。


このアカデミア最大の特徴だ。


先輩社長のご好意もあり

達社長はまず、

既に、その取り組みをされている

先輩社長の会社に訪問した。


同社は、

達社長の会社より一回り大きく、

部品メーカーつまり、異業種である。


しかし、だからこそ、

「大いに意味がある」


なぜなら、

「謙虚に異業種から、そして

自社より沢山の社員が活躍している

会社から学びたい」


達社長はそう考えているからだ。



「アカデミアプログラム」

この作成、運営の責任者である

人事部長から詳細説明を頂いた。


「実は、最初見事に失敗したのです」


人事部長さんから、

思いもよらぬ一言で会話が始まった。


達社長

「え?、順調だとお聞きしてました」


人事部長

「ありがとうございます。

でも、最初は大失敗したんですよ」


お聞きすると、

新人から幹部、役員までの

全階層を対象にすると同時に


製造現場等の実践教育から

ファシリテーションなど

最新のものまで、全てを

網羅しようとして

挫折したのだそうだ。


「欲張りが最大の敵です」


このプロジェクトを立ち上げた

人事部長の話には説得力がある。


「対象やテーマを絞って始めて

やっと軌道に乗りました。」


達社長の前のめり感を

見事に牽制された形である。


さすが、先輩社長。

私の性格を良くわかっておられる。


そう思いながら、

「わかりました」

と小さく頷く達社長。


更に、説明は続いた。

「ちょっと

場所を移動して良いですか?」

人事部長さんに促され、


本社近くにある、

同社の第一工場にお邪魔した。


「こんにちは」

現場で働く皆さんの元気な声が

先輩社長の会社風土の良さを

感じさせる。


「挨拶一つで品質がわかる」

先輩社長いつも言っていたっけ。


案内されたのは、

工場の一角にある、

白い壁の部屋である。

そこで、作業服を着た社員数名が、

身振り手振りで、

何やら話しをしている。


「私達のスタジオです」

そう人事部長さんからご説明頂いた。


この場を使い、工具、器具の使い方の

「い・ろ・は」から、

もの作りの基本を動画で撮影し、

新人や若手に教えているのだ。


人事部長

「動画教育が

私達のもう一つの特徴です」


既に、収録した動画は

数百本を下らないという。


そして、これが、

製造現場で働く若手の早期育成に

大きく寄与しているのだそうだ。


「欲張らず、

デジタルを柔軟に活用する」


「アカデミアプログラム」


スタートのイメージが高まりつつある

達社長であった。

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