木構造を「売り」にする

情報発生源への営業を

トップ中心に幹部がやる。


アクションプランに基づき

まずは、挨拶周りと割りきって

達社長筆頭に皆、動き出した。


地域で長年事業をしてきただけあり

ほとんどの方々が快く面会頂き、


「何かあったら声かけるよ」


社交辞令もあるだろうが、

そう言ってくれる社長さんもいて、

第一歩はまずまずのスタートだと

達社長、少し安堵した。


しかし・・・

土曜日の作戦会議から数ヶ月。


いくつかの改修依頼はあったが

未だ目立った成果は出て来ていない。


案の定、ベテラン役員陣からは

「挨拶訪問を何度も出来ない」

と、否定的な意見も出始めてきた。


走りながら考える。

とりあえず始めた、情報発生源営業。

早くも壁にぶつかりつつあった。


そんな時、取引金融機関の支店長が

交代するとの事で、後任の支店長と

一緒にご挨拶に来られた。


後任の支店長さんは非常に若い方で

「行内期待のエース」だそうだ。


その後任支店長、挨拶もそこそこに


「元気な街をつくる。

貴社のビジョン拝見しました」


「ところで、どのような街を

イメージされているのですか?」


挨拶訪問とは思えないほど真剣な

表情で質問を頂いた。


「そう忘れてはいけない」


ありがたかった。

営業活動で成果が出せず、

目的を見失いかけている自分に

気付けたからだ。


だからもあるが、達社長


行きつ戻りつしながらも、

キャンプで共有した内容を、

だいぶ時間をかけて説明した。


頷きながら聞いていた、後任支店長

「実は、達社長に

ご提案したい事があるのです」

「後日、お時間を頂けませんか」


挨拶訪問は、そんな形で終わった。


後日、後任支店長が担当課長と

一緒に、提案事項を携え、

達社長を訪ねてきた。


前回もそうだったが、

後任支店長は挨拶もそこそこに

ストレートに要件に入っていった。


「達社長、貴社のビジョン実現の

一助に、大型木造建築を取り入れて

はいかがですか?」


法律の改正や技術の進化で、

比較的大型の建築物を木造で作る

環境が整いつつあるのだと言う。


暮らしに関わる

子育てやケア施設はもちろん、

観光等にも非常に相性が良い。


北欧等海外では、地域産材を使用した

木構造施設を核にする

住みやすい街づくりで

人口増に成功した事例もあるという。


「明日からできる

技術パートナーを紹介したいです」


支店長はそう言いながら

技術パートナーの紹介パンフレットを

渡してくれた。


「木造建築を街づくりビジョンの

武器の一つにされては

いかがでしょう」


コスト等、

従来工法と比較は必要だし

経験のない木構造への

現場の抵抗もあるだろう。


しかし、パンフレットを見ながら

心は決まりつつあった。


「売りができる」


「すぐやる」

達社長の力強さが

戻りつつあるようだった。

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