教えているが育てていない

「現場で実践的に教える」

建設業における

人づくりの基本である。


現場の臨場感や緊張感が

仕事を覚える事に役立つだろうし、

同じ現場は二つないとも

言われる中、現場でしか

教えられない事も多々あるだろう。


業界出身ではない達社長も

その事に異論はない。


しかしである。


この「現場で実践的に教える」

言い方は悪いが、

大いにくせ者だと

達社長は感じている。


理由は、3つある。


一つが、教える人で、

極端に差が出ていることだ。


ある部門長の下では、

人が育たないばかりか、

辞めていく人も多い。


彼に言わせれば

今どきの若者は

「意識も低いし覇気もない」

という。


しかし、

別の部門長の下では、

ゆっくりだが、確実に

若手が育ち始めている。


二つ目が、

基礎は現場でなくとも

教えられるからだ。


例えば、現場での挨拶や

コミュニケーション、

現場の専門用語や

職人さんが使う独特な言い回し

など、何も現場でなくとも

教えられるし、むしろ事前に

きちんと教えておいた方が良い。


また、現場で使う基礎的技能。

実は、動画などを使えば、

きちんと身につけられる。

いやむしろ、

現場教育より、動画教育の方が

早く確実に身につけられる。


動画教育で、新人を育成されている

左官会社さんに教えられた。


そして、最後三つ目。


実は、もっとも大切だと

感じているのだが、

現場だけでは教えられない

事があると感じている事だ。


建物一つとっても

基礎から竣工まで、建築工程の全体像

それが、分かれば自分の仕事の意味も

より理解できるはずだが、

現場では余裕がなく、

教えられていない。


一方、優秀な現場管理者になるには

知識や経験だけでなく、

リーダーシップも大切だが、

それが現場で身につくかは、


どの現場にでるか?誰と出会い、

何を任されるか?

で決まる。


極端に言えば、

宝くじにあたるようなものである。


リーダーシップは、

教えられるものではない

という人もいる。


でも、リーダーとしての自覚や

素晴らしい先輩の経験のエキス。


これらを事前にレクチャーし、

現場に対峙すれば、きっと

違った景色が見えるはずだ。


ベテラン専務からも

「昔は仕事が終わった後、飲みにいき

現場の回し方や、職人さんとの

向き合い方など、良く話しをしたものだ」


そう、現場以外で、リーダーシップを

教えていたのだ。


少なくとも、

達社長はそう考えている。


そして、何より、

学び合う場で出来た仲間は

現場で孤独になりがちな若手を

励まし、支え合う存在になるだろう。


「教えているが育てていない」


ここから脱却する。

達社長の固い決意である。

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