ビジョン共有合宿③ 極め、らしくないを追及する

失敗に終わったビジョン共有合宿。


気がついたら、あれから

かなりの時が流れていた。


あの時、税理士の所長先生に

「建設業をもっとリスペクトし

現場と向き合って欲しい」


そう諭され、


「ビジョンは大切!だからこそ、

今は、ビジョンを封印する」


先ずはビジョンを忘れて

現場カイカク策に奔走した達社長


今まで以上に、

現場に一つ一つ訪問。


例えば、

負荷がかかっている現場管理


まずは、

現場管理者がやる仕事と

やらなくても良い仕事を分離。


やらなくても良い仕事は

費用はかかるが

思いきって外注化したり

事務チームをつくり移管

するなど手を打っていった。


また、チームリーダーと言う

新たなリーダー組織もつくり

権限も委譲しながら

現場所長の負荷軽減にも挑んだ


人材育成も劇的な位、大きく変えた。

『現場で背中を見て覚える』から

『動画で繰り返し復習し覚える』へ

建築部長の言葉である。


『働き方、組織、人作り三大改革』


現場の理解あってこそだが、


これも、達社長自ら現場に足を運び

現場所員と向き合い、

仕事を細かく見える化、

共有したから出来た決断である。


結果が出たとは正直まだ言えない。

しかし、必ず出ると確信できるように

なっている。


夏も暑い日が続き、

現場の熱中症対策の見直しを行った

そんなある日の帰り際、


建築部長が珍しく、

私を食事に誘ってくれた。


「少しだけ、飲みませんか?」


ある中堅クラスの

現場チームリーダーが、

家族の事で悩んでいるようで

相談を受けた報告を

達社長にしておきたかったようだ。


幸い、あまり大事にならずに

済みそうで、安心できる内容だった。


「明日もお互い早いし、

そろそろ帰ろうか」

二人とも酒が強く無いこともあり、

そう声をかけた達社長。


しかし、建築部長、首をふり

「待って下さい。

もう一つお話しがあるんです」


ジョッキに少し残っていた

ビールを一気に飲み干すと、


「ビジョンはまだ

完全には理解できていません」


「しかし、社長の気持ちは大部

理解できました。もう一度、

ビジョンとやらを考えましょう」


と話してくれたのだ。


ただ、こうも言われた。

「幹部の大半は、どちらかといえば

賛成しかねています」


「というか、まだ、その大切さに

気がついていません」


「彼らの矜持を無にしないよう

にだけお願いしたいです」


矜持。すなわち、

建設に携わるプライドだろう。


「なぜ、今なの」

達社長は、嬉しくもあり

しかし、驚きながら、

建築部長にそう問いかけた。


「わかりません。でも必要かなぁと

思うようになりました」


「ありがとう、少し考えてみる」

達社長も飲みかけのビールを

飲み干した。


それから

1ヶ月以上、「矜持」について

考えに考えた。


「ブレたら見抜かれる」


そして、得た結論が

『建設を極め、

建設らしくないを追及する』


というメッセージと共に、

ビジョンを共有するである。


その為には、達社長自身、

建設の仕事にもっともっと

関わらなければならない。


更に、現場と社員と向き合おう。

そう決めて、中断していた

合宿最後の3日目


すなわち、ビジョンの共有と宣言

の回を、改めて実施した。


結果なんとか

従来型の建設業から

街づくり企業への変革プロセスを

共有する事に繋がった。


しかし、正直まだまだ、

皆が納得しきっている訳ではない。


「私の日々の活動が見られている」


達社長は、襟を正し、前を向いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る