老舗病を克服する

高血圧症・・

自社の労働分配率の悪さを

トレンドで確認した達社長。


担当の顧問税理士先生の

「親分」(失礼!)


すなわち事務所の

所長先生にもわざわざ来てもらい


短期的対策について

話しあうことにした。


所長先生、組織図や

決算書をつぶさにみながら一言

「老舗病」ですね。そう言われた。


70年の歴史がしがらみとなり

正しい分配が出来なくなっている

と言うのだ。


いわゆる老舗病は、


次の5つの症状として

現れると教えて頂いた。


①規模に対して人員過剰


過去の栄光を引きずる企業に多い。


売上規模が大きかった時代と

ほとんど変わらぬ人員が、

今も働いていると言うことだ。


そんな事あるのか?と思うのだが、

急激でなくジリジリ売上が下がる

場合に多い症状だそうである。


業種は異なるが、

売上が10年、20年

下落し続けている企業も

あるという。


厳しく言えば

「ゆでガエル現象」


停滞する日本経済。

こういう企業は

多いのかもしれない。


②過度の専門化


「これしかやりません、できません」

人材が多い会社である。


土木と建築、建築と住宅、

住宅とリフォーム

一見、親和性が高いように感じるが


意外に「この事業しかやりません」

が多いのが私達、建設業でもある。


③間接部門肥大


組織が一定の大きさ以上になれば、

必要となるスタッフ人材。

これが過剰になることだ。


管理部門の為に営業が残業して

書類をつくる。


こんな企業も珍しくないようだ。


ただ、建設業は、

むしろスタッフ人材が少なく

調達や積算など

現場に必要以上に

負荷をかけているように感じる。


④赤字商品や部門、事業の聖域化


祖業だから、社長の肝いりだから、

大きな投資をしたから・・・


様々な理由で、赤字が放置されている

会社も少なくないという。


私達の土木事業。

必要な事業分野だが、

収益だけで捉えると実は厳しい。


しかし、祖業でもあり、

利益という面では直視して

こなかったかもしれない。


一方、◯◯支店。

あるプロジェクトの為に

立ち上げた拠点だが、


地域を代表する建設会社の

本社もあり、苦戦が続いている。


⑤人件費が固定的。


業績と人件費が

連動しないことである。


確かに、

これまでは◯◯薬品との

安定した取引もあり、

業績との連動というよりは、

社員の生活を優先した

人件費政策で

あったかもしれない。


無論、

悪いことではなかったのだが、

◯◯薬品との取引が

なくなるかもしれない今、

従来の延長ではない形は

必要だろう。


以上を踏まえ、短期対策の結論は、


②一人三役

過度の専門化を改めて

多能工化の道をすすめる


④赤字部門へのメス

事業として一人立ちさせるか

縮小、場合によっては

撤退まで視野に入れ決断する


⑤人件費改革

固定化した人件費を

業績と連動させる


この3つを軸に、

当面の病からの脱却を

図ることにした。


どれも、

相当な抵抗が予想される。


「達社長の覚悟次第ですよ」


先生の言葉に、

身の引き締まる思いであった。

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