1×100=衰退 100×1=発展?

1×100 から 100×1 へ転換する。

ある年の

年頭の達社長の基本方針である。


1×100も100×1も

合計は100で変わらないのだが、

大きく違うと言いたくて、

こんな方針を発表した。


理由がある。


達社長の会社は、

ある大手の薬品企業との関係の中で

ここまで成長してきたと

言っても過言ではない。


先端の技術を

いち早く取り入れる会社で、


品質や納期も他では考えられない程

厳しく、工場でなく、倉庫一つ

建設するにも随分苦労したと

父や先輩から聞かされていた。


しかし、そのかいもあって、

関連会社などを含めると、

多い時には、年間受注の半分を

占めることもあったという。


おかげで、

多様な仕事を請け負うことになり

事業の幅も大きく拡がっていった。


「◯◯薬品との取引で鍛えられ

いろんな仕事、工事を身に付けたんだ」


そんな話しを

酒席でも良く聞いたものである。


無論、受注事業ゆえ、

毎年大型発注がある訳ではない。


しかし、

その大手薬品企業との取引のおかげで

随分、他の受注でも

有利に運んだことがあったようだ。


そんな事もあり、

達社長が社長に就任する際、


余り多くを語らない、

職人肌の父から言われた一つが

「◯◯薬品さんを第一に考えよ」

であった。


「その一社を疎かにしたら、

全てが無になる」


「ある意味、

私達の歴史そのものでもある」


知らない人が聞いたら、

大げさなと思える位の言い方だが、

それだけ◯◯薬品の存在は、

大きいものだと、

父は教えたかったのだろう。


しかし、時代は変わる。


その◯◯薬品さんが、

ある外資に、買収される

ことになってしまった。


残念ながら、

近年は過剰投資や新薬不発もあり

業績が厳しく、救済に近い

買収だと聞かされている。


それはつまり、

取引や購買方針が根本から変わる

可能性があるということでもある。


事実、そうした声が既に

聞こえて来てもいる。


◯◯薬品さんへの恩義は

一生ものだが、ある意味、

もう頼る事はできない。


これからは、

顧客を増やさなければならない。


それを端的に表したのが、

冒頭の方程式

1×100 から 100×1 へ転換する。

である。


1社×100の仕事では、

残念ながら衰退する。当たり前だが、

一社依存体質では、

未来は危ういからだ。


一方、100社×1仕事ならば、

発展が可能である。


極端だが、

例え、できる仕事は一つでも

多くの顧客が可能性を拡げてくれるからだ。


平たく言えば、「営業力強化」。

顧客を1から開拓する。


歴史的に見て、私達の苦手な分野。


さて、どうするか?

苦難の戦いの始まりである。

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