夢はあるのか


新卒の採用面接をした時のこと。


グループインタビューの最後に、

社長への何でも質問の時間があり、


ある、学生にこう質問された。


「社長の夢はなんですか?」


今どきの学生は、

単刀直入だなぁと思いながら


「夢」について、少し考えてみた。


・もっと大きな会社にしたい

・誰もがうらやむ

大きなプロジェクトに関わりたい

・社員にイキイキ働いてもらいたい

・利益をもっと上げて、本社や

働くオフィスを格好良くしたい

・80周年を迎えたら、社員みんなと

必ず海外旅行に行こう!

・まだ小さいが、将来息子に入社

してもらえたら嬉しい


したいことや良いなと思う事は

大小、山程あるのだが、

それが「達社長の夢」かというと、

少し違うような気がする。


答えに窮しながら

質問してくれた彼に、

逆に質問させてもらった。


「あなたの夢は何ですか」


彼は、よくぞ聞いてくれた、

とばかり、笑顔でこう答えた。


「住む人は無論、観光客も

沢山訪れてくれる格好良いと

言われる街をつくり、

地図に残るような仕事に

関わりたいです」


絵にかいたような答えだが、

彼の表情が真剣な事は、

役員一同感じとれた。



聞くと、彼のお父様は、

長年ゼネコンで仕事をされていて、

発展途上国のプロジェクトに従事。


街づくりしてきた姿を

目の当たりにし、自分も、そんな

仕事がしたいと考えているようだ。


非常に、やる気があり、一緒に

仕事ができたらと考えていた彼。


しかし、最終的には、

大手ゼネコン会社に

就職する事になったようで、


残念ながら、

ご縁を得る事はできなかった。


「今どきの学生は良い事はいうが

結局は大手志向なんですよ」


建築部長が、言う事は

その通りなのだが


果たして、

そう割りきって良いのだろうか?


あの時、社長として

会社のいや私の

「夢」や「目的」を

自信を持って語っていれば、

また違った展開も

あったのではないか?


そうした思いが頭から

離れなくなっていた。


私や会社に「夢」があるのか?


今を改善すべく、

事業に取り組む中で

正直、真剣にそこまで、

向き合って来なかった

ような気がする。


「どのような素晴らしい船も

目的地なくば、やがて漂流する」


ぼんやりしてしまった

「あるべき姿」や

「なりたい姿」を

明らかにし、

自信を持って社員に

語れるようにしよう。


採用活動がきっかけだけど、

それは社員の、いや達社長自身の

為でもあるのだから。


その拠り所は、

どこまでいっても経営理念。


「街と働く社員を豊かにする」


社長デスクの奥に掲げてある、

経営理念の額が、

心なしか神々しく感じた。

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