チャプター 4-3 part.2 (△)

『サンキューな、あいつの側にいてくれて』


 先程、親友に気付かれないよう──いや、鈍感な親友が気付かないと知りながらも支えてきた石見に贈った謝辞を頭の中で反芻する青二。その表情は、荒波を乗り越えた水夫かのように満ち足りていた。

「……行ったか。 よし、ならこっちも」

 しばらくしてから青二は手に持っていたスマホで電話をかける。

「もしもーし、雀部かー」

『何だ、今ワタシは忙しいというのに』

「どうせ、また陸上部覗いてるだけだろ?」

『ど、どうせとはなんだ! どうせとは!』

「まぁ、落ち着けよ。 とっておきの話があるんだ」

『……ふん、話ぐらいは聞いてやる』

 青二の言うとっておきの話を掻い摘まむと、今から屋上で意中の相手に告白させてやる、という事だった。

「ふぅん、どうよ」

『ば、そんな事出来る訳がないだろっ!』

「なんで?」

『常識だ! 常識で考えろ! いくら屋上が開いていようと、そこで告白する馬鹿がいるか!』

 それを聞いた青二は、ニヤリと笑う。

「いや、そういう意味じゃねぇよ。 なんで断れると思ったんだ? また今度って言ったよな?」

『ぐっ、キサマァ……』

 つい先日、二人は罰ゲームを賭けて勝負をしており、負けた雀部はまだその罰を受けていなかったのだ。無論、青二は格好のタイミングを狙って、敢えて罰を受けさせなかった。

「という訳で、屋上に集合だ」

『……あぁ、分かった……』

「へへっ、一世一代の舞台にしてくれよな」

『……そうだな、ワタシの……最初で最後の、大舞台だ……』

 この時、青二は雀部の告白が失敗しつつ、屋上の件を押し付けれると思い、ほくそ笑んでいた。自分が恋のキューピッドになるとも知らずに──。

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