第23話美香ちゃんには好きな人がいるようです
私は美香ちゃんの家に走っていった。急いで玄関のチャイムを押す。美香ちゃんがすぐ出てくるなり私にいった。
「ことちゃんごめんね」
美香ちゃんの顔は今にも泣きそうに見える。
「ううん、だいじょうぶ。それより心配させてごめんね」
「私がいけなかったの」
美香ちゃんはそういうとわあっと泣き出した。やはり気にしてくれていたんだ。私は申し訳なく思う気持ちとこんなに気にしてくれていたんだという温かい気持ちがないまぜになって感じた。
「ねえ、上がって」
美香ちゃんが私の腕をひっぱって玄関に連れていった。そしてそのまま上がらせてもらい、美香ちゃんの部屋に通された。何度見ても女の子らしいかわいい部屋だと思う。
テーブルの前に座るとちょっと待っててねと美香ちゃんが言って部屋を出ていった。
「お待たせ」
急いできたのか、美香ちゃんは少し息を切らせてグラスに氷が入ったアイスティーを持ってきてくれた。そして自分も座る。
「ことちゃん、昨日は本当にごめんね」
美香ちゃんがテーブルに頭をつけんばかりに頭を下げて謝ってきた。
「美香ちゃん、気にしないでいいよ。別に美香ちゃんが悪いわけじゃないんだから」
私は美香ちゃんに真剣に言った。私の困った様子にちょっとだけ笑顔になってくれた。
「美香ちゃん、私に遠慮しないでね。もし美香ちゃんにもその気があったら、岡本君と付き合っていいんだからね。私自分の事ばかりで美香ちゃんの気持ち知ろうともしなかったけど、もしかして美香ちゃんも岡本君の事好きだった?」
私は昨日から気になっていたことを言った。自分の事ばかりで美香ちゃんの気持ちなんて考えたこともなかったのだ。私が岡本君の事を好きだと知ってたから言わなかったのかもと思うと申し訳なくて仕方なかった。
「ことちゃん、私は岡本君の事なんとも思ってないよ。私こそ岡本君とことちゃんを勝手にくっつけようとしてごめんね」
そういった美香ちゃんの眉が下がりに下がっていた。
「ほんとに私に遠慮しないでね」
私が念押しすると、美香ちゃんは心なしか小さい声で言った。
「私好きな人いるの」
「そうなの?」
今度は私が驚く番だった。
「えっとね、いとこの翔也君なんだ」
私は納得した。美香ちゃんのいとこの翔也君は見たことがある。私たちより3歳年上の人で、確かにかっこいい。美香ちゃんがその翔也君と話しているところを見た時、美香ちゃんの顔が輝いていたように見えたけど、そういうわけだったのか。
ということは岡本君も失恋してしまったようだ。岡本君には悪いけどちょっとだけ溜飲が下がった。
「じゃあ昨日岡本君には断ったの?」
私の顔は少し悪い顔をしていたのかもしれない。美香ちゃんは私の黒い笑みに少し気が付いたのか気づかなかったのか一瞬びっくりしてから言った。
「えっとね、告白されなかったの」
「どういうこと?恥ずかしくてできなかったの?」
美香ちゃんはちょっとだけ難しそうな困ったような顔をした。
「たぶん本人の勘違いだったみたい」
「勘違い?美香ちゃんを好きだったことが?」
私の顔が?マークになっているのに気が付いたのだろう。
「ある人にそそのかされたみたい。岡本君は私を好きなんじゃないかって」
「えっ!___」
自分で好きな人がわからないものだろうか。他人に言われてそうなのかって普通思うか?びっくりしていると、美香ちゃんが私の心を読んだかのように言った。
「私もなんで自分の心がわからなかったの?って聞いたら、こんな気持ちになったの初めてだからってすごく謝られたの。正直私この事で、ことちゃんと仲たがいになるんじゃないかとそっちの方が心配で、つい岡本君にきつく言っちゃった。そしたらすごく謝ってくれて。もうなんだかなって感じだったよ」
「そうなんだ」
私も美香ちゃんの話を聞いて、私の中で岡本君が残念な人になった。
「ことちゃんこそ大丈夫?昨日の今日だけど、岡本君の事」
「うん、美香ちゃんの話聞いたら、なんだか吹っ切れた。昨日は正直悲しかったけどね。まあ俊介にフィギュアもらったし。失恋したところ見られちゃったのは痛かったけどね」
私がそういって笑うと美香ちゃんは、初めて私の前で笑顔を見せてくれた。ただそのあとで憎々しげに美香ちゃんが言ったことにちょっと意味がわからなかったんだけど。
「すべてはあいつのせいなのよ、くそぉすべてはあいつのせいだ」
「それよりことちゃん髪切ったの?」
美香ちゃんが急に別の事を私に聞いてきた。
「うんさっき切ってきたの。また短くしちゃった。でもさっぱりしたよ」
「伸ばした髪型も似合ってたけど、その髪型もよく似合うよ」
美香ちゃんに太鼓判を押された私は、少しだけ欠けた自信を取り戻して嬉しくなったのだった。
それから美香ちゃんの恋バナを聞かせてもらった。翔也君がいかに好きかどんなにかっこいいかいろいろ聞かされて正直胸やけしそうだったのは、誰にも言えない私だけの秘密だ。
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