第8話私は大企業の社長令嬢
私たち家族は、ホテルを後にした。今日乗ってきた自家用車に注文しておいたらしいお料理をいくつかのせて帰路についた。
「やっぱり我が家うちは最高~!」
そう叫んで居間のソファにダイブしてごろごろしだした私とは違い、母とおばあちゃんは今日ホテルから持ってきた父とおじいちゃん用のお昼用のお料理をテーブルに並べている。お茶も用意してお昼の準備を忙しくしていた。
私はそれをぼ~と眺めていた。しかしいつの間にか寝てしまっていたらしい。ふと目覚めると毛布が掛けられていた。
「あらっ起きたのね」
「うん」
先ほどお昼ご飯が並べられていたテーブルは、きれいに片づけられていて、いつの間にかおじいちゃんとお父さんはご飯を食べ終わっていた。もうテーブルにはいなかった。お父さんもおじいちゃんもそれぞれ仕事部屋を持っており、そちらで仕事をしているようだ。
「お茶でも飲む?」
「うん、でも今は紅茶が飲みたいなあ」
今の気分は紅茶の気分だったのでそういうと、母は仕方ないわねえ~という顔をしてキッチンに支度しに行ってくれた。
母の淹れてくれた紅茶をゆっくり味わっていると、母が聞いてきた。
「今日のお披露目会の事、学校では誰も何も言ってなかった?」
「うん、だって私誰にも言ってないもん」
その時の私は母の言葉に変なことを言うなあと思っていただけだった。まさか父からこの後爆弾発言がされるなんて思ってもみなかったから。
「ねえおばあちゃんは?」
「おばあちゃんもことちゃんと同じで、少し疲れたから部屋で休んでいるわ」
「そう~。まああれには疲れるよね」
「ほんとね」
そう軽く言った私に、母はちょっとだけ苦しそうな顔をしたように見えたが笑顔で言った。母の様子を見て先ほどの顔は自分の見間違いかと思ったのだった。
私は、それから夕食までのんびりテレビを見て過ごした。
今日の夕食は、おばあちゃんたちが住んでいる家の方でみんなでとることになった。我が家は、おばあちゃんたち世帯と私たち家族世帯と別棟で暮らしている。お互いの玄関の廊下がドアでつながっているようになっている。だから雨でもぬれずにお互いの家を行き来できる仕組みだ。
父も仕事部屋から出てきたので、おばあちゃんの家の方に行くことにした。
おばあちゃんの家は、私の家の間取りとちょっと違い大きな和室がある。今日はそちらで食事をとるようで、テーブルには、先ほどホテルから持ってきたお料理がたくさん並べられていた。
「今日はごちそうだね~!」
おいしそうな料理を見て、思いっきりテンションが高くなった私を見て、ほかの家族皆の笑いが起こった。
みんなでおいしい料理をいただく。お昼が和食だったので、ここに並べられているお料理は中華や洋風だ。私は次々に口にお料理を放り込んでいった。しばらくして私が満腹になったのを確認してお父さんが話し始めた。
「ことちゃん、今日ことちゃんが疑問に感じたことを今から話すよ」
「へっ?」
私はそれまでお料理を平らげることに夢中で、お昼自分で言ったことをすっかり忘れてしまっていた。私のキョトンとした顔に半分苦笑しながらもお父さんは話し出した。
「今日のお披露目会はね、日本でもみんながよく知っている名前の会社、KGY薬品株式会社主催のものなんだよ。ことちゃんも聞いたことあるよね」
「うん」
私は父に返事をした。その会社は私も聞いたことがある。なぜならテレビで頻繁にCMをやっているからだ。よく知らない私でも大きな会社だろうなと想像ができる。でもなんでそんな大企業が?と思った。
「私とおじいちゃんはそこの社長と会長なんだよ」
「はっ???」
今度こそ私はお父さんが言った言葉の意味が全くよくわからなかった。
「お父さんはKGY薬品株式会社の社長で、おじいちゃんは会長なんだよ」
お父さんは、私の顔に出ている?マークにもう一度繰り返していったのだった。
「ええっ、えぇえええぇ_______!!!」
今度こそ私はお父さんが、ドッキリかいたずらを言ってるのかと思ったが、お父さんの顔は真剣だった。
「ことちゃんがびっくりするのも無理はないけどね。本当の事なんだよ」
私は思ったままを口にした。
「うちは、御殿に住んでないし、車も大きな外車に乗ってないし、別荘も持ってないし、外国にもいったことないし、私もお嬢様じゃないよ!」
お父さんは私の持っているお金持ちのイメージにちょっとだけ吹いたが、こういわれては納得するしかなかった。
「今日行われたことちゃんのお披露目会に、この国の一番偉い人や大企業の社長さんたちも来ていただろう?」
そうだ、確か見覚えのある顔をいくつも見た気がしていた。そうなんだ!謎が解けたよ。よかった!じゃないじゃ~ん。
なんてこった!!
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