第13.7話 ★★★エッチなフレンドでなく恋人★★★
「ぷはっ、ちょ、タイムよ! タイム! タイムタイム!」
「……あ? んだよ……」
本当はこの流れのまま本番にもっていきたいハルトだったが、光華の必死の制止に仕方なく手を止めた。
強引にしても良かったが、本気で抵抗されると面倒だと思ったからだ。
そして光華は先程までの蕩けた表情から急にジト目になり……
「ね、ねえ……恋人……三人の内の一人って……どういうこと?」
「は? いや、お前は恋人居ないどころか処女みたいだけど、俺は今、彼女が二人いて……」
「だから、彼女二人ってどういうことよ? はぁ? え? しかも当たり前みたいに!」
その質問の意図が分からなかったハルトは思わず首を傾げたが、すぐに意味が分かって手を叩いた。
「あっ、そっか……確か、人間って……しかもニホンって一夫一妻だったっけ?」
「……」
「ほら、魔族はそんなことねーからさ。男と女が合意してりゃ、いくらでもハーレム作れるし……」
それは種族というより、文化の違い。
別に恋人が複数いても珍しくないハルトと、基本的に運命の人は一人だけという光華。
それは当然受け入れられるものではなかった。
「あなた……じゃあ、恋人がいるのに……私にキスしたの?」
「お前も俺の恋人だろ?」
「ッ! 誰が! ふざけないで……バカ……最低……最低よ……」
その瞬間、光華はハルトに対する失望と同時に、悲しみで涙がこみ上げそうになった。
初めて出会った男と恋人になって体を重ねそうになってしまった。
しかし、光華はもうそれを受け入れそうになっていた。
だが、寸前で分かった。
自分は色々な女に手を出す男に手籠めにされそうになっていたのだと。
それどころか……
「さいてい……私……最悪……こんな男に……私……キスまで……」
「……おい……」
今になって、奪われたファーストキスの後悔が芽生えた。
かつては戦争で、それこそ命を失う覚悟すらして戦ってきた。
女としての幸せを求めるような立場ではなく、恋人を作ろうとすらしなかった。
だが、ようやくその戦争も終わり、自分も普通の学生として生きることが出来る時代になった。
恋人を特別に欲しいとは思わなかったが、もし恋愛をするようなことになれば、自分が心から愛することが出来る人と、という少女のような想いも密かに抱いていた。
だからこそ、もう自分が汚れてしまったという想いが出てしまい、悲しみを抑えきれなかった。
「何が……自分の女になれよ……私はあなたの……精処理道具じゃないのよ!」
「は? んなことねーよ! お前はセフレじゃなくて、恋人に―――」
「何都合のいいこと言っているのよ、この最低クズ男!」
抱きしめられ、口説かれたとき、実は胸がドキドキして高鳴っていた。
しかし、今になるとそれも全てが自分をモノにしようとする薄っぺらい行動だと思えてしまった。
「ちょ、何でだよ! 恋人複数いたらダメなのか?」
「うるさい! もう、あなたのような性欲まみれのクズとは話したくないわ!」
「はぁ? 性欲まみれで何が悪い! メシだって好物は複数あるだろ? その食欲と並ぶ三大欲求の一つの性欲だって、惚れる女が複数いてもいいだろうが!」
「よくないわよ!」
「そ、そんなこと言われても……んな、人間の価値観を押し付けられても……お前、けっこー、めんどくせー女だな」
「価値……感……」
「ま、まぁ俺も俺が複数の女を恋人にするのはよくても、俺の女が俺以外に男を作るってのは……まぁ確かに嫌ではあるけど……」
人間と魔族……というより、ニホンと魔界の文化が違う。それゆえ価値観が違う。
「人間の……価値観……」
だが、そのハルトが何気なく言った言葉が、光華には無視できないものでもあった。
「人間と魔族の価値観……違う……だから……分かり合えない……ち、違う……」
「は? どーした? お前……」
急にハッとした顔して俯きだす光華。何事かとハルトが顔を覗き込むが……
「私は……皆と……姫と一緒に、人間と魔族の未来を……だけど、その私が……でも……でも……」
そう、光華は勇者の一味として、魔界と人間界の和睦を結んで戦争を終わらせた一人。
今後は、人間と魔族が手を取り合って仲良くしていく世界を目指している。
もちろん、すぐにうまくいくはずもなく、差別や反対もあるが、それでも自分たちの夢を叶えるため、その世界を諦めない。
そんな自分にとっては非常識でも、魔族にとっては当たり前の文化に激高し、挙句の果てに目の前の男を中傷してしまった。
「私は……何をやってるのよ……口だけじゃない……」
「おい……」
「と、とはいえ……う~……う~……」
「?」
光華は落ち着いて改めて目の前の男を見る。雰囲気に流されて手籠めにされそうになったとはいえ、一度はそれを許しかけた。
ファーストキスの相手。そして初体験の相手になりかけた。
心底嫌な相手だったら拒絶していた。
それをしなかったということは、やはり多少なりとも目の前の男に惹かれているのは事実だった。
「ね、ねえ……何が違うと……いうの?」
「は?」
「恋人や妻が複数いるのが魔界の文化とはいえ……その、せ……え、エッチだけのお友達っていうのは……仮に私があなたの恋人になったとして、その人たちと何が違うの?」
魔界の文化は分かった。だが、エロいことをするだけの友達と言うのは流石に普通の文化ではないはず。
ならば、ハルトが魔族の中でも女好きの部類であることに間違いない。
なら、恋人との線引きはなんなのか?
「いや、ちげーだろ? セフレはヤレりゃそれでいい。恋人はヤル以外のことも一緒楽しんだり、遊んだり、そういうことをしていきてー」
「…………」
「お前とは趣味が合うから、一緒に音楽聞いて、ライブに行ってもいいな。カラオケとやらにも行ってみたいし、デートして飯食って……つかヤル以外の事でもやりたいことが結構ある……そういうことをしてーと思う相手が恋人……だと俺は思ってるけど」
その問いにハルトは意図が分からずとも、とりあえず素直に答えた。
だが、素直だからこそ裏が無く、ハルトの本音をすんなりと光華も感じることが出来た。
「そう……なのね……そう……なんだ……まぁ、確かにそういう風に一緒に遊ぶのは……楽しいかも……ね」
全て納得したわけではない。ただ、確かにそういう恋人の過ごし方は、無くはない。
そう光華も思うことが出来、もうそれでいいと……
「分かったわ……もう。は~~~~……今朝は何か面白いことがないかしらって望んでたのに……まさか……初めて彼氏が出来るとはね」
「お?」
「大事に……しなさいよ?」
光華はそう言って苦笑しながら、肩の力を抜いて、今度は自らベッドに背中を倒して手を広げた。
「初めてなんだから……精一杯優しく……可愛がりなさいよ」
「おっ、何かまとまったのか? よくわかんねーけど、それならいただきます!」
「ちょ、こら、もう一回キスから、あ、ちょっ――――あ♡」
許しを得たハルトは、横たわる光華の制服のスカートを捲りあげた。
そこには、情熱的な赤い色の派手なレースの下着。
「へぇ~、けっこうセクシーな下着穿いてんじゃねぇか」
「うっ、うるさいわ……へ、変?」
「いいや、大好物だ♪」
そしてハルトは全てをおいしくいただいた。
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