背中を刺しても愛したい

ナツキミキ

第1話 ズリちゃんの手

ナツキの同僚のズリちゃんとは、課が違うので、そんなにしっかり話をしたことはなかった。

新年会で隣の席になり、初めて真剣に話を聞いた。

真剣といっても、自分の過去の性体験を赤裸々に語り出したので、ナツキは男としての嬉しさと、見た目によらない大胆さに、困惑した。

ズリちゃんはどちらかというとメンヘラ系の陰が差すような雰囲気で、長いストレートの黒髪、色白、細く華奢、生活感を感じさせない人妻だった。

飲み会の帰り際、ほんのり赤くなったズリは「ナツキさん、また飲みに行きましょうね」と言って、手に触れた。

その手の感触に、ナツキは驚いた。

外観とは裏腹に、ものすごく荒れていたのだ。軽く触れただけでもわかるほどに。

ひょっとして、彼女は家事をすべて自分ひとりでしているのではないか。旦那はなにもしてあげない。ものすごく苦労しているのではないか。共働きでがんばりながら、この子はそんな苦労をおくびにも見せない。すごいな。

それから、ナツキはズリのことが頭から離れなくなった。

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