第二話 生きる為には
目を開けるとそこは一面に赤い彼岸花が咲いていた。
そよ風が吹き彼岸花が揺れると同時に遼太郎の髪は風になびく。
――あれ、俺なんでこんなところにいるんだっけ?
遼太郎は思考を巡らせる。元旦、片思いの相手である秋穂とともに初詣に行った。その帰り道、人混みの中を分け入り、進んで抜け出たところで意識を失ったのだ。そして、意識を戻すとこの彼岸花畑にいるという状況である。
改めて、思い出してみると呑み込めないこの状況になぜ、病院ではないのか、てか、ここはどこなのか困惑した。そんなとき、
「ねぇ、君が契約者候補?」
急な声に周りを見渡すも誰もおらず、「空耳か……」とつぶやく。
すると、目の前には白髪の少女がいた。急にいたので驚き、地面に腰を打つ。
その少女は、白い浴衣を着た和風という大和撫子の雰囲気を纏い、綺麗な顔立ちの少女だった。少女は、
「契約者候補?」
「契約者候補?何のことかさっぱり分からないんだが、ここがどこで、今自分がどういう立場にいるのかその辺も含めて教えてもらえないか?契約者候補?みたいな俺には理解できないことを言っているんだ、そこらへん分かるんだろ?少女(ロリ)」
少女は、
「生きたいなら試練を受けて、候補から合格して、ただそれだけ」
「?」
次の瞬間、視界が一気に変わり、そこは初詣に行った神社だった。
違うことは、遼太郎の服装が白い道着の姿になっていることと、目の前にはフードを被った男がいた。
男の手には鉄で出来た鞭のようなものを持っていた。
思考が全く追いつていない遼太郎は何かのゲームかと考えていた。
だが、何もかもがリアルすぎる。
次の瞬間、左の頬が熱くなった。手で触ると血が付着した。
「え?」
男の方を見ると、鞭が剣のようになっていた。鞭のせいかリーチが長いので突きの動作だけで、間合いが五メートルあるのにも関わらず、と届いたのだ。
男は、「ちっ」と舌打ちをした。
遼太郎は、後ろに飛び、もう少し、間合いを広げた。脳内は戦闘状態になった。だが、武器が無いためどうすることもできない。
次の手を考えるにも駒がないのと同じだ。対して、男には鞭という武器、分かりやすく言えば、将棋でいう香車か飛車のような存在があった。
遼太郎は、歩である。まだ、なにも出来ない。
辺りを確認する、地面は、砂利。周囲に武器になりそうなものはない。つまり、積んだも同然。
そんな状況にも関わらず、遼太郎の心の中は、
――やばい、興奮する。
一見、変態である。だが、遼太郎は大真面目だ。誰もが困難だと決めつける状況を大逆転する。それが出来るだけの力を遼太郎は幼少期から鍛えてきた。
興味ある事には何があろうと突き進むのは遼太郎だからこそできたことである。
「ふーーっ」と息を吐く。「すぅっ」と息を吸って、息を止める。
次の瞬間男が、鞭を横に振ってきたのを後ろに下がり避け、地面にしゃがみ、砂利を握る。投げるをフリをし、男が、ここぞとばかりに鞭で突いてきたところ、避け、思いっきり、砂利を投げつける。
そして、一気に間合いを詰めて、男の顎を狙って、殴った。そして、足払いをしてこかす。
鞭を奪いとり、遼太郎が優勢になった思った瞬間、鞭は砂となった。
「はぁ!」と怒り交じりの声を上げる。男は砂に手を当てると砂が鞭になった。
男だけの特性なのかわからない。砂から武器を錬成できるということだけは分かった。ここからするべきか、遼太郎は、手を合掌して考えた。これは、遼太郎の考えるときの癖である。
数秒後。
「多分、一か八かの掛け勝負。絶対勝って見せるからな!」
そう告げて、遼太郎は動き出した。
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