第2話 旅人はその日よりその場暮らし

「思ったより広いな。。というかここって。」


「まるで酒場ね。。」


ビーバーに案内された土のドームは、地下に40㎡ほどの部屋があった。

だが、広さよりも意表を突かれたのが、部屋の内装だ。

カウンター、丸テーブル、椅子、逆さに並んだグラス、数多の酒。。

酒場だ。

宿屋ではない。


「バッツ!ここはどう見ても酒場よ?早くでるわよ!」

ラックがやや慌てて言う。

気持ちはわかる。星の治安を理解していないので予想外の出来事に不安を感じているのだ。


「そうだな。」

俺も危険だと判断し、店の外に出ようとする。


「みっきみっき!!ぴきにーさむがらん!みりおだーす!」


待て待て、ここは酒場だが、連れてきた理由がある。

って言ってる気がする。。。

やばい、どうしよう。。


「バッツ!!何してんの??コイツは頼むから我々の食事になってくれって言ってるのよ!?」

ラックはちょっとでも怪しかったり、怖かったりすると即座に逃げるを選択する性格。

それは利点でもあるが冷静な判断を下しているとは言えない。


「落ち着けラック。少しだけ待とう。悪い奴には見えない。それにビーバーの策略なんてたかがしれてる。」


ドカッと丸テーブルに腰を下ろす。

こんなに愛らしいビーバー。

一生懸命考えた策略があるならちょっと受け止めてあげたい。


すると、ホッとしたビーバーはカウンターの奥にある部屋に向かってピコピコ歩いて行った。


「バッツ!あんたたまには私の言うこと聞いたらどうなのよ!」


「ラックが俺の言うことをたまには聞いてくれたら聞いてやるよ。」


「これじゃ命がいくつあっても宇宙の果ては見れないわよ。。」


「かもな!ははは!」


なんだかんだ言って1羽で逃げようとしない相棒を誰よりも俺は信頼している。

きっと、ラックも同じくらい俺を信頼してくれている。


「へぇ~!この人達が旅人さん??」


ビーバーが入って行った部屋から女が出てきた。


「げっ!!お前もしかして人間か!?」


「えぇ。私は地球出身。本物の人間よ。」

妖艶な女がウィンクをしながら言う。


「チッ、悪いが出て行くぜ。人間のいる星に興味はねーからな。」


「星のレポーターさんかな~?」


「。。。旅人やってたことあんのか?」


「そうよ。ねー、少し話さない?地球出身者に会うのは5年ぶりなの」


「。。星の情報を教えてくれんならいいぜ。」


「決まりね。座って!」

少しウキウキしてグラスとお酒の準備をする女。

落ち着いた話し方に、少し巻かれた長い黒髪。少し露出の多いドレスから見える白い肌。程良く膨らんだ胸。スラッと伸びた足。

年上のお姉さんだと感じるが、ウキウキしているところを見ると。

洗練された美の奥に眠る、さらに美しい原石を見ているかのような気になる。

その上、細部ま、、


「バッツ!!」


「はっ!な、なんだよ!?」

危なく魅了されるところであった。

しかし、なぜか度々ラックに俺の考えが読まれる。特にいやらしいことを考えている時だ。


「じゃあ、まずは聞かせて欲しいなー。

あなた達の旅の話を。。」

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