「天使の梯子」「迷宮」「契る」
やっとの思いで魔物の巣食う迷宮から生還することが出来た。しかし喜びはなかった。あまりにも支払った代償が大きかったからだ。私以外の仲間は全て死んでしまった。流れる涙は死者を悼む涙か、それとも生き残った安堵の涙か。
郊外の官営療養所で傷を癒すのに二ヶ月ほど要した。ようやく外出許可の出た日、私は海の見える岸辺を散歩した。遙かな沖合いには茜色の雲が棚引いており、雲間から洩れる光線が梯子のように海面を照らしている。
私の短かった幼い日、彼女は魔道師を目指していた。天使のような笑顔の少女だった。私は戦士として彼女を永遠に守ろうと誓った。あれから十年、その契りがこんなにもたやすく破れるなんて思ってもみなかった。どうして私だけが生き残ってしまったのか。
枯れ尽くしたとばかり思っていた涙が、黄昏の中とめどなく溢れて止まなかった。
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