シスタープリンセス・オブ・ウエポンズ

平 一

シスタープリンセス・オブ・ウエポンズ

(2003年頃から、出版社などに投稿した拙文です)


最近、善悪の複雑な関係について描くアニメが増えて、戦争という激しい対立の場面でも、そうした側面が描かれるようになりましたね」

「昔も『デビルマン』や『イデオン』『ゼオライマー』があったし、『ガンダム』や『マクロス』にもそういう部分がなかったわけではない」

「現実の複雑さを描く流れは、『ナデシコ』等の設定にも引き継がれています」

「『エヴァンゲリオン』や『ラーゼフォン』でも、抽象的だがそれは描かれていた」


「その解決法も、当事者あるいは全世界が破滅して落とし前をつけるもの、主人公達が双方の悪しき部分を克服し新しい未来を築くもの、解決困難と知りつつもそれを直視して立ち向かってゆく姿を描いて終わるもの、全く新しい技術で人間自体を作り変えることにより、その葛藤をいわば飛び越えてしまうものなど、様々なものがある」


「最後の方法は一見現実逃避のようにも見えるが、現代の医学や工学は以前には考えられなかったような人的資質向上を可能にしつつあるから、もはや必ずしも、非現実的な設定とはいえなくなってるね」


「しかしそれだけあれば今いる人々は何もしなくてよいかというと、それでは無責任だし物語にならないので(笑)、これからも色々な作品が作られ続けてゆくだろう」


「現実の社会でも、世界はまとまる一方で地球の限界も見え、生活や仕事は変わると共に、我々自身の高齢化なども進み、色々な課題に対処する必要性が高まっている。そんなことを一緒に考えるきっかけになるようなアニメも、できたらいいね」


「ところで話は戻るんだけど……あの妹たちが出てくる『大戦略』が作れないかな」

「ああっ、また病気が出たっ!」(笑)

「いやOPがあまりに可愛いので、彼女達の姿が色々な兵器と重なってしまって」

「一体どうしたら重なるんだ!?」

「まあ一応、男の子ですし」

「四十男のどこが男の子だっ!」

「最近ストレス多いもんで……」

「言い訳してるし」(笑)

「彼女たちが色々な兵器を代表して、アドバイスを与えてくれるとか」


「ではまず一番人気の咲耶ちゃん。 

魅惑的な彼女は、白鳥のように美しいB1ランサー超音速爆撃機!」

「お兄様……あたしと一緒に危険なフライト、してみない? 

ALCM(Air Launched Cruise Missile /空中発射巡行ミサイル)やACM(Advanced Cruise Missile /発達型巡行ミサイル)なんて長射程兵器は使わない、超低空侵攻爆撃よ。

SRAM( Short Range Attack Missile /短射程攻撃ミサイル〔とはいえ射程50km以上、核弾頭威力200kt〕)を撃ちまくって防空基地を潰しながら斬り込み攻撃をかけ、敵のICBM基地に9メガトンのB53熱核爆弾をお見舞いするの。

成功したら第三次世界大戦は確実よ!」

「そ……それはとってもスリリングだね。

まるで、『博士の異常な愛情』に出てくるイカれた基地司令官みたいだ。

最近なら『トータル・フィアーズ』の極悪テロリストかな? 

もし僕があと百年たっても生きてたら、その時にでも考えてみよう。

……じゃあ、またね。

確かに、物凄く危険な魅力をもった女の子みたいだ……(恐泣)」(笑)


「彼女をサポートするのは3人。

まず鞠絵ちゃんはE3セントリー空中警戒管制機、すなわちAWACS(Airborne Warning And Control System/早期警戒管制機)です」

「兄上様のためならば、700km以上離れた敵機でも、私の電子情報処理能力を総動員して発見してみせますわ!」

「ほう……まさに『情報を制する者は戦を制す』だね! それは心強い」


「敵機を発見したら飛んでいくのは忠犬ミカエル……じゃなくて(笑)、四葉ちゃん。F22ラプター戦闘機はどうでしょう」

「四葉ちゃんが戦闘機?」

「未来型戦闘機は、そんなに派手じゃありません。

ステルス性があるし、アフターバーナー(加速用の排気再燃焼装置)を噴かさなくても超音速で飛び続けられる、スーパークルーズ能力もある。

アクティヴ・フェイズド・アレイ・レーダー(2千個の小型レーダー素子を個別制御する超高性能の能働位相配列レーダー)とAMRAAM(Advanced Middle Range Air-to-Air Missile/発達型中射程空対空ミサイル〔といっても最大射程65km、レーダー内蔵のため撃ちっ放し可能)〕)も備えてます。

おかげでドッグ・ファイト(格闘戦)をしなくても、ビヨンド・ヴィジュアル・レンジ(視界外)戦闘射撃と離脱による、ファースト・ルック・ファースト・キル(先行発見・先行撃破)が可能になりました。

万一格闘戦になった場合でも、方向舵や動翼に加えて推力変向式排気口(スラスト・ヴェクタリング・ノズル)を使い、従来の戦闘機では無理だった超機動性(スーパー・マニューヴァビリティー)を発揮できるんです。

まさしく制空戦闘機(air superiority fighter)を凌駕りょうがする、航空支配戦闘機(air dominance fighter )の名に相応ふさわしい!」

「兄ちゃまを狙う敵機は、み~んなチェキです!」

「ああ、それも有り難いね」


「チアリーディングをやっている応援好きな花穂ちゃんは、F/A18ホーネット戦闘攻撃機が良いかと」

「お兄ちゃま、花穂は前線の敵を撃破する近接航空支援だけじゃなくて、敵後方の輸送を遮断する航空阻止、敵防空制圧や対艦攻撃・空対空戦闘もできるんだよ!」

「へえ……花穂ちゃんはすごいね。 

でも低空飛行をしすぎて、対空機関砲の盲目射撃で転んじゃったりすると危ないから、ちゃんとJDAM(Joint Direct Attack Munition/統合直撃爆弾〔=米海・空軍共用で、子弾を散布しない単弾頭型の爆弾〕)による高高度精密爆撃とか、JSOW(Joint Stand-Off Weapon/統合長射程兵器〔=射程70km以上の子弾散布式滑空爆弾〕)やJASSM(Joint Air-to-Surface Stand-off Missile/統合空対地長射程ミサイル〔=射程180km以上〕)を使った遠距離精密攻撃にするんだよ」


「陸上兵器はどうかな?」

「メカ大好きな鈴凛ちゃんはM1エイブラムズ戦車、運動が得意な衛ちゃんはM2ブラッドレー歩兵戦闘車が似合ってます」

「アニキ! 今度の私はメカ鈴凛よりも強力で無敵だよ!

……でも200m/ℓのガスタービンエンジンとか、120mm戦車砲と劣化ウラン装甲への換装、射撃統制装置や情報処理装置の性能強化にはとてもお金がかかるんだ。

だから援助よろしくね!」

「ああ……心から平和を祈ろう」(笑)


「兄ぃ! ボクは兄ぃのためならどんな都市や工場、空港や軍港でも占領するよ! 山岳地帯はちょっと苦手だけど、25mm機関砲を使えば装甲車も簡単に撃破できる。TOW(Tube-launched,Optically tracked and Wire-guided /発射管収納型・光学追尾・有線誘導式)ミサイルで戦車だってやっつけられるんだよ。

鈴凛ちゃんみたく装甲やヴェトロニクス(Vehicle Electronics/車載電子装置)も改良できるし、TOWの代わりにスティンガー対空ミサイルを積んでM6ラインバッカー防空システムになることだってできるんだ!」

「頼りにしてるよ……でも歩兵の任務は大変だ。

危険も多いけど、民間人を巻き込んだりしないようにしてね。

今では、戦争犯罪への眼も厳しいからね」


「雛子ちゃんは……何かになれるかな?」

「初めは偵察部隊のハンヴィー(HMMWV:High Mobility Multipurpose Wheeled Vehicle/高機動多目的装輪車両、ジープとトラックの間の車両)なんてどうかと思いました。

でもいま米陸軍では、冷戦後の地域紛争に対処するため、装甲装軌車両をもつ機甲師団や機械化歩兵師団(重師団)と、装甲車両をもたない軽歩兵師団や空挺師団(軽師団)の隙間を埋められる部隊を編成しています。

中型輸送機や大型ヘリでも運べる機動性と、ある程度の防御力を兼ね備えた装甲装輪車両をもつ『暫定的旅団戦闘チーム(Interim Brigade Combat Team)』(中旅団〔Medium Brigade〕)です。

その車両として選ばれたのがLAVⅢ(Light Armored Vehicle Ⅲ)ストライカー装甲装輪車両なんです」

「あのね、お兄たま! ひなだってね、いろんなことできるんだよ。

LAVは海兵隊も使ってたんだけど、25mm機関砲を積んだLAV-25のほかに、81mm迫撃砲のLAV-M(Motor)、TOW対戦車ミサイルのLAV-AT(Anti-Tank)や、25mmガトリング機関砲とスティンガー対空ミサイルのLAV-AD(Air Defence)があるの。

こんどのLAVⅢはICV(Infantry Carrier Vehicle/歩兵輸送車)とMGS(Mobile Gun System /機動砲システム)が主力になるんだけど、とくにMGSは無人砲塔に105mm砲を積んでて、劣化ウラン弾を使えば主力戦車だって撃破できるんだよっ!」

「それはすごいけど……あんまり危険なものは使わないようにね(泣)」(笑)


「お料理上手の白雪ちゃんはどうだろう」

「M109A6パラディン自走砲がいいですね」

「にいさま、姫のおもてなしはメニューが豊富ですの!

対人・対物用には普通の榴弾、対戦車用にはSADARM(Sense And Destroy ARMor Munition/対装甲感知破壊弾)、精密誘導攻撃が必要ならレーザー誘導砲弾カパーヘッド、遠くの敵には子弾や地雷の散布も可能な長射程砲弾エクスキャリバーを撃ち込みますの。

トーチカなどの堅固な目標には、開発中止になったクルセイダーほどではないけど、MRSI(Multiple Round Simultaneous Impact/複数砲弾同時着撃)をかければ木っ端微塵でェすの!」

「はは……白雪ちゃんって意外にワイルドなんだね」

「あら? このM785特殊砲弾って何かしら」

「そ、それは2キロトンの核砲弾だから、絶対に撃ったりしちゃダメだよ……分かったねっ(泣)?」(笑)


「地上配備の核兵器といえばICBM(InterContinental Ballistic Missile/大陸間弾道弾)ですが、千影ちゃんはLGM-118ピースキーパーなんかどうでしょう」

「兄くん……ぼくのミサイルは、高圧ガスでいったん打ち上げてからロケットエンジンに点火するコールド・ローンチ方式なんだ。

だから発射筒サイロが痛まず、そのあとで再装填することができるんだ。

もっとも人類に、『そのあと』なんてものがあればの話だけどね……」

「恐いっ! ハマりすぎてて恐いっ(恐泣)!!」(笑)


「可憐ちゃんは、他の妹たちのように飛び抜けた特技や特徴はないけれど、それゆえに誰とも仲良くなりやすいかもしれない。

また誰よりも、兄のことを思っているようだ」

「海洋国家アメリカの、海軍通常戦力の中核たるニミッツ級原子力空母は彼女で決まりですね」

「お兄ちゃま……私の武装はファランクスCIWS(Close-In Weapon System/近接防御兵器〔=20mmガトリング機関砲〕システム)やRAM(Rolling Airframe Missile/回転弾体ミサイル〔=回転により機体を安定させる21連装の短射程対空ミサイル〕)、それにシースパロー短射程対空ミサイルぐらいしかないけど、艦載機を使えば早期警戒、防空、対地・対艦攻撃それに対潜作戦だってできます。

どうぞ何でもおっしゃってね」

「あ~もお可愛いったらありゃしない!」

「親馬鹿、じゃない兄馬鹿ですな」(笑)


「武道の達人春歌ちゃんは、やっぱりタイコンデロガ級イージス巡洋艦でしょう」

「兄君さまにあだなす空の脅威は、航空機であろうと巡行ミサイルであろうと、はたまた弾道ミサイルであろうとも、ひとつ残らず叩き落とします!

わたくしが持っているのはスタンダードやハープーンといった対空・対艦ミサイルだけではありません。

TLAM(Tomahawk Land Attack Missile/トマホーク対地攻撃ミサイル、射程1000km以上)やERGM(Extended Range Guided Munition/射程延伸誘導砲弾、同100km以上)、VLA(Vertical Launched ASROC〔=Anti Submarine ROCket〕/垂直発射型対潜ロケット)を使えば、対地精密攻撃や対潜攻撃もできますわ!」

「実に頼もしいですね!」


「最後に、亞里亞ちゃんはどうかな?」

「一見のんびり屋さんの女の子ですが、実は数学や芸術の天才とか、意外に大物なのかもしれません……というのは無理やりかもしれませんが(笑)、目立たぬながらも巨大な破壊力を秘めたオハイオ級弾道ミサイル原潜では?」

「そうか……彼女ののんびりは、水中にも届くが数語送るのに30分かかるELF(Extremely Low Frequency/超長波)通信のせいだったのか」(笑)

「この艦は475キロトンの核弾頭8発をもつトライデント・ミサイルを、24基搭載しています。

射程1万2千km、半数必中界は90m。

広島型原爆の約30倍の威力を持つ水爆を192個の目標に撃ち込める、

まさに史上最強かつ最恐の兵器といえましょう」

「亞~里~亞~も~、撃~ち~た~い~」

「わ~っ! 撃っちゃダメ~っ(号泣)!!」

「くすん……」

「ほ~ら、そんな恐いものより、特殊部隊運搬艇や通常型巡行ミサイルがあるよ」

「にいやが~、言うなら~」

「ほっ……というわけで、プリピュアの愛らしい妹たちによる『大戦略』はとても刺激的なゲームです。ゲームも色々ありますが、これは知的で社会勉強にもなります。ぜひともどこかで作っていただきた……ああっ!」(↑恒例の袋叩き[笑])


「ところで……さっきから君の頭にかじりついてる、SS少佐の軍服を着た食屍鬼グールは一体何なんだ?」(闇笑)

「わっ、私は無関係だ、でも『Hellsing』続編も見たい~(泣)!

そうだ、セラスちゃんの中の人はヒカルちゃんもちせちゃんも可哀相だったから、やく落しの意味でも、もう一度不死身の役を!」

「また無茶苦茶な論法を!」(笑)


「こんなおバカを言ってられる間は、まだ平和なんだろうなあ」

「……とか言ってたら、あちこちでテロ事件が(涙)」

「『新しい戦争』は、ある意味もっと恐いね。軍隊を飛び越して、いきなり市民を襲ってくる」

「大戦期の無差別大量殺戮戦を経験した軍人が、農業時代の悠長ゆうちょうな戦争を羨ましがるのと同じで、どの戦争でも悲惨なことには違いないのだろうけど」

「あっ、とうとう戦争が始まった」

「オランダ・ドイツ・ロシアや日本あるいはイラクも、実は世界を動かす人々からの支援によって文明化の拠点として近代化したのち、各国の均衡調整や文明化の副作用除去のため、敵役になって叩かれたようにも思えるんだけど……」

(↑拙作『陰謀論?』をご参照いただければ幸いです)

「いずれにしても、戦争が物語やゲームの中だけになる時代がくるよう、願おう」

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