第32話 失念してた
定時に上がったとは言え井達さんのマンションから帰路に着くと、すっかり夜になっている。夕飯は軽く外食にするかテイクアウトにしようかな?
「何食べたい? 」と、僕は聞く。
「うーん。スーパーのパック寿司」
「綾香さんの食好みって結構おじさんだよね」
満員電車のイチャイチャタイムはちょっとクセになる(いい迷惑)。綾香さんはスッキリしたみたい。強くギューッとしてくるから、よろけそう。
朝から突然失踪した綾香さんは、パニックになりながら産婦人科が開くのを待った。その間にジェシカに連絡すると、ジェシカは病院まですっ飛んで来てくれてたんだって。
ジェシカがハイテンションで喜ぶから、凄く恥ずかしい目に合ったんだとか。それで悩んでるのもバカバカしくなったって。
そして会社に行く気になれずサボっちゃったと。まぁ、あのジェシカさんの勢いを振り切って会社に行けないよなぁ〜
「気をつけて」と、いっしょに電車から降りてホームを歩く。改札を抜けて構内から外に向かうところで……
会社の先輩たちとバッタリ会ってしまった。綾香さんのマンションからとんぼ返りしていたところか。
「要くん! と、綾香さん」
大きな声で反応されて、もう逃げる事も出来ない。
しまった……先輩たちに連絡する事をすっかり忘れていた。
「ご、ごめん。綾香さん……忘れてた」
これ、完全にバレた。獲物を狙う狩人の様にズイズイと先輩たちがこっちに向かってくる。
つないでいる手を今更解けないと悩んでいると、覚悟するかのように綾香さんが強く手を握ってきた。
「要くん、完全にロックオンされたわよ」
なぜか、綾香さんまで臨戦モードになったんだけど、なんで!?
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