第27話 全部好き
一緒に帰宅して直ぐに検査薬を使った。あっさりと陽性反応が出て、ずいぶん簡単に判っちゃうんだなって思った。
綾香さんに先にお風呂入ってもらう間に夕食を作ったけど、綾香さんは食事が喉を通らなかった。
僕は急いで食事とお風呂を済ませてゆっくり話せる時間を作ると、綾香さんはメソメソしてるから僕はまた超えなきゃいけない壁があるみたいだ。
いつもならコーヒーかビールを飲む時間。僕は近所の自動販売機からジュースを買って綾香さんに渡した。
どっから切り出そう……
「綾香さん、僕と結婚するんでしょ? 」
「するって……言ったけど、要くんに合わせてるだけだもん」
「綾香さんは本当はいやってこと? 」
「違う。要くんが気が変わるまではって……」
「あー、もう。そこからなんだ」
綾香さんの中ではいずれ僕から別れていくのが前提になってた。僕って信用ないんだなぁって悲しい気持ちが襲うけど、これって綾香さんの防衛反応みたいなもんなんだろうな。
初めてセックスした時も、お互いが求めてるって分かってるのに、僕はそれが伝わるように抱きしめても『過ち』にされていた。
ついこの間なのに懐かしい気がした。
あの頃は僕は泣きそうになりながら綾香さんを求めたけど、今は綾香さんが泣いてる。
僕はソファーの上で丸くなってる綾香さんを抱きかかえて、綾香さんの頬に自分の頬をくっつけた。
自分が安心したくて綾香さんに甘える。
「……道理で体温高かったんだ。あったかい……」
綾香さんを抱きかかえてすりすりしてると、綾香さんが眠そうな顔になってる。
「全部好き」って、いっぱいキスする。
綾香さんの気持ちを解くのは手が掛かるけど、今は腕の中にいるだけで全然違う。
綾香さんがうたた寝し始めて、僕は片手にスマホを持って「妊娠」と打って検索を始める。
ネット上は情報の洪水で、一通り読んだらレポート書けそう。
少しずつ、妊娠に関するキーワードを覚えてネットサーフィンすると、知識は入るけど闇も深そう。不安を慰める為に読みふけたら気がおかしくなりそうな案件だなって思った。
「調べるな」とは言えないけど、雑音も多いから綾香さんでも頭いっぱいになるんだろうな。
妊婦さんは眠いみたいで、検索の続きはベッドに移ってからにした。
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