恋をしたのは、年下の男の子でした。
藤乃宮 雅之
第1話 出会いは意外なところから
六月も一週間が過ぎ、梅雨がまだ来ない初夏。
教育実習生の3名が職員朝礼前に、教務主任の教諭に連れられて校内を案内されていた。
始業の一時間ほど前。
体育館からはバスケットボールをダンダンとドリブルする音と、シューズが床を擦るキュッキュという音が響いている。
体育館横の屋外通用路の脇には、整えられたドウダンツツジの生垣が、花の季節の最後にとスズランのような可愛らしい白い花を揺らしている。
その生垣は、30メートルの弓道場の矢道に沿って、的場と射場を体育館脇の通用路から隔てるように植えられていた。
射場の前の白洲でドウダンツツジの植え込みは切れ、そこから白い小袖に黒の弓道袴を履いた男子生徒が、キリキリと大きな和弓を引き絞っているのが見えた。
タンッと弦が鳴り、パンっと霞的(かすみまと)が弾ける音が響く。
『セイッ!』
射場に居る弓道部員から一斉に中(あた)りの掛け声が響いた。
始業前に校内を案内されていた教育実習生の一人、村崎(むらさき)綾香(あやか)は、その男の子の中性的でキレイな面持ちと、凛とした雰囲気に目が離せなくなって佇(たたず)んでいた。
遡(さかのぼ)ること約一か月。
ゴールデンウイークが明けた初日。
始業前の玄磐教育大学の第三講堂、すり鉢状にしつらえられた席で綾香はうう~んと大きく伸びをした。
かなり短めのショートヘアに小さな赤い石の光るピアス、ペールピンクのリップを引いた彼女は、伸びのついでに大きなあくびをひとつ。
ぱっちりとした大きな目から涙がにじんだ。
「おはよ。綾香、休み疲れ?」
ストレートのミディヘアの女生徒、堂本(どうもと)香里(かおり)が隣に座って綾香を覗き込んだ。
白い長袖ブラウスにグレーの七分丈ワイドパンツ姿の彼女は、教科書類を詰めたブリーフケースを足元に置いた。
「あ、おはよ。香里。何かさ、シャッキリしないんだよね~。ゴールデンウイークとか言ってもカレシ無しじゃあ、実家帰って、アマゾンプライム観て終わりじゃん?」
「21歳の青春、ムダ使いねぇ。もっと建設的なコトしたら?」
香里は苦笑いしながら自然科学の教科書を引っ張り出した。
教壇を見下ろすこれらの席に、わらわらと学生達が座って行く。
「そう言えば、そろそろ教育実習の季節よね? 綾香はどこに志望出したの?」
「うん。高校教育のコースで第一志望出したんだ。ま、どうなるかは受け入れ先の学校さん次第だけど。」
「そっか。私は小学校希望だから一緒になれないね。」
「香里は子供から人気出そうね。私は、女の子っぽく無いから・・・」
綾香の表情が曇った。
「綾香。内藤に言われたコトまだ気にしてんの? 別に良いじゃん、縁が無かったオトコの言う事なんて。」
「う、うん・・・」
『う~ん。ごめんな。俺、どっちかって言うと女の子らしい娘が好みなんだ。村崎さんとは、友達以上には思えなくって。』
忘れたい言葉がまた頭の中をリフレインした。
「みっみなさんおはようございます。今日から今月いっぱいお世話になります、玄磐教育大学の村崎綾香です。よろしくお願いします。」
黒板に、転校生のように名前を大きく書いた綾香は、ド緊張したままペコリと頭を下げた。
二年三組のこの教室に、20人の夏服の制服を着た生徒が、きちんと座って教壇を見つめている。
少子化の影響か、自分の高校生の時よりもクラスの人数が少ない事に驚きつつも、若干プレッシャーが軽く感じた。
(うお~、緊張するぅ。えっと、早く馴染むためには生徒たちの顔を覚えるのが肝心よね。)
引きつった笑みを浮かべながら教室の顔ぶれを見回す。
(結構、品の良い子ばかりね。化粧バリバリの娘もいないし、横柄な態度の男子もいない。)
自分の高校の時と照らし合わせながら、さすが進学校と感心していた時、右側の席の男子に目が留まった。
制服から男子生徒と判るが、色白でちょっと女の子みたいな顔立ちをしている。
(あ、あの子、今朝、弓道場で・・・)
目が合った男子生徒はニコリと微笑んで軽く頭を下げた。
思わず目が泳ぐ。
綾香の隣でこのクラスの担任教諭、大岩(おおいわ)光司(こうじ)が玄磐教育大学の事を説明していた。
50代の彼は、羽織ったツイードのジャケットにグレーのワイシャツ、青いネクタイをぽっこりしたお腹の上に垂らして黒板にチョークでカンカンと書き物をしている。
「・・・では、ちゃんと敬意を込めて『村崎先生』と呼ぶんだぞ。まぁ、授業を離れたら仲良く愛称でも良いだろうが、公私のケジメはちゃんとつけるんだぞ。もうコドモじゃ無いんだからな。」
はぁいと気の抜けた返事と、クスクスと笑みが聞こえた。
「それじゃ、村崎先生に質問は?」
大岩教諭がクラスを見回す。
一斉にあがった多くの挙手に綾香がたじろぐ。
「村崎先生の趣味はなんですか?」
「えっと、強(し)いて言えば映画鑑賞です。1940年代のアメリカ映画なんですが「Heaven Can Wait(天国は待ってくれる)」はコメディータッチで人生の視点を語ってくれる、見た後に清々しい気分になれる映画なのでオススメします。SFXなんかは皆無ですが、その分、舞台美術や視覚効果が配慮されていて映像構図もキレイです。」
教室から『へぇ~』と短い声が上がり、ちょっと頭の良いコメントが出来た事に満足する。
「先生、カレシはいますか?」
胸元の名札に『大場(おおば)』と付けた男子が笑いながら質問し、クラスからクスクスと笑い声が上がる。
「残念ながらいません。」
「じゃぁ、どんなヒトがタイプですか?」
「え・・・と。外見よりも人として尊敬できる人が良いです。」
笑みを作って軽くクラスを見回し、視界の端に弓道男子を入れる。
「で、ホンネは?」
その質問にクラスがどっと笑う。
「そういう事は個人的に質問しに来てください。」
視界の端で笑っている男の子を見ながら、綾香は笑顔で返した。
「実習生のみんなには中館の第一視聴覚室を研修室にしているから何か用事がある時はそこへ訪ねて行きなさい。ただし、実習生の邪魔はしないように。お前らだって学校の課題中に邪魔されたく無いだろ?」
大岩教諭はクラスを鎮めるように声を上げた。
「それじゃ、次の質問は?」
大岩教諭の声にまた手が挙がり、綾香をイジる質問が続いた。
『研修室』とドアに貼り紙のある第一視聴覚室。
教壇のホワイトボードに加え、天井から大型の薄型モニターが下がっている。
白い天板の長机が並び、セットされた背もたれ付きのモノトーンの丸椅子で全体的に統一感が漂っている。
壁面は白地にパンチ穴の防音壁で施工されてあり、研修映像などを流しても廊下に音が漏れにくい仕様になっている。
綾香たち3人が使うにはかなりだだっ広く、名札の貼られた長机に一人ずつ座っているのは正直寂しい。
綾香は渡されたクラス名簿と教室の席順表をじっと見ていた。
「さすが進学校だけあって、広範囲から通ってきているのね。」
名簿の住所録を眺めながら独り言を呟く。
次に席順表に目をやる。
(え~と、あの子の席は右二列目の前から三番目だったわね・・・)
そこには「一色(いっしき)章浩(あきひろ)」と書かれてあった。
「一色、章浩くん・・・か。」
ぽそりと綾香はつぶやいた。
「ねぇ、村崎さん。どんな感じだった?」
「ふぁいっ?!」
声を掛けた方、掛けられた方共にびっくりして目を丸くする。
紺のリクルートスーツを着て、長い髪を後ろに束ねた秋山(あきやま)穂莉(みのり)がちょっと咳払いして再び綾香に声を掛けた。
「ごめんね集中してた時に声掛けて。」
「う、ううん。そんなんじゃ無いから。気にしないで。えっと、クラスの感じ?」
「うん。私は二年一組で、まだ自己紹介程度だけどキチンと話を聞く生徒だった。」
「私の二年三組もそんな感じ。やっぱり校風ってヤツかな? 私の高校の時はもっとざわざわした感じだったと思う。」
綾香と穂莉が話していると、もう一人の実習生、谷川(たにかわ)茉椛(まどか)も加わった。
「私は二年五組。ちょうど一個とばしになったみたい。」
丸顔でウエーブのかかったミディヘアの彼女はにっこりと微笑んで続けた。
「やっぱりみんなも今日は授業参観とレポート?」
「うん。教室の後ろの席で講義受けるみたいね。」
穂莉がカリキュラム表をチラリと見る。
「なんだか転校生の気分。」
綾香が背もたれに体重を預けてちょっと仰け反った。
参観授業の後の教室。休み時間に綾香の周りに生徒たちが集まってきた。
「先生、大学ってどんな感じなんですか?」
「先生は高校教師になるの?」
クラスの女子がきゃいきゃいと騒ぎ、男子がそれを取り巻く。
(せんせい・・・ああ、良い響き・・・)
内心でプチ感動に浸っている時に、女子の環の隙間からキレイな顔の男の子が顔を覗かせた。
「教育実習って朝早いんですね。今朝、朝練の時にもう校内を歩いてたし。」
周囲の女子に並んでも引けを取らない女の子顔の章(あき)浩(ひろ)が、綾香の左側に立った。
「あ、うん。今朝はいろいろとミーティングがあったの。明日からは普通な感じになる予定。」
少し長めの髪型で、サイドをシャギーにカットして頬の方向へと流している彼は、綾香自身よりも女の子っぽく感じられた。
「え~と。一色くん? は弓道部なんだね。私、本物の弓引いてる人、初めて見た。的にきれいに当ててたね。上手いんだ。」
綾香は今、章浩の名札を確認したふりをして話しかけた。
「どうもです。でも僕も高校から始めたクチだから、まだまだ。」
章浩はひらひらと手を振って、まんざらでもなさそうな顔をした。
(あ、かわいい・・・)
「先生は高校の時、何の部活してたの?」
「私はバドミントン。修実高校バドミントン部だったの。」
にこやかに話してくる章浩に、綾香は嬉しくなって自然と笑顔になる。
「へぇ。修実のバドミントンって結構強いトコじゃなかったっけ?」
「ええ、レギュラー陣はすごいわよ。私はあんまり本戦には出られなかったけど。」
綾香はちょっと肩をすくめて苦笑いを浮かべた。
「じゃあさぁ、明日の体育、ちょうどバドミントンだからセンセも一緒にやろうよぉ。」
環の中の女子、ぱっつん髪の越路(こしじ)六華(りっか)が覗き込む。
「うん、体育の先生の許可が取れたら参加させてね。」
「村崎先生の授業はいつやるの?」
章浩が右目にかかった髪を、少し首を傾けて流した。
「そんなにすぐにはやらせてもらえないのよ。これでもいろいろ面倒くさい手順を踏まないと・・・あ、これはナイショね。」
綾香の周囲がどっと湧いた。
職員会議に参観出席して、学校内の現状報告や各クラスでの生徒の問題の有無、教育委員会からの通達事項、困った保護者からのクレーム対応などが話し合われる現場を見る。
結構「事なかれ主義」な発言が多い事、特にマスコミに対して神経質になっている事に内心驚きつつも、現実の現場はこういうものかと妙に感心して見入っていた。
職員会議が終わり、初日の研修が終わった。
リクルートスーツの3人が校門に向かって体育館前を歩いている時、体育館横からカチャカチャという金属音と、速足(はやあし)で近づいて来る足音が聞こえた。
「村崎先生。先生たちも今帰りですか?」
黒い1メートルぐらいの丸い筒状のものを肩に掛けた章浩が綾香の左側に立った。
「あ、一色くん。えっと、私の担当のクラスの一色章浩くん。」
綾香が他の2人に紹介する。
「こんにちは、私、秋山です。」
「こんにちは、谷川です。」
「一色です。よろしくです。」
痩せ型中背の彼がぺこりとお辞儀をすると、背中の黒い筒がカチャリと音をたてた。
「一色くんは部活帰りなのね。その背中のは?」
一緒に歩き出した綾香は、章浩をちょっと見上げた。
「これ? これは僕の矢。矢筈(やはず)が痛んじゃったから交換しようと思って。」
章浩は背中の黒い矢筒をひょいと下ろして、ジッパーを開けて中を見せた。
「へぇ~。実物の矢って初めて見た。」
「なんかかっこいい。」
穂莉と茉椛も興味深そうに、引っ張り出された黒羽のジェラルミン製の矢を眺めた。
「先生たちもバス?」
「うん。鴻池駅バスステーションで乗り換え。」
「僕も同じ方向。そこから電車。」
「ああそうか、今谷の方だもんね。」
綾香が何の気なしに口にした。
「へぇ、教生の先生ってそこまで生徒のコト把握してるんですね。すごいな。」
章浩が感心したように綾香を見る。
「えっ、あ、その・・・」
「ふぅ~ん・・・? あぁ、そうだ。谷川さん、一緒にそこのコンビニ付き合ってもらって良い? 村崎さんは彼と一緒に帰ってあげて。バス一本分ぐらい時間がかかるから。」
ニヤリとして一気にまくしたてた穂莉は、キョトンとしている茉椛の手を引いて、バス停と反対方向のコンビニへと小走りに駆けて行った。
バス停の到着時刻を数分過ぎて停車したバスに二人は乗り込み、窓側の席に綾香を座らせ彼女の左側の席に章浩が座った。
「先生って髪型ベリーショートなんですね。ずっとショート派なんですか?」
「う、うん。最近初夏でも暑い日が多いからさ、この際ばっさりいっちゃったんだ。変かな?」
(失恋してショートヘアをさらにカットしたとは言えないわよね・・・)
髪の毛をくいっといじって、その手の方を見つめた。
「ううん。なんかかわいい。」
「か、かわっ・・・こら、年上に対して。」
「はは。ごめんなさい。でも、正直な感想。」
赤くなった綾香は、目のやり場に困った。
「う・・・まあ、ありがとう? ・・・その、かわいいと言えば一色くんも相当かわいいわよ。」
「ああ・・・結構クラスの女子からも言われる。文化祭の模擬店にはウエイトレスで参加して。とか。」
章浩はわしゃわしゃと髪を掻いて困った顔をした。
「そうか、三組は模擬店やるんだ。どんなお店?」
「メイド喫茶。あ、そうだ。今月中先生居るんなら、先生も参加出来ますね。」
意地悪そうにニヤリと笑う章浩。
「え? いやいや。16・17のピチピチギャルに混じってたら浮いちゃうよ。」
綾香はぶんぶんと両手のひらを振って慌てた。
「大丈夫だよ。先生かわいいから。」
「う、またぁ。・・・一色くんて女の子馴れしてるのね。結構女の子泣かせてるクチじゃないの?」
綾香は仕返しとばかりに意地悪く覗き込む。
「そんなこと無いですよ。今までカノジョなんか居たことないんですから。」
「そうなの? かなり扱い方、心得てる感じ。」
「まあ、それは家庭環境と言うか生活環境と言うか・・・」
章浩がちょっと言葉を濁して視線を外した。
「お姉さんとか妹さんの影響?」
「う~ん。まぁ、言うなればそんな感じかな。あとフェミニストの兄さんの指導とか。」
「兄弟姉妹かぁ。私は一人っ子だから羨ましい。」
「まぁ、にぎやかなのは確かですね。おかげで結構気が紛れて楽になりました。」
「?」
文脈に違和感を覚えた綾香だったが、個人の家庭の事なので深くは追及せずにそのまま雑談を続けた。
「それじゃ、今日はおつかれさまです。明日もよろしくおねがいします。」
バスを降りて鴻池駅の中央口へ向かう章浩は、ペコリと頭を下げた。
「はい、おつかれさま。一色くんもしっかり休んでね。」
数メートル進んで、駅のモニュメント『噴水広場』をバックに振り返って手を振る章浩に手を振り返す。
彼を見送った綾香は、にやにやしながらバスステーション8番乗り場の方へと歩いて行った。
『綾香。どうだった?』
一人暮らしの部屋で、スーパーのお惣菜セットで夕飯を済ませた綾香は、香里からかかってきた電話をタップした。
「うん。思ってたより良い感じ。生徒も良い子だし。」
『昨日ボヤいてた時とは大違いだね。楽しそうで良かったよ。』
「心配してくれてたんだ。ありがと。」
綾香は机の上のペットボトルの紅茶を一口飲んだ。
『うん。何かさ、声のハリが違うよね。カッコイイ先生とか居たの?』
「え? そんなに違う?」
綾香が背筋を伸ばして壁際の鏡を見た。
『たとえが悪いけど、内藤に告りに行く前の感じ。立ち直って、そっちの方も元気になってるんなら、友人としても嬉しいかな。』
「ああ・・・そうだね。香里なら良いかな。ちょっと話聞いて欲しいんだけど。」
『うん、良いよ。』
綾香は鏡に映る姿をチェックして、居住まいを正した。
「あ、あのさ。年下の男の子って、年上のお姉さんに興味あるものなのかな?」
『・・・はい?』
「いや、だから。高校生男子って年上の女性に憧れるものなのかなぁって。」
『え? 綾香ってそっちの趣味があったの?』
「え、あたし? いや、その。一般論よ、一般論。」
『一般論を言うなら、何でも知ってるお姉さんに甘えたいって子は多いんじゃない? そんな子が居たの?』
「いや、ただ単に人懐っこい性格の子なのかもしれないけど・・・あ。」
思わず口に手を当てる。
『おお、いいじゃん。好みのタイプ? どんな子?』
声だけでも、香里がかなり喰いついてきているのが判る。
「・・・かなりキレイめな子。」
『まあ、綾香は面食いだから。』
「そんなに外見命じゃないよぉ。」
『推し芸能人、みんなイケメンぞろいが何を言うか。性格は?』
「まだ初日だから何とも。でもちゃんと話を聞ける子だと思う。」
『良いじゃん。付き合っちゃえば?』
「いやいや、『教師と生徒』はマズいでしょ?」
綾香は立ち上がって鏡に全身を映した。
『大学生と高校生なら結構アリなんじゃない? ウチのガッコの音楽科に、一年の時クラスメイトの弟くんと付き合い始めた知り合いがいるよ。その時は彼が中学生だったそうだけど。』
「うわ、犯罪。」
『しばらく「淫行罪」ってからかわれてたわ。彼女。』
「お気の毒に。」
『そっか、綾香に年下のカレか。』
「いやいやいや。まだ知り合ったばかりだって。それにそんなふうになるとも限らないし。」
綾香はそわそわと部屋の中を歩き回った。
『綾香さんはどうなりたいのかな?』
少し意地悪なトーンで香里が囁く。
「わ、わたしは・・・」
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