シスタープリンセス・オブ・ダークネス

平 一

シスタープリンセス・オブ・ダークネス

(2003年頃から、出版社などに投稿した拙文です)


「シスプリ続編のOP主題歌、素敵だね」

「映像も、前作以上に美しい」

「久しぶりに想像力を刺激されました」

「よからぬことを想像しないようにね」(笑)

「発電用の風車がよかったな」

「21世紀にふさわしい背景だね」


「妹達をかたどった、天使達の人形のシルエットも綺麗でした。

カラーイラストやフィギュアも、見てみたいな」

「あのシルエットを少し変えても、面白い話になるかも。

角があったり翼がコウモリだったり、竜や獣に乗っていたり、頭や下半身が鳥や蛇だったり、さらには狼や馬や蠅や五稜星の姿をしていたり……」

「今度は悪魔っ娘軍団かい(泣)!」(笑)

「裏・シスタープリンセスといった感じでしょうか……というわけで、プリピュアの妹たちを、悪魔に例えてみました」

「やっぱりそうきたか、この特殊趣味オタク!」(笑)


「基本的な設定として、人の行いの善悪について考えさせるお話です。決して本当の悪者ではなく、悪人たちから兄を守ったり、人間は自分では正しいことをしているつもりでも、間違ってしまうことがあると気づかせたり、時には自分たちが悪役になっても、人々に自分から正しいことを求めさせたりするというお話を考えました」

「君も基本的に軟弱だから、そんなに凶悪な話は作れないよね」(笑)

「でもその過程で彼女たちが見せる恐ろしいまでの超能力……体力や知力、意思力やその他の魔力に、お兄ちゃんも見ている人もゾクゾクわくわくします。悪役と戦うときなどには恐ろしい悪魔の姿を見せるのですが、『どっちがきみの本当の姿なの?』と聞いても、『さあ、どっちだと思う……?』といって艶然えんぜんと微笑んだりとか」

「な~んだ! それじゃ現実の女子と変わらな……ああっ!」(←恒例の袋叩き[笑])


「まず咲耶ちゃんは、ゴモリーです。駱駝らくだに乗り、黄金の冠をかぶった美しい女性の姿をしています。17世紀の魔術書『レメゲトン』にある〝ソロモンの72柱の悪魔〟のなかでは唯一、女性の姿をした悪魔だそうです」

「魅力的な彼女にはぴったりだね」

「私のお兄様のことを誘惑する女の子は、砂嵐で骨まで綺麗に磨いてあげちゃうから!」

「あああ(恐)、女性の愛を得させる能力をもつ悪魔なのに~っ(泣)!」(笑)

「自分が愛する者に対しては別、ということでしょうか」

「まあ当然といわれれば当然のような気もするけど、骨はちょっとなあ……」

「まさか、本当にはやらないでしょう。でも悪魔ですから口は悪いかもしれない」(笑)


「つぎに毬絵ちゃんは、ストラスです。19世紀にコラン・ド・プランシーという人が書いた『地獄の辞典』にある挿絵では、やはり冠を被った脚の長いミミズクの姿をしています。眼鏡っ娘の特徴がよく出ているでしょう(笑)? 薬草や鉱石、天文に関する知識を授けてくれるそうです」

「勉強家なんだね」

「私は身体が弱いので、天然の薬用物質についても詳しくなりました。

兄上様も具合が悪いときはぜひご相談ください」

「ありがとう。ぜひそうさせてもらうよ……なんてね。

でも、悪魔の虚弱体質ってどんなものなのかな」

「さあ……たったの摂氏400度ぐらいで倒れちゃうとか、少し基準が違うかもしれません(笑)。護衛のミカエルは3つ頭の地獄の番犬、ケルベロスです」

「CCさくらのケロちゃんみたいな、可愛いバージョンだね」(笑)


「四葉ちゃんは鷲の翼と蛇の尾をもつ狼の姿をした、魔界の猛将マルコシアスです。可愛らしい八重歯は犬科の動物の牙、旺盛おうせいな好奇心と豊かな行動力は勇猛果敢さに通じるものがあると思い、選定しました」

「グラシャラボラスも有翼の犬だが、あちらは暗めのキャラクターだから、明るい探究者の四葉ちゃんにはやはりこちらのほうがふさわしい」

「年少組なので分析力はまだまだですが、そんなところも猪突猛進ちょとつもうしん型の魔将にぴったりであろうと(ごおおおお!と物凄い音)……も、申し遅れましたがその能力は、口から炎を吐くということで……ごほげほっ」

「兄ちゃまに余計なことを言う人はチェキよ!」(笑)


「花穂ちゃんはフルフルにしましょう」

「鹿の頭と脚、蝙蝠こうもりの翼をもったやつだね。悪魔の中では一番可愛らしい外見だ」

「そんなのが花穂ちゃんの声で喋ったら、それはもうふるふると身震いしちゃうぐらい、愛らしいのではないかと(がらがら、どっしゃ~ん!と大音響)……大丈夫ですか? 雷と稲妻を起こす能力もありますので、見かけだけでは判断しないように気をつけて」

「お、おう……危なかった(涙)」(笑)

「お兄ちゃまごめんなさい! 雷を見せてあげようと思ったら、つまづいた拍子に狙いが外れちゃったの。花穂は走るのは苦手だけど、飛び跳ねるのは大好きなんだよ! 応援するから、見ていてね!」

「ああっ、なんて健気けなげな妹なんだ! よ~しお兄ちゃんも一緒に、ぴょ~ん! たるとちゃんもぴょ~ん!」

「やはり、恐るべき魔力ですね……」(笑)


「鈴凛ちゃんはベルフェゴールです」

「ええっ!? そりゃあ確かに発明と発見の魔神だけど、『地獄の辞典』では室内便器に座ったお爺さんの姿で描かれているよ」

「他の本では、美しい人間の姿で現れるとも書いてあります。きっと亡くなったじじのことをしのんで、その姿を借りることがあるのでしょう。座っているのは便器じゃなくて、便利な歩行脚つき車椅子ということにしましょう。ただの美少女では物足りないなら、本当の姿は立派な角が生えている、という設定はどうです? ああ、OVA『聖贄いけにえ』の堕天使は綺麗だったなあ……」

「君、ここであの美しくも恐ろしい成人向け作品を引用するのは、不適切だ。例えば『遺伝子工学は人類文明の存続と発展に不可欠の技術だ』という場合には……」

「『ハイパードール』のザイクリット博士とか」

「そうそう、秘書のエリカちゃんなんかまさに裏・東京ミュウミュウって感じで……って、地球外技術で改造人間作ってテロかけてくる奴出してどうする(泣)! あ~、例えば『〝大戦略〟は知的で勉強にもなるゲームだ』といいたいなら……」

「『Hellsing』の〝少佐〟!」

「君……わざとやってるだろう(涙)」(笑)

「深緑系の服を着て、静かにたたずんでいる姿が素敵なので、昆虫系もよいかと思いますが」

「元の設定にはないし、BEMではちょっと可哀相かわいそうかもしれないよ」

「それは差別ですっ! 非人類型種族が知性を持って何が悪い(泣)!

『宇宙の戦士』のアラクニドや『地球への追放者』のモクル、〝工作者〟シリーズの短編『巣』にでてくる“群体”や〝知性化〟シリーズのタンデューは、どれも人類と同等かそれ以上に発達した生物なのに……」

「みんな思いっきり凶悪で危険な種族だけどね」

「しまった! 墓穴を掘ったあ(泣)!」(笑)

「まあ確かに〝レンズマン〟シリーズのヴェランシア人や、『鉄腕バーディー』の上司は善玉だけど」

「そもそも、悪魔の話でしたね」(笑)

「そうか、可愛い姿と恐ろしい姿の落差で魅きつける物語にしたかったんだ。 めざせ、『悪魔のお店』か『悪魔少女モモちゃん』っ!」(笑)

「アニキ、護身用具は要らない? 色々な国の諜報機関に作ってあげた、極秘暗殺技術だよ」

「いや、そんな恐ろしいものまでは……」

「そうだよねえ。 私もその時は気が進まなかったからみんな欠陥品になっちゃって、作戦は失敗するわ、実行組織のことまでバレるわで、もう大変(笑)!」

「考えさせる話だなあ……」



「衛ちゃんはアモンかな?」

「当たり! 運動が得意な彼女といえば、最も強靱とされる悪魔アモンしかないでしょう。アモンといえばデビルマンですが、作品が違うのでお許しください(笑)。 頭は梟で上半身は狼、下半身は蛇という姿です」

「兄い、身辺警護ならボクにまかせて! 不届者は5秒でミンチにしちゃうから」

「ああ、それはすごいね……でも大丈夫だよ。 それに僕はスプラッタは苦手だから、気絶させるぐらいにしといてね……(泣)」

「『悪魔の毒々モンスター』なんて悪趣味映画見て喜んでる奴が何を言うか」(笑)

「まともな映画も見てるぞ。 2000年に内耳炎で倒れ、救急搬送で入院したのだが、夜中に点滴を下げてトイレに歩けたとき、思わず出てきた言葉が『総統、私は歩けるぞ~っ!(映画『博士の異常な愛情』より)』」

「史上最低から3番目くらいに酷いジョークだ(泣)」

「翌朝、他の患者さん達が両側に座る廊下を車椅子で検査室に運ばれるとき、回復ぶりが嬉しくて『お早うございます! X-メンのジャン・リュック・ピカード艦長です』と挨拶あいさつしようと思ったけど、しそこねたのが心残りで」

「治ってない治ってない(涙)!」

「ある意味では正しい(俳優は同じ)のだが……やっぱりSFマニアックだ」(笑)


「雛子ちゃんはベールゼバブになってもらいます」

「おおっ!? いきなり大物だね。アスタロト・べールと並ぶ3大実力者の一角をなし、地獄の世界を支配する大魔王だぞ」

「あのね、お兄たま。ひなはね、小ちゃなはえさんに見えるけどね、象さんよりも大きくなることだってできるんだよ。でも地獄は広いから、大きくなっても思いっきり、飛び回れるの。もしもお兄たまのお友達で地獄にきた人がいたら、また会わせてあげるから、いつでもひなに言ってね!」

「ひなちゃんは優しいね。そんなに悪い奴らとはあんまり知り合いたくないけど、それなら逆に、もし僕を悪事に取り込もうとする連中がいたら、ひなちゃんがそいつらを地獄へ連れてってくれるかな」

「うん! わかったよお兄たま」

「こらこら一体何頼んでるんですかっ!」(笑)


「白雪ちゃんはモラックスなんてどうでしょう」

「人間の身体に牛の頭をもつ悪魔?」

「その元になったモロクという魔王だとかなり陰惨な設定なので、もっと温和な分家の方にしてみました(笑)。能力のほうもストラスと同じ、薬草・鉱石・天文に関する知識の伝授で、あとは使い魔をくれる、といったぐらいのものになってしまうのですが」

「まあ、毬絵ちゃんの得意分野が薬学とすれば、白雪ちゃんは料理のための栄養学かな?殺菌成分や抗酸化物質、免疫賦活物質などを含む食材の知識とか、硬軟水・天然塩や食品添加物に関する知識なんかも役に立つかもね」

「にいさま、今夜の姫は魔界の特別料理でおもてなしですの! ベニテングタケご飯に河豚ふぐの肝刺し、珍味はイモガイの毒針に、デザートはボツリヌス菌ヨーグルトを取り揃えましたの!」

「あ……ありがとう白雪ちゃん、でも僕なんかが食べると何だか物凄いことになっちゃいそうだから、遠慮しておくよ。今度、人間向けの料理を作ってくれる時にはぜひ御馳走ごちそうになりたいから、よろしくね……はあ(泣)」

「……で、では使い魔はどうでしょう」

「よくぞ訊ねてくださいましたの! 出でよ使い魔!」

「ごろにゃ~ん! 何でもご用を言ってにゃん!」

「兄ちゃん、あんたがなるんかいっ!」(笑)

「にいさ魔になると、お皿も並べてくれるし、姫が作る料理は全部食べられるようになりますの! お片づけや食器洗いは、まだ難しいみたいだけど……」

「しかも全然使えね~し!」(笑)

「このにいさ魔だけは絶対に手放しませんの!」

「ああ……ごちそうさまでした」(笑)


「千影ちゃんは、ダンタリアンです」

「多数の顔をもち、必ず手に書物を持って現れる悪魔だね。凛々しい立ち姿はまさに千影ちゃんだ」

「兄くん……女の子は色々な顔をもつ生き物だということを知っているかい?」

「ああ、現にいま眼の前にいっぱい見えているからね……(泣)」(笑)

「次々と変化していくようにも見える、色々な年齢の千影ちゃんの映像が浮かんでるぞ」

「ドッペルゲンガーの女の子もいるね」

「彼女は本当に、こういうたとえに違和感のないキャラクターだなあ」(笑)

「芸術や科学、組織の秘密や個人の内心についての情報を授け、また人々に幻影を見せることができる」

「やはりぴったりの能力だね」


「可憐ちゃんはアスタロトです」

「魔界の大公爵か! 竜に乗り、片手にマムシを持つ醜い天使の姿とある」

「KISSの色男担当ポール・スタンリーが、1か月間絶食したような姿の挿絵だなあ」

「歳がばれますよ歳が」(笑)

「“ストラッター”はノリがよく、僕の青春の思い出のひとつだ(懐涙)」

「……話を戻そう」(笑)

「彼女は本来、古代の中近東地域で信仰された豊穣の女神だったのです。メソポタミア(チグリス・ユーフラテス川流域)ではイシュタル、カナーン(地中海東岸の地域)ではアスタルテとして、そこに建国したアッカド人・アムール人やアラム人・フェニキア人・ヘブライ人はもとより、征服民族のヒッタイト人やアッシリア人にも人気がありました。のちに一神教のユダヤ教やキリスト教がおこると、男性神のベール(元来は王や神を呼ぶときの『主』という称号)やエジプトの守護神アモンと共に、悪魔に落とされたのです。妹たちの面倒見もよくて、母性豊かな彼女には最良の配役でしょう?」

「可憐ちゃんが大人っぽくて美しい悪魔の姿で現れたら、僕も誘惑されてみたい……」「そうでしょう、そうでしょう!」(笑)

「咲耶ちゃんと可憐ちゃんだけが美しいというのは、不自然かな」

「なあにゴモリーだって、駱駝らくだのほうが本体かもしれないし」

「魔夜峰央先生の作品に、そんな設定があったね」

「『悪魔の恋』というフランス版耳なし芳一みたいな小説でも、駱駝らくだの悪魔が主人公を誘惑する」

「アスタロトにいたっては黙示録に現れる7首龍や、〝レンズマン〟シリーズのエッドア人みたいに、言語に絶する恐ろしい姿かもしれない」

「『アダムズ・ファミリー』だね。姿は恐いが可愛い妹、ってお話もいいかな」(笑)

「大好きなお兄ちゃん、お兄ちゃんの協力があれば私は7つ頭の竜に乗って地上に戻り、再びこの世界を、支配できるんです。お兄ちゃん、私のために……魂を、くれますか?」

「ああ、兄として君のために役立てるのは、この上もなく嬉しいよ」

「承諾するな~っ(泣)!」

「いや……それぐらい可愛いかな、と」(笑)



「春歌ちゃんは、アンドラスです」

「身体は天使だが頭は烏か梟という姿をしていて、狼にまたがり、手に剣をもって現れる悪魔だね。破壊的な悪魔で、人々の不和を煽り、また敵対者を暗殺する方法を教えるというけど……いいの?」

「彼女は武術の達人です。その条件を最も満たしうるものといえば、これしかないと思いました。作品制作方針や放送倫理規定に反するようなことは描かなければ、問題はないでしょう」

「兄君さま! もし兄君さまのことをだましたり、傷つけたりするような性悪女しょうわるおんながおりましたら、すぐにわたくしにお申しつけください。翌朝までにはその者の頭と胴体、すっぱり切り離してご覧にいれますわ!」

「ああっ、何だかとっても過激なことを言ってるし(泣)!」

「彼女も年長組ですから……頼もしいですね」

「そうじゃなくて~(泣)!」(笑)


「最後に、亞里亞ちゃんはベールです」

「東方の大魔王ね……陰気な男と猫と蛙の頭が蜘蛛くもの脚のうえに乗っているという姿にするのは、ちょっと可哀相な気もするのだが?」

「「でも可愛い亞里亞ちゃんのお顔が、白くてふわふわなタランチュラの脚の上で、マスコットキャラみたいな猫さんや蛙さんの頭と一緒に仲良く並んでたら、何だか許せるような気がしませんか?」

「そ、それは……(悩)」(笑)

「それに彼女は御殿ごてんのようなお屋敷に住んでいて、どんな時でものんびり屋さんのマイペース。大物です。頭身とうしんだって小さくて、実は賢そうなところも似ています」

「こらこら!」(笑)

「お兄たま~。最近あんまり亞里亞のお家にきてくれないの~。くすん(泣)……」

「なんだか泣いちゃってるけど、大丈夫なの? 何か悪いことが起きたりしないのかな」

「そりゃあもう大魔王ですから、とてつもなく大変な……(ごごごご、という地鳴り)」「うわ~っ! 早く慰めて~(泣)!」(笑)


「いかがでしょう? 『裏・シスタープリンセスリピュア/悪魔っ娘軍団大活躍の巻』」

「ああっ、彼女たちの堕天使版フィギュアを描いたイラストも、見てみたあい(泣)!」

「市販のスクリーンセーバーにあった集合写真も、みんな可愛くて素敵でしたね」

「兄貴の正面を3大魔王が固め、その両隣には愛くるしい奉仕系。背後に参謀達が安全距離をとって分散し、両翼には強力な戦闘部隊と軽快な偵察部隊が待機と……ぎょわははははは! これだけ揃えば天下無敵、ソロモンの栄華の再来じゃ~っ!」

「でも普通の人間が12柱もの大悪魔を呼び出したら、死後の魂どころか現世の寿命さえ一瞬で尽きてしまうかも……ていうか、異形怪奇物語みたいな空想にふけって喜ぶな~っ(泣)!」(笑)

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