クマさんと、ワンナイトドリームアフター


 昨夜のあれは夢だったのだろうか……


 なんか、そんな事を思いながら、僕はベッドの中で目を閉じていました。

 いえね……随分前に目は覚めていたんです。


 でも


 なんか目を開けるのが怖いといいますか……


 昨夜のあの出来事が、実は全部夢だった……目を開けた途端にそんなオチになっちゃって……僕は結局ずっとベッドで寝ていただけだった……目を開けた途端に、そんな現実に直面しちゃうんじゃないかと思って……目を開けるのが怖くなっていたんです。


 でも……瞼の向こうが明るくなってきているし……そろそろ起きないといけない気もしているし……怖いけど、ここは思い切って目を開けないと……

 

 そう決心した僕は、

「1……2の……さん!」

 小さくそう呟いてからパチッと目を開けた。


「……おはよう、クマ殿」

「え?」

 目を開けたばかりの僕の耳に、シャルロッタの声が聞こえてきた。

 びっくりしながらその声の方へ視線を向けると、


 ……そこに、シャルロッタがいました。


 シャルロッタは、少し前から僕の顔を見つめていたみたいです。

 優しい笑顔を僕にむけてくれています。

 

 僕の右腕を枕にしているシャルロッタ。

 

 毛布が1枚、僕とシャルロッタの上にかかっているんだけど……その毛布の下にあるシャルロッタの体は、一糸まとわぬ姿産まれたままの姿……だと思います。


 その……毛布の隙間から、あまりにも大きな胸が僕の目に飛び込んできます。


『……そ、その……あまり形がよくないので……胸はあまり見て欲しくないのじゃ……』


 昨夜シャルロッタはそう言っていたけど……その形といい、弾力といい、張り具合といい、感度といい……控えめにいって超最高でした。

 昨夜の出来事を思い出しながら、思わずシャルロッタの胸を凝視していた僕。

 そんな僕の視線に気付いたのか、シャルロッタは少し恥ずかしそうにしながら手で胸を隠してしまいました。同時に、頬が真っ赤になっています。


「あ、ご、ごめん……」

 

 慌てて視線を反らす僕に、シャルロッタは、


「……は、恥ずかしくはあるのじゃが……クマ殿が見たいというのなら、いつでも……」


 そう言いながら、僕を見つめてくれていたわけで……その姿に、思わずキュンと成ってしまった僕は、


「しゃ、シャルロッタぁ! 好きだぁ!」


 思いっきり声を裏返らせながらシャルロッタを抱きしめてしまいました。


「きゃあ!?」


 いきなりの僕の行動に、最初はびっくりしていたシャルロッタも、

「クマ殿……妾も大好きじゃ……」

 そう言いながら、優しく抱き返してくれました。


 あぁ……これ、ホントに夢じゃないんだよね?

 夢ならもう冷めなくていいから……

 そんな事を考えながら、僕はしばらくの間シャルロッタと抱き合っていたんです。


* * *


 そんなわけで……おもいっきり高まってしまった僕とシャルロッタは、そのまま……えっと、その……はい、ちょっと朝の運動を……そんな、僕とは一生無縁と思っていた運動をこなしたわけで……


* * *


 そんな夢のような一時を過ごした僕です。

 

 そんな僕が張り切らないわけがありません。

 張り切るしかないとも言います。


 この日の僕は、日中から街中を駆け回りました。

 行った先々で、


「何かすることはありませんか?」

「何かお手伝いすることはありませんか?」


 村のみんなに声をかけまくっていきました。


 村のみんなの役に立ちたかったんです。

 シャルロッタが治めているこの村のみんなの役にたちたかったんです。

 シャルロッタの役に立ちたかったんです。


 単純なことこの上ないのですが……なんかもう、その思いが僕を突き動かしている……そんな感じだったんです。


『クマさん、ご機嫌ですね~』

 そんな僕の脳内に、ドラコさんが神の耳魔法で話しかけてきました。

「えぇ、なんかもうジッとしていられないといいますか」

 僕は、笑顔でそう返答したのですが、


 ……まてよ


 ここで、あることに思い当たりました。


 ……ドラコさんって、時々神の目魔法で僕の様子をこっそりのぞいていることがあります。

 

 ……ま……まさか、昨夜のあれを、のぞかれていたのでは……


 そのことに思い当たった僕は、思わず生唾を飲み込んだ。

『うふふ~、そんなことはしていませんよ~』

 そんな僕の脳内に、そんなドラコさんの一言が聞こえてきました。

 その返答に、思いっきり安堵のため息をもらした僕。

『はい~、さすがに拝見はいたしませんでした~、お声だけ~』

「ぶふぉお!?」

 その一言を前にして、僕はおもいっきり吹き出してしまいました。

『うふふ~お気になさらなくてもいいのですよ~、クマさんとシャルロッタさんがお似合いなのはよく存じ上げておりますし~、むしろおめでとうございますなのですよ~』

「あ、ありがとうございます……」

 おもいっきりむせ返りながらも、どうにか脳内でそう返答した僕。

『ですけど~……』

「ですけど?」


『私と~、今後も~お友達でいてくれます……か?』


 その一言は、いつものドラコさんとはちょっと違っていました。

 気のせいなのかもしれないけど……なんかそんな気がしたんです。

 

 ただ、僕は、ドラコさんの事を大切な友達だと思っています。

 それは間違いありません。

 

 この関係は、シャルロッタと結ばれたこれからも続けていきたいと思っています。

 シャルロッタとドラコさんも、僕とドラコさんのように仲良くなってほしいとも、本気で思っているんです。


 だから、僕は


「もちろんだよ。ドラコさんも僕の大切な人ですから」

 そう返事を返しました。


 ……


 ……


 ……


 ……


 あれ? ……どうしたんだ?

 なんか急にドラコさんからの返信がこなくなったぞ?


「ドラコさん?」

 ……返事がない

「ドラコさん?」

 ……やっぱり返事がない。

「……あの、ドラコさん?」

『……もう、クマさんたら……女ったらしなんだから』

「は?」


 なぜか、その一言を最後に、ドラコさんと神の耳魔法が通じなくなってしまいました。

 正確には、つながってはいるんだけど、ドラコさんが答えてくれなくなったといいますか……


 はて?


 僕は何か変な事を言ったのでしょうか?

 ただ、ドラコさんの事を大切な友人だと思っていることを伝えたつもりなんだけど……


 僕は、思案を巡らせながら、先ほどドラコさんに話した内容を思い出していました。

「……確か『もちろんだよ。ドラコさんも僕の大切な友人ですから』って言ったよね、僕……」


 僕は、ひたすら思案し続けていたんだけど……何も思い当たらなかったといいますか……


 まぁ、とにかく、今は仕事を頑張ろう。

 明日は一緒に狩りをする日だし、その時改めてどうかしたのか聞いてみようと思います。


 そして僕は、改めて村の中を駆け回りはじめました。

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