第四十八話『過去』

 

 散る光粒子。

 ホログラムの末に映し出されたは、以前彼が裏切った二人の姿が。


「リーグ。リベン……」


 あの金髪を、忘れは出来ない。

 あの時の狼藉を、忘れた筈はない。


 だからか。

 どこか悔やむ様に、彼は気付けば目を小さく逸らしていた。


「一年。一年だ。あたしはこの時を、ずうっと待ってた」


 横並びで映る彼等の双眼は、ユリスの姿を睥睨して離さない。

 ホログラム越しで有るのに、その声音は耳元で囁いている様にも聞こえた。


 それ程までにユリスにとって、危惧すべき出来事だった。

 リベン達との対面というものは。


「……」

「だんまりか、まあいい」


 故にか、ユリスは黙り込んでいた。

 その合間を縫い、リーグは彼を捕縛した私に感謝して来た。


「兎に角は捕縛、感謝します」

「ええ。と言うか早めに聞かせてもらえますか、色々と」


 というかそうでしょう。

 対象を捕縛してあげたのですから、その分の報酬は得られるべきでしょう。


 その言葉に、リベンは応えた。


「ああ……そうだなぁ。こいつも黙ってるし。報酬として開示しとくか」

「……姉さん。いいんですかい?」

「元々言う気だったし、いいだろ。長い話じゃない」

「分かった。───どうぞ」


 リベンは息を整える。

 だんまりのユリスを一瞥し、そのまま。


「───あたし達は以前、この学校に入学していた

 シエル民のハーフだと言う事を隠してな。

 何、あたし達はただ、学を積みたかっただけだ。

 学生生活を、謳歌したかっただけなんだ。一緒に飯を食って、勉強して。

 ……行きたかった科に行ってな。その先で会ったのが、ユリスだった」


 ユリスの肩が小さく揺れ動く。

 それをただただ傍観して、私は聞き入っておく事にした。


 背後の視線と言うか……うん。

 ───部屋の外から会話を盗み聞きする、リアルをわざと無視して。


 少しずつ転落の道に向かっていく会話を、見届けていた。

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