第三十四話「挽肉にしてやる」

 教室の端に、小さく隠された監視カメラ。

 他の生徒達は気付いていないのだろうが……流石に警戒がすぎる。


 私の存在が有るからだろうか。

 小さく息を吐いて足を伸ばそうとする時に、声が掛かった。


「ねぇシールちゃん!好きな物ってあるの?」


 ああ、ここでの私の名はシールと言うのだったか。

 全く、捻りのない名前だが……兎に角。


 質問したのは男子高校生か。

 格好からして結構な上流階級そうですね。


 機嫌を損ねるのは悪手でしょうか。

 仕方ないので答えておきましょう。


「パンケーキですよ」


 出来るだけ女子っぽく。小さく笑って健気な風に見せる。

 本当は「帝国兵の血肉だ」とか言いたい所ですが、抑えることに。


「お!なら近くにある良いパンケーキ屋さん知ってるんだよねー!行かない!?」


 猛烈に過ぎるアプローチ。

 この体のプロポーションが良いのか、それとも相手の興味か。


 いっそブスにでもなれれば良かったのですが。

 適当にあしらっておきましょう。


「良いですね。今度暇があったら一緒に行きましょう」

「え、良いの!?やった!」


 ……反吐が出そうだった。

 今すぐにでも銃を構えて、彼らのこめかみに銃口を向けたくなった。


 堪えは、した。

 然し、私のその仮の了承を受けてか、他の男子達が荒ぶった。


「お前だけずるい!俺も入れてよ!」

「な……じゃあ俺も!」


 他の男子生徒達もこの有様。

 ……厄介である。


 まぁいずれその時が来たら、用事があるとか言って断るから良いんですが。

 煩い。その上に醜い。


 対応に困る様に、一応あせあせしておくとして。

 レネがここで、出しゃばってくる。


「あっれぇー。エクセラちゃん、モテモテじゃないですかー!!!」

「黙って。挽肉にしますよ」


 レネの表情が青ざめて行く。

 ひぃっ、と。


 明らか棒読みな声を上げて……そのまま逃げて行ったのですが。

 まだ目の前の男子共の抗争が終わった訳でもない。


 まぁそれは無視するとして……。

 その、外。


 ──────女子の目が、痛いですね。

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