第三十話『学』

 明日朝。

 私は帝国第一工業高校に来ていた。


 帝国きっての名門校。

 何故アカネは私にここの制服を託したのかはわからない。


 明らか、不純な目的がある様に思えるが。

 ……考え過ぎか。まぁ、良い。


 着たくもないセーラー服を身に付け。

 相応のバッグを持参し、首筋の機械の調子を確認する。


「いやぁー随分とお似合いですねぇ」


 その横で、お喋り妖精が顔を出す。

 覚悟はしていた。だからわざと私は平静を装った。


「お世辞は良い。仮にも目標に近付けられるのですから」

「はいはいソーですね。でも似合ってますよ。絶世の美女!って感じで」

「……一昨日は人を殺してましたけどね」


 呟くと同時に、バッグの中の銃器を確認する。

 大胆に、だ。


 近くには生徒も居る。

 一昨日前に大事件が起きたと言うのに、依然として呑気だ。


 学生はいいモノですね。

 ……本当の私は、それを味わえませんでしたが。


 溜息混じりに息を吐き、

 吸ってから私は歩み出す。


「兎に角。ここも復讐の為の大事な足掛かりです。本気で行きます」

「本気で、女子高生生活を楽しむんですねっ!」

「……うるさい妖精ですね」


 小声で問答を続けながらも。

 私は大胆不敵に、帝国の卵が集う学校に、足を踏み入れていった。 

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