第二十四話「睥睨」

 理解せねばならない。私は絶体絶命の状況下に居る。

 フードの奥で、私は周りの兵を睥睨した。


 フードは外させまいと。

 そう抵抗しながら、防弾障壁の奥に居るツアーを見詰めていた。


 レネは周りに居ない。

 それを見計らうかの様に、ツアーは言った。


「なぁエクセル、帝国も発展しただろ?」

「ああ、塵と鉄屑が増えた、という意味ではそうですね」

「は、言ってくれるな。流石帝国を裏切った王子様だ」

「……裏切ったのは其方でしょう」


 堪えきれずに身体を前に突き出す。

 その瞬間、機械兵オートマタが素早く頭に銃口を向けてきた。


「───ッ」


 怯む私を見て、ツアーは何がおかしいか、肩を揺らした。

 しかし、その数秒後……ツアーは殺意を滾らせこう言った。


「……裏切ったのは、シエル王国の方だろうが」


 何が言いたいのか分からなかった。

 理解できるはずもない。私が、帝国民の主張如きを。


 再び睨み合う私達。

 そこに、ある足音が駆け付けて来る。


 ドン、ドン、ドン、と。

 素早く、力強く。


 何かが、ここに居る誰もが気づかぬ内に。

 壁を破壊し、兵を倒し、豪快に。


 司令官邸内を駆け向けて。

 その『何か』は。


 ──────司令官室の扉を破り、突入してきたのだ。

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