十二話『レジスタンス』
林を抜け。
川を越え。
農場跨いで、その先に。
「木柵で囲われた農村。あれがレジスタンスの拠点ですか」
「ええ。ピリッピリしてますねぇ。でもどうやって近付きます?」
「普通にですよ」
藪の中から立ち上がり、銃を下ろして歩いていく。
その後ろで、裏返った様な声が聞こえた。
「え?!撃たれますよ!?はいはい私知りませんからね!!!」
「どうぞ、外で見ていてくださいね」
「え、嫌です」
は、と一瞬だけ声が出てしまう。
「嫌だって面白そうじゃないですか!見ますよ、死ぬ所!」
「───何で死ぬ前提なのか」
溜息をこぼしつつも。
フードを脱ぎ、長髪を払う。
そして私はレジスタンスの拠点へ、無用心に向かっていった。
しかしそこには、ある種の確信を抱えても、いる。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
小鳥の囀りが横切っていく、とある農村。
レジスタンスが警備するただ一つの決起の証に、波風が立った。
「ん?」
黒みがかった金髪を垂れ下げる一人の女性は、草原に異物を見つけて目を細めた。
「どうした」
横に立つ警備が、その彼女の懐疑な声に気づく。
それに彼女は双眼鏡を除いて、その異物の正体を見るや否や。
「───え」
「いやだから、何が居るって……」
「……金髪」
「は?新入りか?」
「そうには見えない。だってあれは───」
彼女は息を飲んだ。
震えるその肉声には、動揺が滲み出ていた。
「──────純シエル民じゃ、ないのか……?」
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「いやぁ見てますねぇ。動揺が滲み出てますよぉ?」
「だが撃ってくる様子はない。無能でなくて助かる」
「所々口が悪いですよねー、エクセルさんって」
「それは今、指摘する事ですか?」
「はいはーい、わかりましたー」
そんなたわいも無い雑談を交わし。
私は、人気が増してきた拠点の前に辿り着いた。
そこでは多数の、金髪の老若男女を問わない人々達が待っていた。
だがその髪色には、若干の濁りが入っている。
赤みがかった金髪。
黒が多くを占めた金髪。
ほんの一部しか金色が入っていない者だって居た。
純シエル民は、見た限りではこの中に居ない。
少し歩いて話しかけようとする私だが、その前に声が掛かった。
「貴方の目的は何ですか?───エクセル第一王子」
若大将と思しき女性が声を上げる。
その胸には双眼鏡がかけられている。
黒みがかっては居るが、この中で一番綺麗な金髪だ。
一番シエル国民の血が濃いのだろう。だからか。
だがしかし───。
何故この女性は、私がエクセルであると知っている?
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