第44話 ミュウさんエルフになる<2>

 まずは糸の出現数を増やしていくことから始めますか。

 ドライアドの場合ですと、思い込むだけでできるのである意味、優秀すぎました。

 一本……二本……三本……四本……五本。

 今の私ではこれが限界ですね。

 MPは350しかありませんので最大で350メートル。長いように見えて全ての糸は一本に繋がっているので同時に展開すると、その分何処かが短くなりますから実はあまり余裕無いんですよね。

 ドライアドの時と違って空中に展開できませんから距離が離れる程、糸の消費量は嵩んで行きます。


 糸に一本づつ魔力を通していきます。

 これによってくねくねと自在に曲げることができるんです。耐久度はありませんが、一瞬でも気を引ければいいので大丈夫です。ではいざ参らん。



「うん、もう大丈夫」

「あたしたちも何か手伝う?」

「サポートしようか? 弓ぐらいしかできないけど」

「とりあえず見てて下さい。この姿ではドライアドの時のようには行きませんが、ちょっとしたコツで倒すことができるという証拠を見せてあげますから」



 心配してくれるウッディさんへ自信満々に言い渡し、ホワイトラビットに相対する。

 こちらの武器はそれほど伸ばせない魔力糸と解体用ナイフのみ。唯一ダメージを与えられるのがこれだけなので仕方がありません。コレをまず適当な地面に突き刺します。側から見れば奇行に見えますけどちゃんと理由があるんですよ。


 さて、愛らしい姿を全身で振りまきながら、早速仕掛けてきましたね【魅了の魔眼】これを回避するのは実は簡単だったりします。魔眼と名がつくのは総じて対象の目を見なければ良いものです。なので糸をホワイトラビットの瞼から生やして、無理やり塞ぎます。ね、簡単でしょう?


 糸自体にダメージ判定がありませんので、ホーンラビットの察知にも引っかかりません。僥倖です。


 さてここでもう一つ仕掛けをします。

 不用意に近づいて対象を抱き寄せます。

 自ら魅了された状態になるわけですね。本来ならここでホーンラビットが動き出してくるところですが、事前に解体用ナイフをそこら辺に突き立てて置いているので今の私は無害そのもの。精霊と同じ理由で攻撃対象から外されてしまいます。

 あらあら、おバカさんですね。


 その隙に新たに生成した糸をホワイトラビットの口の中へ侵入。呼吸を司る肺の入り口を縫い付けて塞ぎます。声も出せないように声帯も縛っておきましょう。手足も糸で縫いつけてこれで準備良し。

 あとはうさちゃんを愛でながら時が来るのを待つだけですね。

 傍目にはエルフがホワイトラビットを抱きよせて頬擦りしている風景が展開さていることでしょう。

 ふふふ、実はこれ攻撃してるんですよ?

 それから5分。ホワイトラビットは幸せそうな顔に包まれて、腕の中で光の粒子に包み込まれてしまいました。


 周りでは「聖女さまが現れた!」だのと騒いでますけど、だれか有名人でもきているのでしょうか? キョロキョロと辺りを見回してもそれらしい人は見当たりません。空耳でしょうか?


 立ち上がって埃を払うと次の獲物に狙いをつけて跳びかかります。傍目にはぎゅっと抱きついているように見えますが、この時点で対象は動けなくしてあるんですよ。そう……糸でね。

 先ほどの討伐でLVが上昇しましたので知力へ全振りしました。MPに補正がつかないので、MPが増える知力以外に用はありません。周りからステータスを聞かれて答えた後に脳筋魔術師とか噂されようが気にしてはいけませんよ?


 そして一見じゃれつきながらも攻撃は開始されているわけです。まさに見えない攻撃です。ね、糸って凄いでしょう?


 早速マリさんのバッグに高品質素材が入ったようですね。兎さんからの敵視を余すことなく受け止めてます。


 やったねマリさん、素材が増えるよ!


 私は幸運が0なのでドロップ素材はまず来ません。まあ来ても過剰にヘイトをとるだけなので対処に困ります……要りません。


 少し時間がかかるのが手間ですが、レベリングの効率としては申し分ないですね。

 リスク0ですから、余計な立ち回りもしませんしスタミナも満腹度も然程減少しません。

 それから1時間かけてホワイトラビットを抱っこからの安楽死させていると、私のレベルは6になっていました。

 エルフってレベル上がるの早いんですね。ドライアドではこうは行きませんよ?


 今のステータスはこんな感じです。


「死の抱擁」ミュウ【ランク:F】

 ☆メイン種族:精霊/ドライアド

 種族LV30/100

 ★サブ種族:エルフ

 種族LV6/30


 ☆種族特性

 《弓矢使用時命中5%補正》

 《スタミナ回復速度上昇(森林)》

 《樹属性魔法使用時消費MP軽減》


 HP:60

 MP:510

 スタミナ:70%

 満腹度:80%

 体力:0

 知力:150

 筋力:0

 精神:0

 器用:0

 敏捷:0

 幸運:0

 《アイテムバッグ:重量5000まで》

 E.布のワンピース:重量5

 E.革のベルト:重量1

 E.革のブーツ:重量3

 木の矢×30:重量30

 ショートボウ:重量10

 解体ナイフ:重量10

 ズーの煮込み(梱包済み):重量100

 ホークの唐揚げ(梱包済み):重量50

 マッシブサンド(梱包済み):重量10



 サブ種族は初期割り振りステータスポイントが100で、LVUP毎に10づつ加算の古き良きステータス割り振り制です。


 ジョブというのも当時はありませんでしたからね。種族特性は精霊と比べてはいけません。物足りなさは同意です。弱点がない分、強みもありません。


 そして次はスキルがポイント取得方式です。私の選んだ『糸』は、本来戦闘用ではないので、取得ポイントが5と安いのも特徴の一つ。

 初期ポイントは100あるのでここでたくさん選ぶと後でやり直したくなりますからね。特に過去の情報が一切でない現状では厳しいものがあります。

 その上レベルが上がるごとにポイントが10づつ増えて行きますが、その分種類も増えていく一方です。

 強いものほど取得ポイントが増加していく傾向になりますので節約は第一です。


 《取得スキル:01/10》

 残りスキルポイント:155

『糸:魔糸を作成、操る(MP依存)』


 次に欲しいスキルが『鋼』。これがなんと150ポイント。足りるので取ってしまいましょう……取りました。これでスキルは二つです。残りポイントは5。

 いい滑り出しですね。これで多少の重さのあるMOBでも縫い付けることができますよ。筋力対抗とか必要なくなりますね。


『鋼:対象に硬度を付与する』


 次の目標は『切断』ですね。

 《斬糸》の劣化版みたいなものですが、ないよりはマシでしょう。目標は……なになに? 200ポイントですか。先が思いやられますね。


 それよりもLVが6に上がったことでエリア1では経験値効率が悪くなってしまいました。レアMOBの出現条件は現状厳しい上に、あまり美味しくもありません。

 自分のLVの上下4レベルまでしかそのMOBの基礎経験値を取得できない仕組みになっていますからね。

 ドライアドの時は気楽なものですが、種族エルフはなんと縛りの多いことでしょうか。その分五感は楽しめるので、デメリットとして受け取っておきましょう。

 無い物ねだりをする年齢でもありませんし。


 狩場を独占を防ぐのが目的でしょうが、ドロップ素材の独占もあるのでなかなかうまくいかないもんですよね。狩り過ぎるとパワーアップするので狩り過ぎ注意なのもこのゲームの注意したいところ。


 さて、この調子で次に行きましょう。次は蛙ですか?


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 ヌルヌルは嫌です!

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