二十歳未満が交際すると罪になる世界で

俺も今日から犯罪者

あれからしばらく過ぎた。俺、"進藤博"と一応交際をしてる事になっている"本庄美月"は2DKのボロアパートに引っ越しをさせられた。

「犯罪者は同じ場所にまとめると監視しやすい」

というのが理由らしい。男女別れるのが普通だと思うが。

「この部屋で三年間暮らして子供が出来なかったら、お前達の罪はなかったことになる」

というのが理由らしい。ちなみに

妊娠するのは卒業までに32％、卒業後の離婚率は78％になるらしい

その説明を受けた後の美月の発言がこれだ。

「いっそのこと、最速妊娠チャレンジでもする？」

この女は話を聞いていなかったらしい。女に興味を持つ年頃ではあるが、これ以上法律違反になることはしたくない。なんで妊娠タイムアタック始めようとしてんだあの女。それはそれとして……

「荷物が来ない」

予定では昼頃までに届くはずだが、夕方になっても来る気配がない。流石に連絡を入れるか？

「何ぶつくさ言ってるの」

「美月」

「ただでさえ辛気臭い顔してるのに、もっと臭い顔になるわよ」

「臭いだけ強調したら意味が変わるだろうが。俺は臭くない」

「え？」

「え？」

「まあ、自分の臭いって気がつかないらしいし……」

悲しそうな目で見つめる美月。嘘だろ？俺が臭い？服の袖を嗅いでみるがよく分からない。え、ちょっとやだ。知らず知らずの内に体臭をばら蒔いたってこと？！恥ずかしい！お婿に行けないわ！今はセクハラ、モラハラに続いてスメルハラスメントが一般的になってる世の中。自分がそこに足を突っ込んでいたなんて！

「大丈夫よ、私達は犯罪者だから」

「あ、そうだった」

いや、大丈夫じゃないがな？まだ取り消しの機会はあるし、他人の迷惑になることをしてはいけないっていうのが、常識な訳であってだな。

「って、今はそれどころじゃない。俺の荷物が届かないんだよ」

「何時に届く予定？」

「確か十三時頃のはず。今は十六時過ぎだし、来ていてもおかしくないだろ？」

「まあ、問題よね普通なら。電話で文句の一つも言っても良いわね。普通なら」

「なんだよ。普通普通って」

「私達は犯罪者だからね～。こういうことは頻繁に起こるでしょうね」

「つまり、どういうこと？」

「今頃中古屋にでも売られて、配達員の懐にお金が入ってんじゃない？」

「嘘だろ？」

「試しに連絡してみたら？取り合ってもらえないだろうけど」

その後連絡をしてみるも、荷物は届けたの一点張りで会話にならないので電話を切った。

「ダメでした」

「でしょうね」

「なんとかならないのか？！」

「二十歳過ぎるまでは無理でしょうねぇ」

「糞、こんなのありかよ……」

漫画、ゲームどころか服や下着すらない始末。どうすんだよ明日から。

「五月だし、毛布一枚でどうにかなるでしょ」

「お前は余裕だな」

こいつだって他人事じゃないはずだ。なんでこんなに落ち着いてやがる。

「そうなることは折り込み済みよ。私は全部自力で持って来た」

「引っ越しの荷物を全部一人で？！」

よくもまあ面倒くさい事を。しかし、それが正解なのか。業者に頼んでこの有り様なら美月の判断が正しいって事に……

「旅行鞄三つ盗られたけど」

「え？」

盗まれた事にも驚きだが、その細腕でどうやって運んで来たんだろうか？