第79話2.17 魔導車開発

 寮に帰った俺は資料を読むために書斎に直行する。

 ルリはアズキについてリビングへ向かった。

 ブラッシングしてもらうようだ。

 いつの間にかすっかりアズキに懐いている。

 主人の俺よりも。


 あまり構ってやってないからだろうか? それともご飯をアズキが用意するからだろうか。

 家でペットにすら相手されないお父さんみたいになって来た。

 その問題は、また考えるとして。


「まずは重力魔法だな」

 重力魔法の資料を読んで行く。

 高校の物理の教科書からの抜粋だった。

 『2つの物体に働く力は、其々の重量に比例し、距離の2乗に反比例する。』などと懐かしい話が書いてある。

「昔、習ったなぁ。でも、この知識だけだと使えないんだよな。後のページは、ニュートンの話とかだし、なんの知識が必要なんだろう?」

 ちょっと考えてみるが何も思い付かない。

「取り敢えず、試してみるか。『重力(グラビティ)』」

 手にしているペンに重力魔法をかけてみると、ペンはフワフワと上に動き出した。


「お、一応発動した。使った魔素量は……げ、1000近く減ってる。うーん、失敗だな。でも、発動するって事は、知識は持ってるって事だよな」

 魔法が切れて落ちてきたペンをキャッチして、もう一度頭の中を整理する。

 他に重力に関係することと言って思い出されるのは量子力学の話だな。

 アインシュタイン曰く、『重力則ち万有引力は、重力場と呼ばれる時空の歪みである。』だっけか?


「よし。重力場をイメージして発動してみよう。『重力(グラビティ)』」

 再度、ペンに向けて重力魔法を発動する。

 今度はペンが一瞬で消えた。

 魔法はもう止めてるのに何処に行ったんだろう?

「げ、天井に刺さってる。魔素量が多過ぎたんだな。今度は、少なめで、『重力(グラビティ)』」

 一瞬だけペンを重くする。

 すると天井から抜けたペンがゆっくりと降りて来る。

「うん、成功だ。魔素も1以下しか使ってない。これなら、かなり重たいものでも動かせそうだな」

 また遺失魔法を復元させてしまった。

 こんな簡単な事、これまでの人は、気付かなかったんだろうか? 量子力学にまでたどり着ける人がいなかったのかな? と首をかしげていると。


『コンコン』

「はい、どうぞ」

 返事をすると扉からカリン先生が顔を出した。

「カリン先生、来られてたのですか。済みません。挨拶もしないで」

「良いのよ。今来たところだし。それで、何してたの? いつもなら、ルリと遊んでる時間なのに書斎に籠って」

 カリン先生にマリ教授に教えてもらった魔法の事、その内、重力魔法が出来た事を話して行く。


「流石ですね。トモマサ君。また一つ、遺失魔法を復活させたんですね」

「昔の知識が役にったっただけですよ」

「それでもよ。今の学者がどれだけ頭を捻っても出来ない事をしてるんだから、もっと誇って良いと思いますよ」

 そんなものなのだろうか?1000年前21世紀では、それほど特殊な知識とは思えないのだけどな。

 その後は魔法を見せて欲しいと言われてペンを浮かせてみたり、自分とカリン先生の体も浮かせてみたりして楽しんだ。

 宇宙遊泳みたいで楽しかった。

 カリン先生は、かなり怖いのか俺に抱きついて離れなかったのでついでに押し付けられる胸の感触も楽しんだ。

 抱き合ってキャーキャーと言ってるところにアズキが夕食に呼びに来て――白い目で見られてしまった。

 カリン先生も俺を食事に誘いに来た事を忘れていたらしく、アズキに謝っていたし。

 

 食事中にアズキに重力魔法が使えた事を教えると物凄い目を輝かせて「流石です」と言っていた。

 また必要以上に崇拝されていそうで少し怖い。

 魔法を見せて欲しいと言われたので、「後でね」と言って風呂上りにベッドの上で見せてあげた。

 三人で絡み合いながら。

 しかし無重力でするナニは難しかった。

 普段は出来ないような格好でできるのは楽しいのだけど。


 途中からカリン先生には無重力を遠慮されてしまったので、魔法無しで普通にナニしてから3人で寝た。

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