第43話1.43 アズキの過去3
「お二人は、お知り合いなのですか?」
話を聞いた私が、2人に尋ねます。
「昔、ヤヨイ様の元で仕事をした事がありましてね」
ヤヨイ様の元でメイドでもしていたのでしょうか? また、元気になったら教えてもらいましょう。
「話は後にして、移動しよう。クイナの傷は治っているが、まだ無理はさせられないのでな」
ヤヨイ様の提案で移動を開始しました。とは言ってもヤヨイ様の転移魔法で一気にイチジマの街まで移動しましたが。
婆やをベッドに寝かした後、ヤヨイ様はまた出かけて行かれました。
ヒガシナカの街の様子を見に行くようです。
私も休むようにと言われましたが、婆やの容態が気になりましたので無理を言って婆やのベッドの横で椅子に座っていました。
それでも疲れていたのかすぐに眠ってしまったようですが。
目を覚ましたのは翌日の昼頃でした。
丸一日以上眠っていたようです。
ヒガシナカの街が壊滅状態だとは聞きましたが、そこから私が関わったことはあまりありません。
ずっと、ヤヨイ様の屋敷で婆やの看病をしていましたので。
母様には一度だけお会いする事が出来ました。
裁判も終わり父様と母様の処刑日が決まった後でした。
母様は、「アズキ、父様を許してあげて」と言っていた事をよく覚えています。
他には、「ヤヨイ様の言う事を聞くように」とか「結婚して家庭を持ちなさい」とか言っていました。
最後に、「アズキ、愛している」とキスをして別れました。
私はずっと泣いていて何も言えませんでした。
処刑はすぐに行われたそうです。
子供に見せるものでは無いと、私には日程すら教えられていませんでした。
その後、しばらくは何もせず部屋に引きこもっていたのですが、ヤヨイ様の突然の提案によりメイドになる事になりました。
何でも、成人まで罪が確定していないとは言え、何もせずに暮らしていると言うことが被害にあったヒガシナカの人にしてみれば許されない事だと言われているかららしいです。
他にもヤヨイ様は気持ちを切り替えるためにも、手に職を付けるためにも何かした方がいいと言う事でメイドがいいと仰ってましたが。
その頃には、婆やはすっかり元気になっておりヤヨイ様の命でいろいろ飛び回っているようでした。
ただのメイドがなぜ? とも思ったので聞いた所、婆やは、優秀な忍びだとヤヨイ様が教えてくれました。
元々ヤヨイ様の部下だったのを私の身に危険があるといけないからと、母様が頼み込んで専属メイドにしたのだとか。
今思えば、何度か誘拐紛いの事が何度かありました。
全て事なきを得て無事でしたが。
きっと、陰で婆やが活躍していたのでしょう。
そして、その頃から関東の貴族から狙われていたという事なのでしょう。
メイドを始めて驚いた事が一つあります。
森を抜けて蹲る私に1番に近付いて来てくれた女騎士様はなんと、メイド長様でした。
部屋に篭っている間は、別のメイドが世話をしてくれていたので全く知りませんでした。
その世話をしてくれたメイドの話では、メイド長様はメイドとしても騎士としても完璧超人だそうです。
よく叱られると嘆いていました。
もちろん、メイドとして働き出した後は、私も失敗をしてたくさん叱られましたが。
あれから、もう5年です。
仕事が辛い時もありました。
父様の事を恨んだ時もありました。
そんな時は、婆やが決まって、「あれは陰謀だ。きっと暴いてみせる。だから、公爵様も奥様も恨んではいけない」と言ってくれます。
ヤヨイ様も私の罪が消えるように法改正を勧めてくれています。
そんな人達のおかげで私は歪まずに来られたと思います。群れを失った犬獣人の多くが心身を喪失してしまうというのに。
本当に有難いです。
そしてトモマサ様という、ご主人様も出来ました。
まだ奴隷ですが、罪が無くなったら結婚していただけるそうです。
私としては、ずっと側にいられるなら奴隷のままでも構わないのですが、トモマサ様は、必ず助けると言ってくださいます。
無理をなさらないといいのですが。
「うん? アズキ、どうしたの?」
私が1人ニヤニヤしているうちにトモマサ様が目を覚ましたようです。
「なんでもありません。おはようございます」
「ああ、おはよう」
今日もトモマサ様元気そうです。
私は嬉しくてトモマサ様に抱きついてキスをします。
「アズキは、朝から元気だね」
トモマサ様は、しみじみと仰います。
たまに父様みたいに、おじさん臭いトモマサ様です。ですが、そんなところも大好きです。
一緒にいるとホッとします。
それにトモマサ様もすぐに元気になって来ました。
私が押し付けた胸に反応しいるみたいです。
心はおじさんでも体は青年です。トモマサ様は、少し戸惑っているようですが。
そんな元気を太ももで感じた私は、朝からご奉仕させていただく事にします。
奴隷として、メイドとして、将来の妻として。
再び本当の群れの一員となれたことに幸せを感じながら。
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