第39話1.39 アズキの誕生日3
「楽しいパーティーだったな」
「トモマサ様もありがとうございました。こんなに楽しい誕生日を迎える事が出来たのも全てトモマサ様のおかげです」
「いやヤヨイが頑張ったのじゃないの? 俺、何にもしてないけど……」
「確かにヤヨイ様にも大変お世話になりましたが、トモマサ様が来られたおかげですべてが良い方に動き出したと思っています」
俺ってただ、アズキを奴隷にしただけだ。
言葉だけだとかなりひどい奴だな。
本人は幸せそうだし良しとするか。
話の途中で風呂の準備が出来たと他のメイドさんが伝えに来たので、ルリと共に着替えを持って風呂に行くことにした。
アズキは、その間に後片付けをすると戻って行った。
自分のパーティなのに真面目なアズキだった。
俺はルリと一緒に湯船に入る。
実はルリは孵化数日後から風呂に入れている。
最初は怖がっていたルリも今では湯船で泳ぐ程風呂が気に入ったようだ。
猫って泳ぐのかとかなり驚いたが。
のんびり風呂に入り部屋に戻った。
ルリも洗ってもらって気持ちよかったのか、うっとりとした顔をしている。
そのうち部屋にアズキが匂いを嗅ぎに来るだろうと思って、布団に入って魔素コントロールの訓練をしていると、ルリは気持ちよさそうに眠ってしまった。
俺も瞼が閉じそうになりながら、魔素コントロールの訓練をしていると、ドアをノックする音が聞こえて来た。
「アズキか? どうぞ」
「トモマサ様、失礼します」
温かそうなガウンを着たアズキが入ってきてベッドの端に座った。
「アズキも風呂に入ってきたのか? 珍しいな。いつもはメイド服なのに」
「トモマサ様、今日はありがとうございました。実は最後に一つお願いを聞いてほしいのですが、よろしいでしょうか?」
「お願い? 昼も言ったけど、俺にできる事なら遠慮せずに言ってよ」
今日はアズキの誕生日だ。プレゼントは渡したが、それ以外にも何かしてあげたいところだ。
いつも身の回りの世話とか色々とやって貰っているし。
「そ、それでしたら、わ、わ、わた、私を貰っていただけないでしょうか?」
その言葉と共に立ち上がって、すっとガウンを脱いだアズキ。
今日プレゼントした下着だけの姿になっていた。
大きな胸にピンクの下着がよく似合っている。
真っ赤な顔のまま、こちらをまっすぐに見つめているアズキの尻尾がピンと立っている。
緊張しているようだ。
「あ、アズキ? あの、その、えっと?」
しどろもどろになった俺は、言葉が続かない。
「駄目でしょうか?……私、不安です。トモマサ様は、毎日こんなに近くにいるのに、結婚の約束までしたのに、ちっともこちらを向いてくれてない気がします。頑張って頑張って側にいても不安ばかり募っていきます。父や母のようにいなくなってしまうのではないかと、奥様の元に行ってしまわれるのではないかと……」
段々と目に涙が溜まっていく。
両親ともに帰らぬ人となり、自身の将来もどうなるかわからない。
その上、主人と決めた人は全然見てくれない。
体は成人したとはいえ、まだ13歳、この世界を一人で生き抜くには心が若すぎたようだ。
そんなアズキを見て気づいてしまった。
俺が、逃げていた事を。プロポーズまでししておきながら。
そのせいで、ずっとアズキを待たせていた事を。
寂しい思いをさせていた事を……。
だから。
「アズキ、寂しい思いさせてごめんね。頑張っていたのにね。俺、自分の気持ちにまで鈍感で、気づいてあげられなくて、ごめんね。でも、もう大丈夫だよ」
抱きしめて布団へと招き入れた俺。
下着姿で冷え切ったアズキの体を、俺の体に合わせて温める。
「俺は、ずっと戸惑っていたのだと思う。1000年も寝ていてすっかり違う環境になってしまって。妻に先立たれているし、ヤヨイもすっかり独り立ちして俺も不安だったんだ。アズキは、ずっと側に居て支えてくれていたのにね。こんなにも思ってくれていたのにね。何でちゃんと向き合わなかったのかな? ……でも、もう大丈夫だから、逃げないから自分の気持ちにもアズキの気持ちにも。アズキを置いて何処かに行ったりしないから。妻のことは、たまに思い出して寂しくなるかもしれないけど……そんな俺でも、アズキ、一緒にいてくれるかい?」
「はい、いつまでも一緒にいます」
アズキは泣きながら笑っていた。
「すっかり冷たくなってしまったね。一緒に温まろうか」
俺はアズキをぎゅっと抱きしめてキスをした。
温かくなる様に長い長いキスをした。
そして、俺たちはひとつになった。
少し痛そうだったので回復魔法をかけてあげた。良くなったらしい。
暫く後、俺はアズキに肩を貸しながら寝そべっていた。
「プレゼントした下着姿あんまり見られなかったな」
「トモマサ様が、すぐに脱がすからじゃないですか」
アズキが恥ずかしそうに布団の中でもぞもぞしている。
「裸のアズキも早く見たかったのだから仕方ないだろ。もう一回見せて」
俺はそっと布団の中を覗き込む。
「そんなじっくり見られると恥ずかしいです」
「出会ってすぐの頃、風呂に押しかけて来たじゃないか。あれは、恥ずかしくなかったのか?」
「あの頃は、トモマサ様に振り向いてもらうために夢中だったので……。今思うとすごく恥ずかしいです」
真っ赤になって俯いているアズキ、とてもかわいくて、耐えられなくなった俺は、またまたキスをした。
そして、
「もう一回いい?」
耳元で囁く俺。
肯くアズキに覆いかぶさった。
結局、その日は夜遅くまで思う存分体を合わせた。
一つだけ言っておこう、回復魔法はすごかったと。
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