娘から再婚(ハーレム)を強請られるお父さんの話

茄子大根

目覚め

第1話1.1 目覚め

 外はまだ真っ暗な早朝、俺は微睡の中にいた。

 俺の名は、芦田 友政。40歳。普段は、脱サラして始めた農業を、自身の故郷でもある兵庫県と京都府の境、丹波地方で営んでいる。

 そんな中。

 季節は、9月の初めごろ。普段農作業が忙しくて中々休みが取れない俺も、合間を狙って趣味の登山に来ていた。

 妻や子も誘ったのだが、年頃の長女に嫌がられ、妻も仕事もあり子供も置いていけないというので、一人で遊びに来ていた。

 14歳、思春期真っ只中の娘に風呂もない山小屋泊まりは無理だったようだ。

 普段から築百年は経つ古民家に住んでいるのだから大差ないと思うのだが、思春期の乙女心は俺には難解すぎた。

 

 そんなことを脳裏に浮かべつつも、スマホの目覚ましが鳴るまでは寝ようと決めた俺。

 眠りに戻ろうとする途中でふと疑問に思う。

 この布団、すごく柔らかいな、と。

 普通、山小屋の布団なんてせんべい布団である。いや、ごわごわの堅い毛布だけのこともある。

 事実、昨日寝るときはそんな毛布だった気がするのだが、久々の登山で疲れたのだろうか?

 そう思いながら手で布団を触っていると――さらに柔らかいものが手に触れる。


 ん? 抱枕か? 柔らかくて温かくて気持ちいい。


 あまりの手触りの気持ちよさに、揉んでいる手が止まらない。モミモミモミモミモミモミ、かつてこれ程の揉み心地の良い物に触ったことがある妥当かというほど気持ちいい。おかげで、手を止めることができず揉んでいると――


「あっ……ん」


 女性の吐息が聞こえた。その艶めかしい声に、俺は急速に意識が覚醒した。外が薄明るくなる中、薄目を開けてみる。

 するとそこには――


 見知らぬ女性の顔があった。


 驚きのあまり固まる俺。目だけを動かして手の位置を確認してみると、見事、俺の両手は、目の前の女性の大きな胸へと伸びていた。

 そう俺が揉んで揉みしだいていたものは、目の前で寝ている女性の胸だった。

 そっと俺は目線を女性の顔へと向ける。

 すると薄暗い部屋の中、女性とばっちり目が合ってしまった。


 女性から顔を背け、そーっと手を胸から離し布団を頭から被った俺は、神に願った。

「これは、夢だ。まだ寝ている。夢だと言ってくれ」

 完全な現実逃避である。妻と子がありながら俺は何をしているんだ、と涙が出そうになる。

「あの、申し訳ありませんでした。旦那様。勝手に布団に入ってしまって。あまりに眠くて無意識に入ってしまったようです」

 布団の中で半泣きの俺に、女性が何か言っている。

 だが、パニックになっているためか、いまひとつ理解が出来ない。

 だが、胸をもんでしまった女性の言葉だ。聞かないわけにはいかず――

「何でしょう」

 と首を出して聞き返す俺。

 すると、いつの間にか布団から出て横に立っている女性が再度口を開いた。

「で、ですので、布団に潜り込んで寝ていました。む、胸を触られたことは、わ、私が悪いといいますか、ですので、気になさらないでください」

 女性が、大きな胸を両手で隠し――残念ながら隠しきれてないが――恥ずかしそうに俯きながら話していた。

 ここまで来て、少し頭が追い付いてきた俺。


「勝手に布団に入って寝ていた?」

 何しているの、あなた? と思ってしまう行動だ。だが、それなら俺は悪くない? でも、思いっきり揉んだし……。

「は、はい。仕事中に寝ていました。このことは秘密といいますか、何と言いますか、忘れてください」

 忘れろと伝えてくる女性。なんとも素晴らしい提案だ。残る感触に手が少し残念がっている気もするが、そんなこと言えるはずもなく、俺は大きく首肯した。

 妻一筋なのだ、俺は。寝ぼけなければ。

「わかった。きっぱり忘れよう」

 きりっとした顔で言ってはいるのだが、内心では、「助かった~、妻の頭に角が生えるよ」などと考えている俺。

 相手の女性も胸をなでおろしているようだ。


 寝起きからの大騒動のおかげで思いっきりテンパっていた俺は、ここであることに気が付いた。

 そう、知らない部屋に寝かされていたことに。

 

 朝日に照らされ明るくなっていく部屋を見渡す。

 すると見えてくる20畳はあろうかという広さの部屋に高そうなソファーに家具類、その上にはシックに飾られる装飾品たち。

 さらには自分が寝ていたのが、天街まで付いているキングサイズのベッドであるという事に。

「どこだ、ここ?」

 いいつつ女性のほうを見てみるが、やっぱり見た事ない女性だった。

 ほんわかした純日本風の顔立ちの美少女がシックなメイド服を着て立っているなんて一度見たら忘れる訳ないのだから。

 それでも、どこかで――と女性を上から下まで凝視する。

 身長は160cmほどだろうか。髪は左右で分けられ胸のあたりでリボンで結んでおり、より胸の大きさを際立たせる。

 あれをさっき揉んだのかと思うと――だめだ、忘れられないかもしれない。危ない、鬼の角が見える――。慌てて首を振る俺。

 さらに気を取り直して女性を見渡すと、なぜかケモ耳(犬)をつけていた。メイド服なら、プリムじゃないのかと思うのだが。などと考え込んでいると。

「先生を呼んでまいります」

 犬耳の女性はお辞儀をしながら部屋を出て行ってしまった。

 どこかは教えてくれなかった。

 この対応に少し悲しくなった俺だったが、先生を呼んでくると言っていたので、すぐ来るだろうと大人しく待つことにした。

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