～僕の異世界冒険記～異世界冒険始めました。

356ページ目…到着

「と、とうとう到着しましたね、ご主人様（あなた）。」

　長い道のりの末、眼前にある城を見てクズハが声を掛けてきた。

　ローラと合流し、十分休憩を取った僕達は魔王城へ向けて歩みを始めた。

　その後、コレと言ったトラブルもなく無事に魔王城までたどり着けたのは僥倖（ぎょうこう）だと言えよう。

　（魔物とかからの奇襲は何度もあったが、索敵持ちが複数いたため大した苦労もなく倒してきた。）

「そうだな、やっと辿り着いた…と言って良いと思う。

　とは言え、これから魔王を倒さないといけないと考えると気が滅入りそうだけど…ね。」

「大丈夫ですよ、ご主人様（あなた）。

　そもそも、私達にかなう物などいないのです。」

「プリンさん、そこは『物』じゃなく『者』だと思うんですけど…。」

「何を言ってるんですか、私達に刃向かう者など、そこらの小石と同じ…物でも烏滸（おこ）がましいと言う物です。」

　どうやら、プリンの中では現・魔王ですら小石以下の存在の様だ。

「とは言え、すんなり魔王城には入れないだろうな…。」

「そうなのか、主（あなた）？」

「そりゃそうだろ…だって、魔王城の周囲は大きな壁がそびえ立っているし壁の上には化け物を模した石像…アレ、多分、ガーゴイルだと思うぞ？

　そもそも、城なんだから周囲に建物がないって、どんだけなんだよ…。」

　そう、普通に考えてみれば分かる事ではあるが、幾ら魔王の城とは言え、それは紛れもなく『城』なのであるのだ。

　つまり…普通に生活する上で、城の周辺には住宅や商店などの街が発展していなければ生活もままならないはずなのである。

　にも関わらず、この魔王城の周りには何もない。

　森の中に、ぽつんと一軒家…みたいに、急に現れたのだ。

　何か、ＲＰＧゲームなどでマップ上にポツンと建っている城のイメージがあるのは僕だけなのだろうか？

　だとしたら、魔王と言うのは、頭が弱いのかも知れないな…。

　そんな事を考えていると偵察をかってくれたアリスが戻ってきた。

「御主人様（あなた）、周囲を見て参りましたが道も民家もなく、あの城が魔王城であると言う証言は得られませんでした。

　それと、あの城門以外の入り口は発見出来ませんでした。」

「そっか…ありがとう、アリス。

　だが…そうなると、ますます攻めるのが大変だな…。」

　確かに、入り口が一つしかないと言うのであれば、守る方としては楽なのかも知れない。

　だが、だからと言って、それがベストなのかと言うと決してそうではない。

　そもそも、入り口が一つと言うのであれば、そこを突破されたら逃げ道が無くなると言う事に他ならないのだ。

　もっとも、普通の頭があれば、隠し通路などの逃げ道もあるのだろうが…。

「ただ、まぁ…流石に逃げる気は無い様だけど…な。」

「そうですね…私達を前に逃げないのは褒めて良いのですが、もしかして私達を侮っているのですかね？」

「どうだろ？個人的には、侮ってくれている方が助かるんだけどね…。」

　侮ると言う事は油断していると言う事…つまり、全力を出される前に倒す事が出来るかも？と言う事に他ならない。

「だけど、そう簡単にはいかないよな…。」

「えぇ、仮にも魔王を名乗ってますしね。」

「そ、そうですね…。」

「油断、禁物。」

「はい、魔王だと思われる反応以外にも複数の反応がありますから…。」

　アリスの言う通り、魔王城の中から感じられる強い力は一つではない。

　魔王と思われるバカでかい力の他に、4つ程、脅威になりうる力を感じ取れるのだ。

「コレって、やっぱりアレかな…。」

「たぶん、それ…ですね。」

　僕が何を言いたいのか察したプリンが同意してくる。

「ご、御主人様（あ、あなた）、アレとはいったい何の事ですか？」

「主（あなた）、ローラも知りたい。」

　クズハ、ローラは分からない様だ。

「もしや、アレとは四天王…ですか？」

　そして、アリスは正解を導き出した。

「正解だ、アリス…だけど、よく四天王って言う言葉を知っていたな。」

「はい、昔読んだ本の中に、勇者セイギが魔王と戦う時に四天王を率いた魔王と戦うシーンが載っていたのです。

　しかも、勇者セイギ様を魔王の元に送り届ける為に、『ここは俺が引き受けるセイギ達は先に行け！』と仲間が一人ずつ四天王と対峙する場面は、何度も読み直しちゃいました。」

「そ、そうなんだ…。」

　わざわざ、そんな話まで伝えられているのか…だが、確かに物語としては、これ以上のネタはないだろう。

　まぁ…じぃちゃんは魔王・零を倒した後すぐに、ばぁちゃんを連れて元の世界に戻ってるから、ただ物語を面白くする為に付け加えたのではなく、じぃちゃんと戦った仲間の誰かが伝えたのかも知れないが…。

　何はともあれ、魔王以外にも強敵がいる事は把握出来た。

　故に、愚直に魔王城へ攻め入るのではなく、念入りに打ち合わせを始めるのだった…。