351ページ目…閃き

 ローラと一時的に別れた僕達は、スローペースではあるが魔王城へ向けて進撃を開始した。

 もっとも、移動には森の中を進む為、どうしても足場が悪い。

 しかも、森の中と言う事もあり植物系の魔物も多く存在する…その為、少し進んでは休憩と言う事を繰り返していた。


「さて、今日はこの辺で野宿する事にするか…。」


 僕がそう言うと、みんなの顔に笑顔が戻る。

 いくら強くても、油断をすれば怪我をする…最悪、死ぬ可能性があるのがこの世界である。

 だが、逆を言うなら、油断をしなければ問題ないと言う事…でもないが、リスクは激減する。

 その為、僕の言う休憩とは安全を確保した上での休憩だったりする…。


「では、私が索敵をしますね。」


 と、プリンが言うが早いか索敵を開始する。

 スライムでありながら、このパーティーの中で一番強いと思われるプリンではあるが、魔族領に入ってから積極的に強さを求める様になっていた。

 どうやらプリンの見た悪夢が関係している様なのだが…コレばかりは直ぐにどうこうなる問題ではないので仕方が無い。

 とは言え、魔王と戦うのだから強いにこした事はないと思う。


 ただまぁ…スライムだけに魔物を取り込むと言うのは、いかがな物かな?とは思う。

 この前も、僕の目の前でクリオネが捕食する様に、魔物を捕まえていたのには正直、少し引いた…。

 まぁ、その甲斐もあって、今のプリンは色々な魔物のスキルを手に入れているみたいで、もう僕には把握し切れていない。


「索敵完了…周囲には魔物の気配はありません。」

「で、でしたら…次は私の番ですね。」


 プリンの索敵が完了した事により、クズハが名乗りを上げる。

 クズハはその尻尾の数を9本に増やすと、その身体が変化する。

 少女から大人になる様に、美少女から美女へと変化する。


夢幻むげんの舞ッ!」


 そうクズハが叫んで踊り出すと、周囲に狐火が顕れたかと思うと蝶々と姿を変え飛んでいく。

 そして…クズハの舞が終了すると周囲の様子が一変し、霧に包まれ先が見えなくなっているではないか。

 もっとも、どう言う訳か、霧に包まれているのは周囲の森だけであって、僕達の側には霧がなく視界は良好である。


「認識阻害の結界を張りました。

これで、周囲からは何もない様に見えまるはずです♪」


 そう言うと、クズハは尻尾を元に戻すと、いつもの姿へと戻る。

 どうやら、九尾の状態にならないと使用が出来ない技の様だ。


「では、私も念の為、人払いの結界を重ねておきますね。」


 既に、クズハの結界だけでも十分な気もするが、それでもアリスが人払いの結界を重ね掛けする。

 流石に、コレだけ念入りにしているので為、侵入者などいるはずもない…。

 だが、最初から中に居たのなら無意味なので、油断をして良い訳ではない。


「よし…なら、僕も…。」

「いえ、私がしますのでご主人様あなたは何もしなくて良いです。」


 プリンはそう言うと、プチスラを6匹作り出すと、クズハ達の結界ギリギリの所へプチスラ達をポイポイッ!と投げた。

 うん、相変わらずプチスラ達の扱い方が酷い気もするが、プリンの一部でもあるのだから気にしないで置こう。


「それで、プチスラ達をあちこちに投げたみたいだけど…どうするの?」

「はい、魔物の中に呪術師なる魔物がいましたので、それを取り込んだ際、結界を張るスキルを手に入れましたので、それを使おうかと…。」

「へ~…その、結界を張るスキルって、どんなスキルなんだ?」

「何でも、六ヶ所…六芒星を描く様に要となる物を配置して、そこに呪力を流す事により結界を張るみたいです。」

「そ、そうなんだ…。」


 五芒星とか六芒星なんて、まんま元の世界の知識じゃん…とは思ったが、僕はツッコミを入れる事はなかった。

 その代わり、その言葉で煮詰まっていた生きてる鎧達の改造のヒントを得た。


「ありがとうプリン、お陰で装備の改造が出来そうだ!」


 僕はそう言うと、無限庫インベントリからテントやテーブル…調理道具等の野宿セットを取り出すと近くに配置をする。

 そして、僕はすぐに自分のスペースを確保すると作業に取り掛かる事にした。


「では、ご飯の準備が出来たらお呼びしますね?

 クズハさん、アリスさん、お願いします。」

「は、はい!」

「畏まりました。」


 二人はそう言うと、ご飯の支度を始めるのであった。


★☆★☆★


「そうだよ、この世界では竜が最強みたいだからって、別に竜に拘る必要なんて無かったんだよ…何で今まで気が付かなかったんだろ…。」


 元の世界の知識のお陰で、色々と助かっていたとは言え、僕は少し強さの意味を間違えていた様だ。

 何でもかんでも、竜と言う存在が強いと言う訳じゃない。

 プリンが見せた、六芒星の結界…そのお陰で、僕は更なる強さを手に入れる事になるだろう。


「クックックッ…。」


 僕は何処ぞのマッドサイエンティストよろしく、怪しい笑みを浮かべつつ、生きてる鎧達を改造し始めるのだった…。

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