342ページ目…疑問

「しっかし、何だってこんなに魔物が多いんだ?

 まるでこの場所に集められたんじゃないかって思うんだが…。」

「たぶん、それで合ってるのではないでしょうか?」


 野営の準備が完了し、休憩を始めた僕達一行…そこで、この森に入ってからの感想を口にしたのだが、どうやらプリンも同じ意見だった様だ。


「た、確かに、森の規模からしたら魔物が多いみたいですが、そんな事が可能なのでしょうか?」

「さぁ?だが、トレントとかの植物系の魔物は元から居たのだろうが…明らかに、普段、森にいないはずの魔物が居たのは確かだと思うぞ?」

「そう…ブラッドホースは草原が縄張り。」


 少し言葉足らずではあるが、ローラが僕の言葉を肯定する様に、言葉を続ける。


「だ、そうだ…。」


 ちなみに、ブラッドホースとは、ベースとなる黒い巨体に、炎の様な赤い模様が描かれている魔物で、赤い模様が血塗られた様に見える事から名付けられた馬タイプの魔物である。

 余談ではあるが、馬の癖に肉食と言う、はた迷惑な魔物だったりする。

 初見で他の動物を喰っていたのには驚いたのは、嫁~ズ達には内緒だ。


 まぁ、内緒と言ったが…プリンとクズハにはバレてるとは思うが…。


「それにしても…魔王のヤツ、本気マジで何がしたいんだろうな…。」


 僕がそう言ったのには、幾つか理由がある。

 その内の一つが、先の魔神教団を尋問した時に判明した行動…。

 人族に戦争を吹っ掛けておきながら、魔王領…魔族領とも言うが…の街や村を殲滅していると言う話だったのだ。

 それを確かめるべく、手に入れた情報を基に幾つか見て回ったが、確かに情報通り、ゴーストタウンと化していた。


 つまり…自分の支配する大陸の住民(人族)を皆殺しにしておきながら戦争をすると言う事は、明らかに可怪しな行動をしている訳である。

 そもそも、自らの領地の人族の数を減らすと言う事は、戦力を減らすのと同意であり、上級魔族を贄として作り出す、下級魔族や中級魔族のみでの戦争で、人族に勝てると思っているのだろうか?


 ぶっちゃけた話、勇者セイギの仲間だった者がダンジョンマスターとなって魔族と戦う為の聖なる武防具を大量に用意している。

 それを、世に出したのは僕ではあるが、今では冒険者達によりその数を大量に増やしている。

 そのお陰で、中級魔族程度までなら倒せる冒険者は数多く存在する。

 中でもAランク…その上のSランクの冒険者として活躍している者達ならば、条件次第では上級魔族すら倒せるのではないだろうか?

 もっとも、精神体アストラルボディーにダメージを与える術がある事が最低条件になるが…。


 何はともあれ、強力な戦力を減らし、尚且、雑魚を大量に生み出している魔王が何をしたいのか本当に何がしたいのか分からないのだ。


「ほ、本当に、何がしたいんでしょうね…。

 あ、あの…もし、ご主人様が同じ事をするとしたら、どう言う状況になったらしますか?」


 僕と同じ様に考えていたクズハが、申し訳なさそうに僕に聞いてくる。

 なので、僕はクズハの言った事を考えてみる事にした。


「そうだな…僕がそんな事をするとしたら…まず、考えられるのはプリンやクズハ達…嫁~ズがいなかったらって、条件が付くかが死にたいと思った時かな…。」


 たぶん、みんなが居なければ、僕の力…零の力は異端者として排除されそうになるのではないだろうか?

 そうなれば、僕は自分の運命を呪い、自分の命と引き替えに世界に復讐を…と考えても不思議ではない。


「後は…。」


『ドクンッ!』


 一際大きく、心臓が撥ねる。


「は、はは、ははは…いや、流石に、それは無い…よな?」


 ある考えに辿り着き、僕は乾いた笑みを浮かべる。


ご主人様あなたッ!?」

「だ、大丈夫ですか?ご主人様あなた!」

あなた?」

御主人様あなた、大丈夫ですか?」


 先程までとは明らかに動揺している僕の態度に嫁~ズが心配して話し掛けてくる。

 そう…僕が、これほど動揺し思い付いた仮説…。

 だが、そうだとしたら…何となく、今までの不可思議な事、全ての辻褄が合う気がしたのだった…。

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