335ページ目…ちょっと待った!

 僕がゴーレム馬車を無限庫インベントリから取り出すと、みんなは直ぐに馬車へと乗り込んだ。

 ところが、いざ、村へ行こうとした時、それは起こった。


ご主人様あなた、ここはもう魔族領なんですよね?」


 と、プリンが当たり前の事を言って来だのだ。


「ん?そりゃ、ビギン砦を越えてるんだから魔族領だよ?」

「でしたら、あそこの村って魔族が住んでるんですが?」


 と、プリンが聞いて来る。

 だが、元々、魔族は約300年程前に、魔王が倒された時に、その姿を隠している。

 しかも、その魔族と言うのは、精神体アストラルボディー…その為、顕現するには他の者(動物も含む)の体に寄生し受肉するしかない。

 そんな奴等が、受肉をしてまで村を作るとは考え辛い訳で…。


「いや、基本的に魔族と言うのは精神体だから、魔族の村って事は無いはずだよ?

 人間に憑依しても、下級魔族にはなれないらしいし…。

 でも、プリンがそんな事を気にするなんて、どうしたのかな?」

「いえ、人族を滅ぼそうとする魔族が、辺境?かもしれない、こんな場所にある村を放って置くのが…と、気になりまして…。」


「えッ!?」


 言われてみれば、確かに…だ。

 魔王・零と違い、現在の魔王は、人族に対して宣戦布告をした。

 それはつまり、人族を無差別に殺す事を意味する…。


 にも関わらず、こんな場所にある村を放置したままでいるのだろうか?

 おそらく、答えは『否』である。


「これって、偵察してから村に行った方が良いかも…だな。」

「そうですか…では、どうしますか?」


 そうプリンに問われ、僕は返答に困った。

 それは…僕には遠くを監視するスキルを所持していないからだ。


「えっと…どうやって監視するのが良いかな?」

「あ、あの…聖王都みたいに、プリンさんのプチスライ厶達にお願いするのはどうでしょうか?」


 と、クズハが言ってくる。

 だが、あれは…現在では不可能なはず…僕はそう思い、プリンの方を向く。


「プリン、出来そうか?」

「聖王都の時みたいには無理ですね…。

 せいぜい、5匹程ならプチスライムを放つ位かと…。」


 プリンはそう言うと、俯いてしまう。

 プリンが落ち込んでいる姿と言うのは、普段のプリンからは信じられない程、大人しい態度である。


「プリン、そんなに落ち込まない様にね?

それに…5匹までならプチスライムを作り出せるんだよね?」

「え、えぇ…最近、色々と吸収する事が少なくて、その程度しかプチスライムを作り出せません…。」

「いや、小さな村なんだから5匹もいれば十分だよ。」


 僕はそう言うと、プリンの頭を撫でる。

 聖王都とは比べるとと言う物は、一区画と言って良い程小さいのである。

 その為、ちょっとした調査位であれば5匹もいれば十分過ぎる成果が得られるだろう。


「なら、プリン…悪いんだけど、プチスライムを作ってくれるがな?」

「はい…〖分裂〗。」


 まだ、少しションボリしているプリンではあるが、それでもプチスライムを5匹作り出してくれる。


「プリン、ありがとう。

 さて、プチスラ達…君達に任務を与える。

 今から、あの村に君た達を送り込む。

 で、ここからが重要なんだけど、あの村の住人達に見付からない様に、あの村を調査して来て欲しいんだ…。

 調査の対象は、村人達…どんな風に生活しているのか…とか、何をしているのか…とかだ。

 で、2時間後、ここに戻って来る事!

 まぁ、スライムの足?では移動に時間が掛かるから、時間厳守とは言わないが、極力、時間までに戻って来る事…良いね?」

「「「「「キュイ!」」」」」


 僕の問い掛けに、元気良く返事をするプチスラ達…流石に七つの大罪シリーズのプチドラ(プチスライムドラゴン)達には劣る物の、どうやら、知能は高そうである。


 そして…プチスラすらが返事をした事により、作戦が実行される。

 むんず!…そんな擬音が聞こえる様な扱いではあるが、全員が1匹ずつプチスラを掴むと、僕達は一斉にプチスラ達を村へと投げ付ける。


『ひゅ~~~~~~。』


 まぁ…実際には、そんな音は出ていないのだが、プチスラ達は放物線を描いて村へと到達する。

 まぁ、誰が投げたヤツかは分からないが、1匹だけ、手前に落ちたりもしたが…。

 ちなみに、そのスライムも、猛ダッシュで村の中へと入っていったので結果オーライと言う事にしておこうと思う。


 ◇◆◇◆◇◆◇


 2時間後…約束通り戻ってきたプチスラ達は、再びプリンに吸収される事となった。


「ご主人様、あの村の正体は…〇〇〇〇です。」

「な、な、なんだって~~~ッ!?」


 プリンから聞いたプチスラ達の報告に、僕は絶叫してしまうのだった…。

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