333ページ目…出発準備

 結局、アレから…全員から雛鳥よろしく、ご飯を食べさせられた僕。

 軽く済ますはずだった朝食ではあったが、みんなから食べさせられた為、お腹いっぱいで苦しくなっていた。

 正直な話、プリンとローラは数人前は喰う…小食であるアリスですら、僕にご飯を食べさせた。

 と言えば、僕のお腹にどれだけの量のご飯が入れられたか分かるだろうか…。


「…ったく、流石に、みんなから喰わされると凄い量になるな…。

 特にプリンとローラ…アイツ等、少しは手加減と言う物を覚えて欲しいな…うぷッ…。」


 とは言え、朝のバトルで消費した体力を回復するだけのエネルギーの補給は出来た訳だ。

 もっとも、これが体力に変わるまで多少なりも時間が掛かる。

 だが、このままベッドで寝る訳にはいかない。


 いや、まぁ…魔王討伐が目的の旅な訳だから、一刻も早く魔王の元へ行く必要があるのだが、そう言う意味で言った訳ではない。

 ベッドで寝てしまった場合、十中八九、嫁~ズが寝かせてくれる筈がない。


 「今夜は寝かせないよ」と言う事になるのはなるのは目に見えている。


 あぁ…朝だってツッコミは必要ないので、そこの所、よろしく…。


 で、話は変わる…と言うか戻るけど、魔王を討伐する為には、魔王が何処にいるのか情報が必要となってくる。

 その情報を得る為に、現在、僕達は村へと向かっている途中なのである。

 ってな訳で、ここでベッドで寝ると移動出来ないのだ。


「みんな~準備出来た~?」

「えぇ、もちろん、出来ました。」

「わ、私も出来ました。」

「ローラ、荷物無い。」

「えッ!?ローラも服やら持ってるんじゃ…。」


 いや、持ってるんじゃ…と言う不確定要素ではなく、確実に持っている。

 そもそも、僕は嫁~ズに服やらをプレゼントしているからだ。


御主人様あなた、ローラさんの持ち物は私が管理していますので、ご安心下さい。

 それと、私も準備は完了しております。」

「あぁ、なるほど…そう言う事か…。

 確かに、自由奔放なローラが自己管理出来るはずはないか…。

 とりあえず、まぁ…みんな準備が出来てる様だから、目的地へ向かう様にしよう。」

「「「「はい。」」」」


 僕はみんなからの返事を聞くと、次の行動に出る。

 とは言っても、別荘として使っている家から出るだけなのだが…。

 その後、みんな家から出たのを確認すると、僕は家へと手を向ける。


無限庫インベントリ、起動!」


 狙うは先程まで住んでいた家…すると、一瞬の内に僕の無限庫の中へと吸い込まれた。

 それを確認した僕…今度は、引き続き無限庫から高速移動用ゴーレム…『通称:車』を取り出す。


「んじゃ、早速、例の村へと出発しようか?」

「それで、今日は誰が運転をするんですか?」


 と、プリンが聞いてくる。


「え?僕が運転するつもりだけど?」


 基本的に、いつも僕が運転しているのだから僕が運転するのが一番だと思う。


「いえ、それはダメです。」

「何故にッ!?」

「だって、ご主人様あなた…朝から私達の相手をしただけじゃなく、お腹いっぱい食べてましたよね?

 そんな状態で車なんて運転したら寝ちゃいますよ?」


 何故だろう…プリンからまともな事を言われると、妙に不安感を煽られるのは…。


「え、え~っと…プリンさん、何か変な物でも食べました?」

「別に何も…と言うか、みなさんと同じ物しか食べてないですが…。」

「それもそうか…なら、何で?」

「そ、それは、その…。」


 おや?何故かプリンさんの目が泳いでますよ?


「も、もしかして…。」

「べ、別に私が車をしたいとか言う訳じゃないですよ?

 そ、そう…純粋にご主人様を心配してですね~。」


 うん、だと思った…これが所謂、墓穴を掘ると言う物なのだろう。


「でも、プリンは運転しちゃダメだよ?」

「な、何でですかッ!?」


 そこで何でプリンが驚くんだとツッコミを入れたい。


「みんなも分かってると思うが、プリンの運転は危ないんだ。

 で、さっきプリンも言った通り、僕はお腹いっぱい…。

 そんな状態でプリンが運転する車に乗ったら…。」


 そこまで言って、僕は此処での事を、一旦、言葉を止める…。


「の、乗ったら?…ゴクリ…。」

「…間違いなく吐くだろうな…。」

「あぅ…。」


 プリンも僕の現状と、自分の運転技術を考え、黙り込んでしまう。


「って事で、僕以外の人が運転をするなら、クズハが良いかな…。」

「そ、そうなんですかッ!?」


 今度は、クズハが驚く番だ。


「だって…プリンの運転は危ない運転だし、ローラの運転は論外、アリスは小さ過ぎて運転しようとすると前が見えない。

 だったら、速度こそ出ないけど、安全運転してくれるクズハ一択しかないと思うんだけど?」

「そ、そんな…クズハだけだなんて…。」


 頬を赤く染め身体をクネクネと動かすクズハ…うん、何でこう…うちの嫁~ズは変な行動を取るのだろう。

 まぁ、そうは言っても、この中で一番変なのは僕なのかも知れないんだけど…ね。


「それで、あなた、何時出発するのだ?」

「あ…。」


 まさかのローラからツッコミ…言われてみればログハウスを無限庫インベントリに収納してから既に10分は経っているだろう…。


「私が運転出来れば良いんですけど…。」

「いや、アリスだと前が見えないから…。」


 もっとも、普通に運転が出来ればアリスが一番運転が上手いんだろうな…と思う、今日この頃だった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る