304ページ目…発見

「ちょっと、みんなに話があるんだけど聞いて貰えるかな?」


 宿屋に帰った僕は散歩の時に考えていた事を、みんなに話そうと思った。


ご主人様あなた、改まってどうしたんですか?」

ご、ご主人様あ、あなた、何やら言いにくそうなお顔をしてませんか?」


 と、プリンとクズハが聞いてくる。

 ちなみに、ローラは、あまり興味がないのかボ~っとこちらを見ているだけ。

 アリスに至っては、静かにこちらの話を聞こうと待っている。


「うん…それなんけどね…。

 クズハとローラが車に乗って気分を悪くしたのは知っているよね?

 特に、ローラは吐いたりしてる。

 それで、ちょっと…もしかして、妊娠してるんじゃないかな?って思ったんだ。」


 まぁ、先程見た親子の事を思い出しながら…彼女達に告げる。

 それにしても、頭の中で考えるのと、いざ、口に出すのとでは恥ずかしさが段違いだ。


ご主人様あなた、確かに私達はやる事はやっていますので、子供が出来た可能性はゼロではありませんが、そんな簡単には子供は出来ませんよ?

 少なくとも、クズハさんはともかく、ローラさんに関しては絶対に違います。」


 何やら事情を知っているみたいでプリンがローラの妊娠を否定する。


「へ?どう言う事?」

「ローラ、まだ子供望んでない。

 もっと、あなたと色々な事したい。

 だから、ローラ、妊娠しない。」

「いや、だから…それと子供が出来ないのと、どう関係が…。」

「ローラ、神獣…だから、あなたとローラが一緒に子供を作る思わないと子供出来ない。」

「…はい?」


 イマイチ理解が出来ないがプリンだけではなくローラも妊娠の可能性を否定する。

 果たして、どう言う事なんだろうか?


ご主人様あなた…そもそも、子供を妊娠するならプリンが一番最初にってお願いしたの覚えてますか?」

「あ、あぁ…でもまぁ、みんなとしてるんだから、実際には順番がどうなるかは分からないと思うんだけど…。」

「えぇ…ですから、最悪の場合、クズハさんは私よりも先に子供が出来る可能性は十分ありますね。

 ですが、ローラさんは、その可能性は皆無なのです。

 もっとも、ローラさんが私達との約束を破れば別ですが…。

 先程の発言から、ローラさんは約束を破って居ないみたいですので、ローラさんは妊娠していません。」

「いや、だから…どうして、ローラが違うと分かるんだ?」

「あら?ご主人様、知らなかったのですか?

 神獣であるローラさんは、ローラさんと相手の方が同時に望まない限り、子供が出来る事は無いのです。

 文字通り、ローラさんに子供が出来た場合、望んで生まれてきた子…と言う事になるのです。

 本当に…子供は、愛の結晶とは良く言った物です。」

「…本気マジで?」

「えぇ…ちなみに、アリスさんは、独自の方法で避妊している様ですけど…ね。

 ですが、私とクズハさんはそんな事をしていませんので…妊娠する可能性は十分ありますが…私の場合、元がスライムですから、その…ご主人様あなたとの子供を作り出すのに時間が…。」

「つ、作り出すって…。」

「あら?何か変な事言いましたか?

 私の身体と、ご主人様から頂いた物を解析して、新たに子供を作り出すのにはどうしても時間が掛かってしまうんです。

 こればっかりは、スキルで分裂するみたいに簡単な作業じゃないので、ご主人様あなたには待って貰わなければいけませんけど…。」

「…そ、それって、妊娠と呼べるのか?」

「さ、さぁ?…ですが、ご主人様と私の情報を元に作った子は、間違いなく私達の子供とは呼べると思いますよ?」

「そ、そうか…ま、まぁ…プリンが納得いくなら、それで良いのか?

 とりあえず、ローラは妊娠と違うのが判分かったが…だったら、何であんなに吐いたりしていたんだ?」

あなた…言わなきゃダメ?」


 そう言って、ローラは若干涙目になる。


「う~ん…出来れば言って欲しいかな?結構、心配だから…。」

「毛繕い…。」


 ローラがボソリと言う。


「毛繕い?毛繕いがどうかしたのか?」

「ローラ、毛繕いする。

 ローラの毛が抜けて口の中に。

 毛玉となってお腹に溜まる。

 最近、上手く吐き出してなかったから気分悪くなった…。」

「………あッ!そう言う事か!」


 犬や猫と言った動物たちは毛繕いをする。

 するとと、抜けた毛が毛玉となってお腹に溜まる事がある。

 もちろん、普通に生活していれば、そこらに生えてる草を食べ、吐き出す行動をする…と、言うのをテレビでやっていたのを思い出す。


「アレ?でも、それなら何で、そう言わなかったの?」

「それは…一人前の狼、吐き出し忘れて苦しむ事無い。

 それなのに、ローラ、吐き出すの忘れた…だから恥ずかしい。」

「えっと…何と言うか、吐き出し忘れた位で、そんなに恥ずかしがる事無いんじゃないか?」


 事情はよく分からんが、ただ吐き出し忘れただけって話だろ?

 種族の事に関してなので分からない事ではあるが、僕にとって、それは別に気にする必要ないじゃん?って話だ。


「そうなのか?あなた、ローラを嫌いにならない?」

「あぁ、嫌いにならない。

 むしろ…どうして、そんな事でローラを嫌いになると思ったんだ?」

「そっか…心配して損した。」

「ははは…流石に浮気とかされたら、嫌いになるかも知れないけど…それ言い出したら、僕なんてみんなの事が好きだから、それを浮気って言われたら大変だけどね…。」

「本当です…本来ならご主人様あなたは、私だけの物だったはずなのに…みんなして、ご主人様あなたを誘惑するんだから…。」


 と、笑いながら拗ねたフリをするプリン…考えてみたら、出会った直ぐに死闘を繰り広げ、その後、付き合いだしたんだよな…しかも、ベタ惚れされて…。

 そう考えると、他の人達は後から来たのに、何と懐が広い事やら…。


「それで…話を戻すけど…クズハはどうして気分が悪いんだ?

 エリクサーを飲んでも治らないから病気ではない様だけど…。」

「そ、それが…私にも分からない無いんです…。

 ローラさんみたいに、種族として妊娠の有無を選べる訳でもないですので…。

 で、ですが…この所、急速に尻尾が増えたので、その影響かな?と思ってるんですが…。」

「あ~…そう言えば、この前、8本まで増えたもんね。」


 僕は先週、聖剣を作りに行った帰りの事を思い出す。


「ただ、もしかしたら…本当に妊娠したかも?と気になる事もあります。」

「へ?どう言う事?」

「あ、あの…その…なんて言うか、私のお腹の中に私以外の命がある様に感じる時があるんです。

 た、ただ…それはいつもではなく、まったく感じない事もあって…正直、よく分からないんです。」

「…それ、今はどう感じてるのかな?」

「い、今ですか?今は…はい、全く感じられません。」

「そっか…プリン、どう思う?」

「もしかしたら、着床まではいかなかった…と言う事かも知れませんね。

 核になった時に、命を感じる…ですが、種族が違う為、普通の核と違う為に、上手く着床せずに排出…と言った所ですか?」

「なるほど…貴重な意見、ありがと…。

 まぁ…確かに、人族と獣人族では、なかなか子供が出来ないと言うのは良く聞くから…今の説明なら、納得がいく。

 ただ、それなら、どうして気分が悪くなるんだろ…。」

「あの…1つ良いでしょうか?」


 そんな疑問に頭を悩ませていたら、今まで、傍観していたアリスが声を掛けてくる。


「ん?どうした?」

「先程、クズハさんが何度も、クズハさん以外の命を感じる事が…と言う事で思い出した事があるんですが…。

 獣人の方は、他の種族の方に比べて、を起こしやすいと聞いた事が…。」

「ある症状?」

「はい、先程、御主人様あなたも言いましたが、獣人の方は他の種族との子供が出来にくいんです。

 ですが、クズハさんみたいに命の波動を感じ取れる敏感な人が居たとしたら…妊娠したかも?と想像してしまう事があるんです。

 当然、やる事をやっている訳ですから、本当に妊娠していても可笑しくありませんが…。」

「つまり…あれか?そ、想像妊娠…ってヤツか?」


 人間以外の動物なんかでも稀にあると言う症状である。


「はい…本当に妊娠している可能性も否定は出来ませんが、私は専門家ではないので何とも言えませんが…。」

「あ~…でも、その可能性が高い…のか?病気じゃないのは確かだし…。

 もう一度確認するけど、クズハは、別の命を、今は感じられてないんだよね?」

「は、はい…それは間違いありません。」

「だとしたら、今の所、想像妊娠の可能性が一番高い…と言う事か…。

 それなら、クズハもローラも問題はなさそうだな。」


 言っておいて何だが、クズハの事に関しては、かなり無責任な感じである。

 だが、この世界には元の世界日本の様な医療技術はない。

 もっとも、その代わりと言っては何だが回復魔法や回復薬ポーション等の魔法薬が存在しているのだが…。


「は、はい」

「うん」

「よし!なら…念の為、明日もこの町で休んで、それから戦場に向かう事にしよう。」

「了解です…ですが、本当にそれで良いのですか?」


 と、プリンが聞いてくる。


「ん?どう言う事?」


「いえ、戦場に急いでいかないと…と、思ったんです。」

「あぁ、その事か…僕達は、車を使ってメルトからココまで来た。

 ちなみに、通常の移動方法だと、メルトからここまで馬車で来るには10日以上掛かる場所だ。

 つまり、9日分も先行した事になる…だったら、1日位多く休んでも、僕達の依頼には何ら影響がないんじゃないかな?」


 僕はそう言って、自分の行動を正当化させる。

 まぁ、正直、厳しい言い訳であるのだが…。


「なら…明日も休むと言う事は、今日は、みんな一緒に相手をしてくれるんですね?」


 プリンの容赦ない爆弾発言である。

 次の瞬間、みんなの目の色が変わる。


「あ、あの…みんな、僕は一人しかいないんだから…お、お手柔らかにね?」

「「「「はい♪」」」」


 次の日、お肌が艶々の嫁~ズと、干からびていた僕が部屋で発見されたのは宿屋の女将さんに発見されたのは笑えない話だった…ちゃんちゃん。

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