253ページ目…スライム調査【2】

「ただいま~!」


 串焼き屋さんで、ローラのツケを払った僕は、自宅へと戻ってきた。

 もちろん、馬車…ゴーレム馬車は、ちゃんと元の位置へと戻している。


「おかえりなさいませ、御主人様あなた♪」


 相変わらず、最初のお出迎えはブラウニーであるアリスが一番乗りみたいだ。


「あら残念、アリスさんに負けちゃいました…。

 おかえりなさい、あなた♪」


 そう言って、二番目にお出迎えしてくれたのは、愛しのプリン…まぁ、一番怒らせたくない相手でもあるのだが…。


「はい、ただいま…クズハとローラは?」

「今日はクズハさんがご飯の担当ですから台所ですね。

 たぶん、集中しているから周りの音が聞こえなくなってるんじゃないでは?

 ローラさんは…あなたが帰ってきた気配を感じて…逃げました。」

「そっか…逃げたか…。」


 ため息交じりで、逃げた事を確認する。


「はい…。」


 どうやら、プリンもローラが串焼き屋で食べ過ぎたのを理解している様だ…もっとも、それに関しては毎度の事なのだが…。


 しかも、財布を忘れていたのも知っている様子…。


 まぁ、当然、怒られるのが分かっているから逃げたんだろうけど…逃げたらその分、罪が重くなると言うのを理解しないのだろうか?


「それで…明日からは帰らずの森にて、スライムの調査に行く事になったんだけど…誰か着いてくる?」


 僕がそう言うと、スライムの調査…と言う事で、当然ながらプリンも着いてくるとの事。

 もっとも、スライムの調査でなくとも、プリンなら一緒に行くと言うと思ってはいたが…。


 ちなみに、アリスは家の掃除などの家事の他に、食材の買い出しに行きたかったらしいのでパスするらしい。

 流石は、家事全般を引き受けるブラウニーなだけの事はある。

 お陰で、僕達は何もしなくて済むのはありがたい。


 もっとも、ご飯に関してはローラ以外が順番で作ったりしているみたいだが…。


 とは言え、〖空間転移ゲート〗の魔法を使えば、すぐに合流出来るのだから、お留守番でも問題ない。


 あとは…クズハとローラは晩ご飯の時にでも聞けば良いだろう。


◇◆◇◆◇◆◇


「って、事なんだけど…クズハはどうする?」


 あれから少し時間が経ち、晩ご飯になったのでクズハに聞いてみた。


「そうですね…ご主人様あなたのお邪魔でなければ一緒に行こうかと思います。」


 後はローラだけなのだが…そのローラは…と言うと…。


あなた、もう食べて良い?ねぇ、もう食べて良いでしょ…ねぇ、ねぇってば~!」


 そう、怒られるのが嫌で逃げていたローラも、当然ながら晩ご飯の時ともなれば、自然に顔を出す。

 まぁ、食いしん坊のローラが、クズハの力作である晩ご飯を食べないと言う選択肢はないのだが…。

 それ故、『ご飯ですよ~!』と言うクズハの声に急いで食堂へ来たローラは、早々に御用となり、今は罰を受けているのだ。


 罰と言っても、それほど厳しい罰ではない。

 ただ、犬の躾でも有名な…所謂いわゆる、『待て』である。


 その為、晩ご飯を前に、ローラは涎を垂らしながら尻尾を激しく振り、更には『クーンクーン』やら『キューンキューン』やら鳴いている…よく見れば、涙も目に溜めている様だ。


「ご主人様、そろそろ許してあげたらどうですか?」


 プリンも、何時までもローラにお預けをしているのが可愛そうになったのか、フォローしてくる。


「そうだね…ローラ、約束破ったらどうなるか分かったか?」

「うんうん!だからご飯、ご飯~!」


 絶対に反省してないだろ…と言う思いが、みんなの頭を過ぎるが、流石にこれ以上は動物虐待になりそうなので仕方なく許してあげる事にする。


 まぁ、いつもの串焼き屋で、財布を忘れツケで食べたのはアレだが、ツケで食べられるかは信用問題による物…。

 その店主が良いと言っているのだから、約束を破って大量に食べたとは言え、今回はこれで許してあげるのも良いだろう。


「仕方ない…今度から、ちゃんと約束を守るんだぞ?」


 僕はそう言うと、ローラに『良し!』と合図をしてローラに晩ご飯を食べて良いと許可する。

 ローラはそれにより、お皿を抱える様に抱き込むとガツガツと音をたてながら勢いよく食べ始める。

 正直、行儀は良くないと思うが、今のローラは犬…もとい、狼の姿なので問題ない…と、自分に言い聞かせる。


「で、ローラはどうするんだ?」

「ガツガツ…強いヤツ…ガツガツ…いる?」


 うん、食べてる時に声を掛けた僕が悪いのかも知れないが、食べながら喋るのはお行儀が悪すぎると思うぞ?


「いや、先ほども言ったが、スライムの調査だからね?

 強いヤツかどうかは…それを調べに行く訳だから、まだ分からないぞ?」

「ガツガツ…なら、強いヤツがいたら喚んで…ガツガツ…。」


 まぁ、予想通りと言えば予想通りの反応だ。

 強いヤツと戦うのは楽しみだが、その反面、調べたりするのはしたくない…出会った頃から変わらずな行動原理だ。

 だが、それがローラだからなのか、フェンリルと言う種族の特徴なのかまでは分からないないけどね。


「そっか…なら、行くのは僕とプリンとクズハの三人だな。

 なら、ご飯を食べ終わったら、お風呂に入って寝るとしよう。

 …今日は誰の番だっけ?」


「私ですよ、あなた♪」


 頬を赤く染めながらプリンが僕の問いに答える。

 そうか…今日は、プリンの番だったか…。


「あ、明日は調査だから、お手柔らかに頼むよ…。」


 僕はそう言うと、ご飯の残りを急いで食べ終わると、プリンに連れられてお風呂に向かう。

 そう…今日の夜の営みと言うイベントの相手はプリンなのだ…明日の調査に響かなければ良いが…と考えながら、お風呂へと向かったのだった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る