237ページ目…プリン復活大作戦【5】

『ドンッ!』


 何も指示していない筈なのに、動くはずのないスライムの一撃を顔面に受ける事になった僕は、かなりの衝撃と共に後ろへと倒れ込む。

 そして、情けない事に、その衝撃を受けて脳震盪を起こして意識を失ったのだった…。


◇◆◇◆◇◆◇


「ご主人様、起きて下さい…何時まで寝てるんですか?」

「あ、後、5分…。」


 僕はプリンにもう少しだけ寝かせて貰おう為にお願いする。

 もともと早起きには弱くないのだが、プリンと旅をする様になってからは特に、プリンに優しく起こされながら惰眠を貪るのが、この上なく幸せになってしまい、つい、甘えてしまうのだ。


 その為、あと5分、あと5分と言ってプリンに何度も優しく起こされるのを楽しんでいたりする。

 で、何故、今、こんな説明をしているかと言うと…僕は、プリンを復活させていないのだから、これは明晰夢めいせきむ…夢を見ているのだと自覚していたりする。


 その後、暫くしてからの事…。


「ご主人様、もう5分経ちましたよ?さぁ、起きて下さい。」


 再び、プリンが起こそうとしている。

 だが、ここで起きたら、夢とは言え次にプリンにあえるのが何時になるのか分からないのだから、そう簡単に夢から覚めてなる物かと意地になるのは仕方がないのではないだろうか?


「ダメだ、今起きたら、次にいつ会えるか分からないんだから、まだ寝ていたいんだ!」


 うん、我ながら何とも情けない言い訳なんだ…と、思う物の譲れない願いなのだから仕方がない。

 まぁ、寝てるのだから、実際には会ってない訳だが…それはそれ、これはこれである。


「もう、ご主人様のおバカさん!ちゃんと起きないと、クズハさんと先に帰っちゃいますよ?」

「いや、それだとプリンがいなくなっちゃうから嫌だ!」

「だったら、起きて下さい!ちゃんと起きてくれたら、ず~っと一緒にいますから♪」

「ホ、ホントに?一緒にいてくれる?」


 夢の中とは言え、凄く甘美な誘いである。


「はい、私はご主人様と一緒にいます♪と言うより、ご主人様が嫌がっても絶対に逃がしませんから!」


 自分の夢とは言え、目から涙がポロポロと溢れているのが分かる…うん、情けない話だ。

 だが、夢の中とは言え、プリンにここまで言わせてしまったのなら、起きなければいけない。

 そして、何とかしてプリンを復活させる方法を見つけ出さなくては…僕は、改めて強く心に誓い、眠りから覚める事にしたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇


「ご主人様、本当に起きてくれないと困るんですけど、起きて下さい。」


 体を揺さぶられながら、起こそうとする声を聞きながら僕は目を覚ました。

 もちろん、夢とは言えプリンと約束したのだ…だったら、こんな所で寝ている場合じゃない。

 直ぐに起きて、プリンを復活させなくては!…ってな訳で、僕は勢いよく体を起こす。


『パフパフ…パフパフ…。』


 体を起こしたはずなのに、僕の顔には柔らかい物が押し当てられている。

 それに、目の前は真っ暗で…良く分からない状態である。

 まだ、寝惚けているのだろうか?僕は、柔らかい物が何なのか分からずに、優しく揉む様にして確認をする。


「あんッ♪ご主人様、こんな明るい場所…と言うか、外ではダメです!ちゃんと家に帰るまで我慢して下さい!」

「う、うぐ…プリン様、羨ましいです…。」


 聞き覚えのある愛しい声と、クズハの声が聞こえる。

 そして、クズハ…今なんて言った?プリン様ですか、そうですか…。


 はい?…プリン様?と、言う事は…今揉んでるこれは…もみもみ…。

 その感触を確かめる様に、強弱付けて確認していく。

 そして、ある程度、満足した所で…。


「ぷはッ!…プリン、どうやって復活したんだッ!?」


 僕は、柔らかい物から抜け出すと、目の前の人物を確認すると声を掛ける。


「ど、どうやってって…ご主人様が復活させる方法を気が付かなかったみたいなので、私がスライムに命令して〖融合〗したんですよ。

 まぁ、遠隔操作になってしまった所為で、ちょっとタイミングに失敗して、ご主人様の顔に当たっちゃいましたけど…。

 それと…そろそろ、恥ずかしくなってますので揉むのを止めて欲しいかな?と…。」

「あ、ごめん…。」


 プリンに言われ、未だにずっと揉んでいた物から手を離す。

 無意識で揉んでいたとは言え、揉み心地が最高な上、それが好きな人の物なのだから、ずっと揉んでいても仕方が無いじゃないか!と言い訳をしてみる…。

 たぶん、こんな言い訳は通じないだろうけど…。


「あ、ちゃんと擬魂は回収してますから、心配しなくて大丈夫ですよ?」

「あ、そうなんだ…って、そうじゃなくて!プリンがスライムに命令したの?」

「はい、元々、私の体でしたので、何とか動かす事が出来ましたので…。」

「そ、そっか…結局、プリンは自分の力で復活しちゃったんだ…。」


 あれだけ悩んだあげく、プリンは自力での復活か…何とも情けない話だ。

 と、僕は凹んでいたのだが、そんな僕にプリンは優しくフォローを入れてくれる。


「大丈夫ですよ…ご主人様が一生懸命頑張ってくれたのは、ご主人様の中で見てましたから。

 それに、私がこうやって生きていられるのも、ご主人様が私が死んじゃう前に魂をご主人様が受け入れてくれたからなんですよ!」


 そうプリンに言われ、少しだけ気分が良くなった。

 そして…僕は立ち上がると、プリンを優しく抱き締めて耳元で『おかえり』と、囁いたのだった…。

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