206ページ目…アリスの決意
<side:ローラ>
ダンジョンから戻った私は、主の伝言をアリスに伝える為、走っていた。
そして、キッチンで料理をしていたアリスを見付け、主からの伝言を伝える。
そう…もう少ししたら主がアリスを迎えに来ると…。
「アリス、準備しろ!もう少ししたら主、来る。」
「えっと…ローラさん、どう言う事ですか?」
「アリス、ローラ強くなった、知ってるか?」
私は、主の作った装備のお陰で新たな力を手に入れた。
「えっと…それは御主人様がローラさんの装備を作った件ですか?」
「そうだ。」
まぁ、主に呼ばれた時、アリスも目の前にいたのだから知っていて当然か。
「あの…それが私の準備と、どの様な関係があるのですか?」
アリスはそう言いながらも包丁で食材を刻み、料理の準備を着実に進めていく。
もちろん、視線と言うか顔はこっちを向いているので、私は、よくあれで指を切らない物だと感心する。
いや、今はそんな事よりも主に頼まれた伝言が先だ。
「ローラ、主からアリスに伝言頼まれた。
主、『少ししたらアリス専用の装備の調整する為に迎えに行くから、準備しておく様に。』って言ってた。」
「そ、そうなんですね…で、ですが…料理の途中なので、今すぐと言う訳にはいかないんですが…。」
「それダメ、ローラ、主の言う事守る。」
そう、今のローラは主の物…ならば、主の言う事は絶対なのだ。
「で、でも…今作ってるのって、ローラさんのご飯ですよ?」
何とも、耐え難い誘惑に、心が揺らぐ…だが、それでも…。
「グッ…そ、それでも、アリスは準備しないとダメ。
それに、ローラとクズハは、すでにプリン同様、主の物。
ならば、主の言う事守るの絶対。」
「えッ!?そ、それは、どう言う事ですかッ!?」
「ローラとクズハ、主に告白した。
主、受け入れた。
それに、クズハ、アリスが主を好きと言っていた。
ならば、アリスも、主の言う事守るの絶対。」
そう、私が告白して空へと飛び立った時に、クズハもまた告白をした。
そして、アリスも主を好きだと言っていたのだ。
ローラにはまだよく分からない事ではあるが、強い雄に雌が引かれるのは当然の事…自然の摂理と言う物である。
まぁ、種族が違うのだから子供が生まれるかまでは分からないが、少なくとも引かれると言う事は、本能的に可能だと感じている可能性は十分あると言う事だ。
ならば、私が主を好きなのは明白…本能に任せて突き進むのみである。
そして、強い雄を長として群れを作るのが私達の種族の特徴…つまり、アリスも主の物になるのであれば私は否定する気はない。
むしろ、群れが大きくなるのだから歓迎をする。
なので、私はアリスにも主に告白をする様に言うつもりだ。
「アリスは主を嫌いなのか?」
「そ、そんな事はないです…それに、御主人様は私を無理矢理追い出す事もしなかったし、私の事を大事にしてくれてますから…。
むしろ、ブラウニーである私には勿体ないほどの御主人様です。」
「なら、アリスも主の物になれ。」
「で、ですが!私はブラウニーなのです…御主人様と一緒になるなど、
アリスは何を言っているのだろう?
種族が違う事を言っているの様だが、それを言い出すと、全員、主と違う種族ではないか…。
「アリス、本気で言ってるのか?
主は、アリスがブラウニーだろうが関係ない。
ローラだってフェンリル狼…神獣だが受け入れてくれた。
主は、種族なんて気にしない!
そもそも主の一番、プリンはスライム…だから主には種族なんて何の問題でもない。」
そう、プリンは神獣や獣人なんかではなく、スライム…魔物なのだ。
にも関わらず、主はプリンと何時も一緒で楽しく…幸せそうに笑っている。
「ッ…で、でも…それでも御主人様が私を拒絶したらと思うとッ!」
「それも大丈夫…そうじゃなきゃ、ローラ達と同じ装備、アリスに渡さない。」
そう言うと、アリスは俯きながら、何やらブツブツと言っている。
そして、顔を上げると私の方を向いて聞いてきた。
「ローラさん…本当に大丈夫なんでしょうか…。」
「間違いない、月の女神ルナ様の名に掛けて、ローラ誓う。」
そう…私はフェンリル狼が奉る女神、月の女神の名に掛けて誓う。
それは、フェンリル狼にとっては命より大事な誓いだ。
それほどまでに、私は主の事を信じている。
「わ、分かりました…私も覚悟を決めます。
でも…それでも、私は怖いです。」
「ローラも怖かった…でも、主は受け入れてくれた。
だから、アリスも心配するな。」
何の根拠もないが、大丈夫だと確信があると言うのも、何とも不思議な感覚だ。
だが、悪い気はしない。
「わ、分かりました…私のブラウニー人生で一世一代の覚悟、しかと見届けて下さい!」
「任せろ。」
どうやらアリスの覚悟は決まった様だ。
とは言え…私には、主がアリスを拒絶する事はないと確信している。
つまり、アリスは一世一代と言うが、その覚悟は全くの無駄だと言う事だ。
と言うか、何故、好きと伝えるだけで、そこまでの覚悟が必要なのだろう?と私は疑問に思うがそれは言わない方が良いのだと思う。
ただまぁ、私が告白した時は、恥ずかしさのあまり返事も聞かずに飛び立ってしまい、離れた所から、耳を立てて聞いていたのは、失敗だったかもしれない。
まぁ、何にせよ、アリスの覚悟が決まったのだから後は主が来るのを待つだけである。
◇◆◇◆◇◆◇
「おまたせ!さてと、アリス、早速で悪いんだけど僕と一緒にダンジョンに来てくれるかな?
アリスの為の防具を作ったから、最終調整をしたいんだ。」
あれから暫くして、主がやってきた。
そして、私とアリスは、ずっと主の到着を待っていた。
「は、はい…よ、よろしくお願いします。」
顔を真っ赤にして俯いてるアリス…そんなアリスに私は激励の言葉を伝えようと思う。
「アリス、主は強い雄、みんな
うむ、我ながら上手く言えた。
「ちょッ!?ロ、ローラ、何言っちゃってるのかなぁッ!?」
主が目を丸くして驚いている。
はて、私は何か変な事を言ったのだろうか?と疑問に思っていると主がアリスの手を取った。
「ア、アリス、い、急いでいくぞ!」
「は、はいぃぃぃぃぃッ!?」
主は、そう言うとアリスを抱き抱える様にして〖
結果、アリスの一世一代の覚悟も見る事なく、一人残された私はお腹が空いたので主の用意してくれているお小遣いを掴み取ると、串焼きを買いに町へと繰り出すのだった…。
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