201ページ目…二人の乙女

「主、それで、どうやって飛ぶ?」


 ダンジョンに着いた僕達は、さっそく装備の調整を開始しようとしたのだが、新たな力を手に入れると言う期待がローラの我慢を振り切ってしまったのか、新たな装備も受け取ってもいないのに、空の飛び方を聞いてきた。


「あはは…その前に、ローラにはコレを渡しておくね。」


 僕はそう言うと、ローラ用に作った首輪をローラに渡す。


「主、コレは?首輪でローラを縛るのか?」


 どうやら、首輪に不満がある様だ。

 まぁ、普段が犬みたいだから…と、言う事もあり、首輪を選択したのは拙かったかもしれない。


「いやいやいや、流石に、それはないから…って言うか、最近、やけに絡んでくるな?」

「…それ、気の所為。」


 そう言うと、軽く頬を赤く染めてそっぽを向く…。

 あ、あれ?なんか、ローラの事が可愛く見えるんだが…何でなんだろう?

「ご、ご主人様…私には…。」


 ローラだけプレゼントがあるかと思ったのか、クズハが少し焦り気味で聞いてきた。


「あ、あぁ…クズハにはコレを…。」


 僕はそう言うとクズハにイヤリングを渡す。

 すると、一瞬、『えッ!?』と言う顔を浮かべたが、直ぐにクズハは満面の笑みでそれを受け取る。


「あ、ありがとうございます♪」


 どうやら、別の物だった事に驚いただけの様だ。


「それじゃ~二人とも、それを身に付け装備して貰って良いかな?」


 クズハの嬉しそうな笑顔があまりに可愛くて、僕の頬も赤くなるのを感じつつ二人に装備を促す。

 それを装備して貰わない事には新装備の性能を完全に引き出せないのだ。

 もっとも…十全に使わないのであれば、装備する必要はないのだが…。


「は、はい、直ぐに装備します!」

「主、わかった。」


 二人はすぐに返事すると、渡したアクセサリを装備する。

 だけど、説明も何もせずに渡しているので二人には何の為かは分かっていない。


「先に説明しておけば良かったんだが…それには感応石と言うのが使われていて、今から渡す装備と連動している。

 もっとも、それを装備していなくても空を飛んだりする事は可能なんだけど…どうしても反応速度が遅いんだ。

 だから、極力、アクセサリーを装備したまま使って欲しい。」

「そ、そうなんですね…てっきりプレゼントなんだとばかり…。」


 クズハが少しだけ残念そうな顔を浮かべる。


「あ~…そう言う意味では正解だよ?

 そもそも、僕は、みんなに似合う様に作った様な物だからね。

 プリンには指輪、クズハにはイヤリング…ローラには首輪って、感じでね?」

「そ、そうなんですね…ちなみにアリスさんにも装備作ってましたよね?

 アリスさんのは、どんなのを作ったのですか?」

「まぁ、基本的にアリスは戦わないんだけど…万が一、戦いになった時の為に、普段から装備しても邪魔にならない様に腕輪型のヤツを用意したよ。」


 と、僕は苦笑しながらクズハに答える。

 だが、そんな僕の考えを吹き飛ばす様に、ローラは我が道を行く。


「主、そんな事より装備くれ。」


 ローラの『そんな事』発言に、僕とクズハは思わず苦笑する。

 まぁ、自分の事を優先する事が出来るのはローラの短所でもあり長所でもある。

 逆に言えば、それが自分の事になるのであれば、ローラはどんな無茶でもすると言えるだろう。


「主?聞いてるのか?」

「あぁ、もちろん聞いてるよ。

 それじゃ、ローラが待ちきれない様だから、今から二人用の装備を渡すね。」


 僕はそう言うと無限庫インベントリから二体のドラゴンを取り出す。


「えっと…こっちの緑色したドラゴンがローラ専用の…風属性を付与した装備。

 こっちの赤い色したドラゴンがクズハ専用のドラゴン…火属性を付与した装備だね。」


 僕がそう言うと、二人は自分のドラゴンの前に立つ。

 そして、二人は声を揃えて言葉を発した。


「「鎧化アムドッ!」」


 何故か、僕から使い方を教わらないのに二人はキーワードを言う。

 まぁ、僕が教えていないのだから、プリンから聞いていたのだろう。


 何はともあれ、その言葉キーワードに反応する様に感応石が輝き、ドラゴンが分離して変形…そして使用者の体へと装着されていく。

 そして、数瞬後…装着し終えた二人の姿が…戦女神をイメージさせる程の美しい乙女が二人存在していたのだった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る