193ページ目…戦闘準備【2】

 僕とクズハが潜入してから、既に七日が過ぎようとしていた時、ギルドから連絡が入った。

 どうやら、ギルド側と王都側の話し合いの結果が出た様だ。


 ただ、正直な話…個人的には、王都側との話し合いはしない方が良かったのでは?と僕は思っている。

 何故なら…それは、王都側に相手のスパイがいたら事等の情報が全部バレしまうからである。

 そうなれば、いくらこちら側が綿密に作戦を練っても相手に丸わかりなのでは幾らでも対策が取れると言う事。


 そして、その作戦を逆に利用されれば、逆に、こちら側の全滅だって有り得るのだ。

 だが、事が事だけに、王都側を無視して行動など出来るはずもなく…今に至ると言う訳である。


「まぁ、何がどう決まったのか分からないけど、とりあえずギルドへ行ってくるよ。」

「はい、ですが…王都側との話し合いの後ですので、気を付けていってくださいね?」

「あ、あぁ…出来るだけ最悪な事態を想定して動く事にするよ。」

「ご、ご主人様…あまり、無理はしないで下さいね?」

「そうだな…無茶はするかもしれないが、無理はしない様に努力するよ。」


 僕はそう言うと、ドアを開けてギルドに向かいのだった…。


◆◇◆◇◆◇◆


「と言う事が、王都側とギルド側での話し合いの結果だ…残念ながら、ワシの力不足じゃ…。」


 と、ギルドマスターのクラウスさんが僕に対して頭を下げる。

 だが、そもそもクラウスさんが悪いのではなく、王都側が悪いのだ。


「いえ、クラウスさんの所為では…まさか、王都側がその様な決定をするとは思ってなかったですね…。」

「それに付いては、ワシも同意見じゃ…よもや、王都側が『悪さをしていないのだから放置すれば良い』などと、戯けた決定を下すとは…流石に、ワシでも想像出来なんだわい…。」


 そう、王都側の決定は『我関せず』…を貫くと言う信じられない決定だったのだ。

 民を守るのが国の勤め…その王都が、まさかの民に何かあってからでなければ問題にしないと言う話なのだ。

 もしかしたら、既に王都の中枢まで『零の使い魔』や、他の敵に支配されているのかも知れない。

 もっとも、それ以外にも嫌な予感がするのだが…それが、何に対して嫌な予感がするのかが分からないままでいる。


「しかし…そうなってくると、色々と問題が出てきますね…。

 特に、戦力と言う意味で…ですが。」


「じゃが、だからと言って放置する訳にもいかん…何とか、人を集めねば…。」


 すると、プリンが意見を言ってきた。


「ご主人様、それなら冒険者を集めれば良いのでは?」

「いや、確かに冒険者でも良いんだが…そう簡単な話じゃないんだよ。

 確かに相手が『零の使い魔』であるなら、それでも良いかもしれないけど…相手は聖騎士団を名乗ってる上に、先程の話にも出てた様に、国が活動を許している。

 つまり、僕達が下手に動くと、最悪、国と戦う事になるかも知れないと言う事になるんだよ…。」

「そ、それって…かなり不味いのでは?」


 クズハが心配そうに言ってくる。


「だったら、いっその事、国ごと潰してしまえば良いのでは?」


 出た、プリンの非常識発言!


「な、なんちゅう物騒な女子じゃッ!?」


 プリンの無茶な発想に、度肝を抜かれたのか、狼狽えるギルドマスターのクラウスさん。

 まぁ、国を潰すなんて発言自体、犯罪者として捕まる可能性もある訳なのだが…。


「いやいやいや、さすがにそれはダメだろ!ってか…普通に、無理だからね?」


 かく言う僕も、クラウスさんと同意見で…流石にテロリストみたいな事を行うには、僕達だけの実力では、まず不可能に近いと思っている。

 仮に、魔王化したとしても…多方向から攻められれば、流石の魔王化でも攻撃も通るだろう事は目に見えている…それ故、無理は禁物なのだ。


 そんな訳で…何とか国から協力を得て、聖騎士団…ひいては『零の使い魔』を倒す方法を僕達は夜が明けるまで話し合うのだった…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る