185ページ目…聖王都、探索【7】
「さてと、これで忘れ物は無いかな?」
現在、僕はメルトの屋敷に戻った時にアリスに用意して貰った服を着ている。
と言うのも、どうやら僕の感性は、こっちの世界ではいまいち受けが良くないのだ。
その為、屋敷でメイドとして働いてくれているブラウニーのアリスに服を見繕って貰っていたのだ。
「私は大丈夫です。」
「は、はい…私も全部持ちました。」
「よし、それじゃ…出掛けよう。」
僕はそう言うと、部屋のドアを開けて外へ出る。
そして、二人が部屋を出た所で、ポケットから鍵を取り出し施錠する。
一応、取られて困る物は基本的には全部、
一方、プリンは…基本的には〖人化〗で姿形を変えれるので着替えを用意しなくて良い。
とは言え、最近は衣類を着る事に興味がある様なので、とても良い傾向なのだが…その発端が、近所の奥様連中との会話から来ているのだが…一時期、ダーリンと呼び出したりする前科があるだけに嫌な予感がして何とも微妙な感じだったりする。
「ご、ご主人様…今日はどちらに?」
「うん、今日は『天使の羽』と同じ様に『天使の翼』に味を盗まれたとされているお店の方に行こうと思う。」
「それに付いては、プチスラちゃん達が調べ上げています。
とは言え…『天使の羽』みたいに味を奪われた店が全部で12件もあって、ビックリしました…。」
「12件もあったのか…こりゃ、ひょっとすると天使の翼にはオリジナルメニューなんて無いのかもしれないな…。」
「ど、どう言う事ですか?」
僕のセリフが気になったのか、クズハが聞いてくる。
「いや、単純な話…1件に付き、2~3個味を奪ったとする。
それで、仮に一つの店舗から2個奪ったと仮定すると…12件あるのだから24個奪った計算になる訳だが…。
小さい店なら、24個のメニューもあれば、それ以上なくても十分じゃないか?」
「そ、そう言われてみれば…確かに、近所の『ポコポコ』さんには、メニューが14種類しかなかったです。」
「いや、『ポコポコ』と比べたらダメだろ…あそこは酒飲みの店主が趣味で始めた店なんだから…。」
そう、ポコポコと言う店は、単に酒飲みの店主が趣味で酒の肴…つまみを売っている店なのだ。
その為、それほど多くの種類は必要としていないのだ。
とは言っても、酒の肴になるくらいなので、普通に食べても美味しい部類だったりする。
その中には、焼き鳥ならぬ焼き串もある。
早い話が、ローラの行きつけのお店…と言う訳である。
「でもまぁ…思ったよりお店の数が多いから、何日間かに分けて店を巡る事になるだろうね…。」
僕はそう言うと、プリンに、ここから一番遠いお店へと案内して貰う事にした。
もっとも、全部の店で食べる必要は無く、話を聞いて回ると言う事になりそうなのだが…。
◆◇◆◇◆◇◆
「あぁ、そうなんだよ…ワ、ワシの店の秘伝のレシピを使ったとしか思えないほど、同じ料理じゃった…。
だが、ヤツは…そんなのは知らない、私の方がオリジナルだと…あの料理は親父が母さんにプロポーズする為に考え出した特別な料理じゃったのに…。」
そう言うと、その店の店主は崩れ落ちる様に膝を突く…。
何とも、見ていていたたまれない気持ちになってくる。
「お話はよく分かりました…あまりお力に慣れないかも知れませんが、僕達も出来る限りの努力をして原因を突き止めたいと思います。
ですので、早まった行動を起こさず、我慢していて下さい。
それと、相手にバレたら、何らかの対策を取られるかも知れないので…僕達が来た事は、くれぐれも秘密にお願いします。」
そう言うと、僕は店主を立たせると、励ましの言葉をかけて、その場を後にした。
そして、店から出ると大きな溜息を付くのだった…。
「これで、5件目か…何か、聞いてるだけで辛くなるね…。」
「そうですね…苦労して作り上げた筈の料理を奪われるなんて…『天使の翼』なんて、物理的に潰れてしまえば良いのに。」
珍しく、他人事に腹を立てるプリンに、成長したな…と、感慨深くなってしまう。
「で、ですが…何故、こうも全てのお店の料理を真似出来るのでしょうか?」
「うん…僕も、それが気になっていたんだ…。
確かに、料理を真似する…味を覚えて再現する…それは、可能と言えば可能だ。
だけど、それには途方もない技術がいるし経験も必要となる。
また、それに欠かせないのは絶対音感ならぬ絶対味覚とも言える、神の舌とも呼べる物が必要なはずなんだ…。
でも、そんな凄い力を持っていたのなら、既に何らかの話題があるはずだ。
それなのに、いきなり湧いて出たみたいな…そんな、ありえない話の様に思えるんだ…。」
「あの…ご主人様、もしかして…ご主人様と同じ様に異世界から…なんて事は無いんですか?
いきなり湧いて出たって言葉で、ふと思ったんですが…。」
プリンに言われて、ハッとする…言われてみれば、そんな
だとすると…聖騎士団と言うのは、そんな特殊スキルを持つ団体なのか?
もしそうだとしたら…果たして、僕達だけで対処出来るのだろうか…。
「ご、ご主人様、なにやらお顔の色が優れない様なのですが大丈夫でしょうか?」
「あ、あぁ…ちょっと嫌な事を考えちゃって…ちょっと疲れたのかも…大丈夫だから、気にしなくて良いよ。」
と、クズハに優しく声を掛けて、宿に戻る事にした…。
そして、それから5日後、他の店の聞き込みも済ませ…そして準備を整えた僕達は『天使の翼』へと向かうのだった…。
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