143ページ目…レベリング【3】

 さて…ここ、第3階層からはトラップを設置している。

 とは言え、この第3階層には直接死に繋がる様な危険なトラップは無い…何故って?

 それは…20cmほどの落とし穴や、軽い電撃を放つ罠で…正座をした時に足が痺れた程度のトラップ等の…所謂いわゆる、悪戯程度のトラップばかりなのだ。

 もっとも、当然と言うべきか…これには理由がある。

 と言うのも、元々、ここは誰が作ったか知らないが初心者ダンジョンだったのだ。


 そして、今は…僕が新たに作りだしたダンジョンでもある…。


 やはり、現代日本を生きている僕にとって、冒険と言うのはゲーム同様、少しずつ強くなっていき、最後には強敵に勝つ!

 そんな事に憧れるのだ…もっとも、RPGゲームの醍醐味とも言える面白さも大事だ。

 その為、初心者から一流の冒険者になるまで練習出来る様に、色々と『成長を促すダンジョン』にしたかったのだ。

 簡単に言うと、トラップも含めて勉強する為のダンジョン…な訳だ。

 これに感しては、自分で言うのも何だが、良く出来たダンジョンだと褒めてやりたい。

 まぁ、他の人が見たらどうなのかは分からないが…。


 何はともあれ、このダンジョンでは色々な回復薬…各種ポーションまでもが手に入るのだ。

 これを上手く使えば、冒険者達にとって万が一の時の備えになる。

 場合によっては死ぬ一歩手前から、逆転勝利…なんて事も考えられるのではないだろうか?


 その為、ダンジョンポイントが貯まれば…ドロップの種類を増やしたりして他のダンジョンやら戦場やらで死亡する冒険者を減らす手伝いをしたいって言うのが狙いで…先ほども言った『成長を促すダンジョン』と言うのが表向きの理由なのだ。

 だが…実際の所は『面白そうだから』と言うの理由を誤魔化す為の後付の理由だったと言うのは秘密だ。


『ズボッ!』


「あちゃ~…また、トラップに引っ掛かっちゃったよ…。」 

「ご主人様、大丈夫ですか?」

「あ、あぁ…大した深さもないし怪我もしていないから大丈夫だよ。」


 既に4回もトラップに引っ掛かっている僕を心配してプリンが声を掛けてくる。

 他のみんなはレオナが1回のみ…と言う様に、僕だけがトラップにハマリまくっている。


「しっかし…何で僕だけ、こんなに引っ掛かってるんだ?」

「ご、ご主人様…もしかしてですが、トラップの場所が分からないんですか?」


 と、言ってきたのはクズハだ…。


「え?…もしかして、みんなトラップが分かるの?」

「「「「…え?」」」」


 僕以外のみんなから同じ様なタイミングで驚かれてしまった。

 つまり、僕以外はみんな分かっていると言う事だ。

 あれ?だけど…そうだとしたらレオナが1回引っ掛かったのは何でだ?


「そう言えば…レオナだって1回引っ掛かっていたじゃん?」

「はい…なので、それでトラップがどんな感じなのか…と言うのを覚えました。」


 つまり、レオナでさえ1回で分かる程度の難易度みたいだ…。

 そして、他のみんなは引っ掛かる前から分かる程度のトラップに、僕は既に4回も引っ掛かり、未だにトラップがどこに仕掛けられているのか分かっていない事になる。


 うわ~なんか恥ずかしいな…でも、このままでは流石に不味い。

 今はまだ嫌がらせ程度とは言え、戦闘中に引っ掛かったりすれば、最悪死ぬ事だって考えられる。

 つまり、現在、僕の最優先事項はトラップを見極める事…である。


 しかし、先程も言ったが、僕には何処に仕掛けられているのか見当も付かない。

 ならば…どうする?僕が分からないのであれば、分かる人に教えて貰い覚えるしかない。

 そうしないと、これからダンジョンに僕一人で挑んだ時にトラップが分からない…では大問題なのだ。


「ごめん、みんなに頼みがある…どうやら、今の僕にはトラップを見極める才能が無いのか、見付ける事が出来ない様だ…。

 だから…次にトラップがあった場合、僕にトラップの見極め方を教えてくれないかな?

 僕はトラップを見極める練習をしたいんだ…頼む!」


 そう言うと、僕はみんなに頭を下げる。


「ご、ご主人様が私に頭を下がる必要なんてありません!ご主人様が居なかったら私は死んでいたんですから!」


 と、クズハが僕に言ってきた…あ~…忘れてたけど、そう言えば、クズハって奴隷のままだったな…と思い出す。


「いや、確かにその可能性があったかもしれないけど、それとこれとは別だ。

 僕が、みんなに頼み事をするのだから頭を下がるのは当然の事だよ。

 それと…クズハは、いつまで僕の奴隷のままでいる気なのかな?」


 クズハは、もう僕の仲間なんだから、もう奴隷でなくても良いはずだ。

 だったら、もう奴隷から解放しても自由にしてあげても良いんじゃないだろうか?


「え?あ、あの…私、もう必要ないんですか?」

「い、いや…そうじゃなくて…仲間なんだから奴隷じゃなくてもって事で…。」

「だ、だったら!これからも私を側に置いてください…私は、ご主人様の奴隷から解放されたくなんてありません!」


 クズハはそう言うと急に泣き出してしまった…。


「分かった!分かったから、もう泣くな…クズハは奴隷のままで良いから!」


 絶対、クズハのヤツ、途中までしか聞いてない気がする…今度、二人っきりの時にでも、しっかり話し合わないとダメだな、こりゃ…。

 そんな事を考えていると、曲がり角からオークが1匹現れた。

 正直、嫌なタイミングで現れたのだが…次の瞬間、一瞬で倒されてしまった。

 と言うのも、いつの間に撃ったのか分からないがオークの頭部には1本の矢が刺さっている。


 そして、僕の背後に目をやれば…矢を放った格好のままのアリスが居る…って、僕が死角になって攻撃出来ないのでは?と思える位置取りなのに良く当てられるな…と、感心する。

 ちなみに、アリスには〖百発百中〗と言う称号がある…その為、射程内であればほぼ確実に当てる事が出来る様だ。

 と言うか…オークに一瞬でヘッドショットを決める…一撃って、強すぎじゃね?

 そう思い、僕はみんなのステータスを確認する為、改めて、みんなをのだった。

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